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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第二章 帝都の影
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第五十一話(第68話) 英雄と陰謀

北方の勝利から帝都への帰還!

歓喜と栄光に包まれる一方で、陰謀の影も濃くなってきました。

英雄は同時に「恐れられる存在」でもあるんですよね。

凱旋の行列が帝都を進む。

戦場での勝利の知らせはすでに広まっており、通りには民衆が押し寄せていた。


「帝都の狼だ! 我らを守る英雄だ!」

「蛮族を退けた将軍に栄光あれ!」


花びらが舞い、歓声が石畳を揺らす。

馬上のカエソは無言で民衆を見渡した。

その視線は喜びを隠すのではなく、重責を背負った者のものだった。


——


だが、その熱狂を冷ややかに見つめる視線があった。

元老院の高台から、老獪な議員たちが囁き合う。


「民衆の熱狂は危険だ」

「狼は群れを率いる。だが、帝都をも喰らいかねん」

「いずれ皇帝の座を狙うだろう」


プブリウスの失脚により一度は静まった陰謀の火種が、今や再び燃え上がろうとしていた。


——


夜。

カエソは自邸で報告を受ける。

「隊長、元老院の一部があなたを警戒しています。

彼らは、あなたが兵を率いて政権を奪うのではと……」


クラウディアが険しい顔で口を挟んだ。

「当然ね。英雄はいつだって恐れられる。あなたは兵と民衆の心を掴んでしまった」


ヴァレリアは剣を磨きながら笑った。

「ならば帝都ごと喰ってしまえばいい。狼らしくな」


カエソは首を横に振る。

「それではただの獣だ。俺が守るべきは群れ……ローマそのものだ」


その言葉に仲間たちは沈黙した。

だが外の闇は深く、帝都にはすでに次の罠が仕掛けられ始めていた。


——


【解説】

古代ローマでは、戦場で功績を立てた将軍は「英雄」として民衆から讃えられました。

しかし同時に、元老院や貴族層は彼を危険視しました。

スッラ、マリウス、カエサルなど、実際に「民衆に支持された将軍」がクーデターや政権掌握に進む例が多かったためです。

カエソの状況は、まさにその歴史の繰り返しといえるでしょう。

今回は「栄光」と「陰謀」を同時に描いてみました。

カエソは英雄として祭り上げられながらも、帝都の支配層からは警戒され始めています。

次回は、その陰謀がいよいよ牙を剥き始める展開へ!

帝都の闇と戦場の熱が交錯する物語を、ぜひ楽しみにしてください。

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