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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第二章 帝都の影
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第四十一話(第58話) 闇に潜む刃

今回はついに「暗殺編」突入!

戦場ではなく夜の帝都、闇の中での死闘を書きました。

剣のぶつかる火花や血の匂いが、昼の戦場とはまた違う緊張感を出せたかなと思います。

夜のローマ。

フォルムの大理石の柱の影に、黒衣の影が潜んでいた。

短剣に毒を塗り、顔を覆った暗殺者たちは、元老院派の密命を受けて動いていた。


「奴は英雄になる前に消せ。狼が牙を剥く前に、首を刎ねよ」


——


兵営の夜。

疲れ果てた兵たちが眠りにつく中、ヴァレリアだけは眠らずに剣を研いでいた。

「……くる」

女剣士の耳は、夜風に混じる僅かな足音を聞き逃さなかった。


次の瞬間、闇から刃が閃いた。


「カエソ殿、危ない!」

ルキウスが叫び、盾を掴んで飛び込む。

刃が弾かれ、火花が散った。


暗殺者は一瞬もためらわず二の太刀を繰り出す。

だが、すでにヴァレリアの剣がその手首を断ち切っていた。


「……狼を狩るには牙が足りぬな」


闇の中、数十人の暗殺者が兵営を取り囲んでいた。

炎のように松明が掲げられ、黒い影が次々に迫る。


——


クラウディアが弓を取り、次々と矢を射抜く。

ルキウスは盾で押し広げ、仲間を守り、血を吐きながらも吠える。

「ここは戦場だ! 寝てる暇があったら剣を取れ!」


兵たちが次々と飛び起き、必死に武器を手にする。

だが、闇の中で戦うのは、昼の戦場以上に混乱を極めた。


——


カエソは剣を振り抜きながら、敵の首を落とす。

その血飛沫を浴びながら叫ぶ。

「元老院か……! 狼を飼いならせぬと見て、俺を殺しにきたか!」


敵の刃が迫るたびに、仲間の叫びが響き、兵たちが次々と傷を負っていく。

だが後退はない。

兵営の中は、血と炎に染まった地獄と化した。


——


やがて暗殺者の一人が倒れ際に吐き捨てた。

「……帝都の闇は……これで終わりではない……」


そう言い残して絶命する。


カエソは剣を下ろし、荒い息を吐いた。

「……剣を取らずとも戦える場所はない。

帝都もまた戦場だ」


兵たちは互いの血にまみれながら、その言葉に黙ってうなずいた。


——


【解説】

ローマ帝国では、暗殺はごく日常的な政治手段でした。

元老院や将軍派は、権力を持ちすぎる者を恐れ、しばしば密使を送り刺客を放ちました。

皇帝たち自身もまた暗殺によって命を落とすことが多く、3世紀の「軍人皇帝時代」では特にその傾向が顕著になります。

帝都の夜に刃が潜んでいたという描写は、まさにこの時代を象徴する光景と言えるでしょう。

いやあ、帝都の政治は本当に容赦ないですよね。

英雄になりそうな者は持ち上げられるか、利用されるか、潰されるか。

カエソたちは生き延びましたが、これはまだ序章にすぎません。

次回はさらに深い帝都の闇、そして暗殺の背後にいる黒幕の姿が見えてきます。


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