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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第二章 帝都の影
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第五十二話(第69話) 影の刺客

今回は帝都の夜を舞台にした「影の刺客」編!

戦場の激闘とは違い、狭い邸宅での暗殺劇を書いてみました。

カエソたちの連携が光る場面にできたと思います。

帝都の夜は静まり返り、月明かりが石畳を淡く照らしていた。

しかしその静けさの奥で、影が蠢いていた。


黒衣に身を包んだ数人の男たち。

腰には短剣、腕には毒を塗った刃。

彼らは音もなくカエソの邸宅を囲んでいた。


「帝都の狼も、眠っている間はただの獲物だ」

低い声が囁き、影が壁を越える。


——


だが、その瞬間。

闇の中から閃光が走った。


「遅い」


クラウディアの放った矢が、一人の刺客の喉を貫いた。

悲鳴を上げる間もなく影が崩れる。


「もう一人!」

ヴァレリアが剣を抜き、屋根の上に飛び出した。

刃と刃がぶつかり、火花が散る。


「帝都で狼を狩るつもりか。……舐められたものだ」

カエソが庭に姿を現し、剣を構える。


——


激しい乱戦が繰り広げられた。

刺客たちは素早く、毒を塗った刃で一撃を狙う。

だがカエソと仲間たちは、戦場で鍛え上げた反射と連携で応じた。


ルキウスが盾で突き飛ばし、クラウディアの矢が足を射抜き、ヴァレリアの剣が首を断つ。

次々に影が雪崩のように崩れていった。


最後に残った刺客が、血に濡れた口で呟いた。

「……我らの背後には、もっと大きな影がある。お前の首は、まだ狙われ続ける……」


その言葉を残し、息絶えた。


——


カエソは剣を収め、低く言った。

「狼を狩ろうとする影がいる限り、俺は眠れぬ。

だが……群れを守る限り、俺は狩られることを恐れはしない」


夜風が吹き抜け、静けさが戻る。

しかしその静けさの裏で、帝都にはさらなる陰謀が広がっていた。


——


【解説】

ローマ時代、政治的暗殺や刺客の利用は珍しくありませんでした。

特に帝政期に入ると、皇帝や有力将軍が「影の勢力」に命を狙われることは日常茶飯事でした。

毒、短剣、闇討ち……史実でも多くの英雄たちが刃ではなく「影」に倒れていきました。

今回の刺客は、その典型をイメージしています。

刺客との戦いは、ただの暗殺未遂では終わりません。

背後にいる黒幕の存在が、帝都の空気をさらに不穏にしていきます。

次回はその「黒幕」に一歩近づく展開を描いていきます。

どうぞお楽しみに!


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