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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第二章 帝都の影
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第四十話(第57話) 帝都の牙

今回は「帝都の牙」というタイトル通り、政治の世界でカエソが牙を認められてしまう回です。

戦場ではなく都市の中で暗殺の影が動くというのも、緊張感がまた違いますね。

剣だけでなく、帝都の陰謀との戦いが本格的に始まります!

カエソの答えは静かなものだった。

「……俺は剣で戦う。だが、守るためには策も必要だ」


その言葉は、ただの返答ではなく、帝都全体に波紋を広げることになる。


——


翌日。

市場では早くも噂が飛び交っていた。


「カエソは元老院に逆らったらしい」

「いや、将軍派と手を組んだんだ」

「皇帝になる気なのか!?」


市民は期待と不安の入り混じった声を上げる。

権力者たちにとって、その「期待」という言葉が最も恐ろしいものだった。


——


夜。

兵営に戻ったカエソのもとに、一人の元老院議員が忍ぶように訪れた。

年老いたが鋭い目を持つ男、名はルキウス・カッシウス。

彼は低い声で告げた。


「お前は牙を剥いた。帝都はそれを見逃さぬぞ」


「牙?」

カエソが問い返すと、老議員は笑った。


「狼は群れを守るために牙を持つ。だが、牙を隠したままでは生きられぬ。

いずれお前は、己の牙でこの帝都を切り裂くことになる」


——


クラウディアが険しい顔で囁いた。

「……彼らは貴方を『狼』として帝都に放ちたいのよ。

それが彼らにとって便利だから」


ヴァレリアも言う。

「便利な狼はすぐに牙を抜かれる。油断すれば、檻に閉じ込められるぞ」


カエソは二人の言葉にうなずきつつ、剣の柄を握りしめた。

砂漠の敵兵よりも、この帝都の策士たちの方がよほど恐ろしい。


——


だが、その夜。

兵営の外で、暗殺者が忍び寄っていた。

短剣を握り、黒い外套を羽織った影たち。

その背後には、元老院のとある派閥の紋章がちらりと覗いていた。


「帝都の牙は……すでに剥かれているのだ」


帝都の闇が動き始め、カエソは知らぬ間に次なる戦場へと引きずり込まれていた。


——


【解説】

ローマ史では、将軍が「英雄」として人気を集めると必ず暗殺や陰謀が待ち構えていました。

カエサルもブルートゥスら元老院派に暗殺されましたし、その後も「軍人=潜在的皇帝候補」という構図が続きます。

この時代はとにかく暗殺や粛清が多く、政治の裏側は戦場以上に血生臭かったのです。

ローマ史を調べれば調べるほど「暗殺」が本当に多い時代で、物語に取り込まないわけにはいかないんですよね。

今回はその前触れ。次回はついに帝都の闇との初対決が描かれます。

戦場とは全く違う戦い方になるので、ぜひ楽しみにしていてください。

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