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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第一章 北の狼、ドナウに吠える
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第七話 軍議の影

第七話では、遭遇戦後の軍議と、ローマ軍内部に潜む政治的な火種を描きました。

戦場と同じく、政治の場もまた命を奪う戦場であることが、カエソの目に映ります。

北の狼との遭遇戦から二日後、パンノニア駐屯地の本陣には、百人隊長以上の将校が集められていた。

テントの中には油灯が揺れ、戦場とは違う重苦しい空気が漂っている。


中央の地図には、ドナウ川沿いの補給路と敵襲のあった森が赤く印されていた。

「アールヴ……あの若い指揮官が率いる部隊は、従来のゲルマン戦士とは明らかに違う」

報告を終えたウルスが、地図の北側を指で叩く。

「奴らは統率され、訓練されていた。背後に武器や戦術を与える者がいるはずだ」


一人の将校が鼻で笑った。

「百人隊長ウルス、貴様の部下が蛮族に遅れを取っただけではないのか?」

場がざわつく。カエソの拳が自然と握られたが、ウルスは視線だけでそれを制した。


「遅れを取ったのではない。奴らが変わったのだ」

短く言い放つその声に、反論の余地はなかった。


しかし軍議の中で、もう一つの議題が浮かび上がる。

「補給路の確保のため、クラウディア・ルキッラ補給官の権限を一時的に縮小する」

元老院から派遣された監査官が、涼しい顔で告げた。


クラウディアは眉をわずかに動かしただけで、口を開かなかった。

だがその沈黙の奥に、冷たい怒りが見えた気がした。


軍議が終わり、テントを出るとウルスが低く言った。

「カエソ、戦場だけが戦いじゃない。これからは、政治の刃にも備えろ」


その言葉を聞きながら、カエソは心の中で呟いた。

──敵は北の森だけじゃない。帝国の中にもいる。

ここから物語は、戦場と宮廷の二つの舞台を行き来する展開になります。

クラウディアを巡る権限争い、元老院派と軍部派の衝突が物語の緊張感を高めます。

次回はその余波として、内部の裏切りと情報戦が描かれます。

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