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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第二章 帝都の影
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第四十三話(第60話) 影を追う狼

今回は帝都の裏側に潜入するシーン!

戦場のような派手さはなくても、影を追っていく緊張感は書いていて楽しかったです。

狼が夜の帝都を駆ける姿をイメージしながら読んでもらえれば嬉しいです。

深夜の帝都。

フォルムの大理石の柱の影を抜け、カエソは少数の仲間だけを連れていた。

ルキウス、クラウディア、そしてヴァレリア。

兵営を離れるのは危険だったが、黒幕の証拠を掴むには動かざるを得なかった。


「隊長、本当に行くのか?」

ルキウスが低く問う。

「暗殺者の背後にいる奴らは、街の衛兵や官吏すら抱き込んでるはずだ。正面から行けば袋叩きだぞ」


カエソは頷く。

「だから狼は群れで動く。今夜は牙を隠し、影を狩る」


——


彼らが向かったのは、帝都の下層地区スブーラ。

迷路のような細道、崩れかけた石造りの家々。

昼間は職人と商人で賑わうが、夜になれば盗賊と密売人の巣と化す。


クラウディアが囁く。

「ここに暗殺者の手配師が潜んでいるはず。コルネリウス家の金で雇われた連中よ」


ヴァレリアが剣を抜いた。

「ならば影ごと斬り裂くだけだ」


——


やがて彼らは、地下酒場の奥で密談する男たちを見つけた。

黒外套の残党と、痩せた書記官風の男。

男の手には羊皮紙があり、そこには支払いの記録が残されていた。


「……金は確かに受け取った。次は……」


その言葉を遮るように、ヴァレリアの剣が机を裂いた。

「次はない」


悲鳴と同時に混乱が走る。

ルキウスが盾で突き飛ばし、クラウディアが弓を構える。

一瞬で場を制圧すると、痩せた男は蒼白な顔で震えていた。


「だ……誰に命じられた!」

カエソの怒声が響く。


男は怯えながら羊皮紙を差し出した。

そこには「プブリウス・コルネリウス」の署名が、確かに刻まれていた。


——


「……証拠だ」

カエソは低く呟いた。

帝都の闇は剣ではなく、この羊皮紙一枚で暴ける。

だが同時に、その一枚の紙が自分たちをさらなる嵐へと引き込むのも理解していた。


「狼は……影を追い、影を噛み砕く」


——


【解説】

ローマ時代の都市スブーラは、実際に治安の悪い下町として知られていました。

密売や暗殺の温床となり、しばしば元老院の派閥が裏社会を利用したとも言われます。

史料に残るわけではありませんが、実際にこのような「裏の契約書」や「密会」があったと考えるのは自然です。

帝都の華やかなフォルムの裏には、常に血と陰謀の影が蠢いていたのです。

ついに黒幕・コルネリウス家の証拠を掴んだカエソたち。

ですが、この一枚の羊皮紙が帝都全体を揺るがす爆弾になりそうです。

次回は証拠をどう扱うのか、そしてコルネリウス家の反撃がどう来るのか。

帝都編もますます激しくなっていきますのでお楽しみに!

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