表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第二章 帝都の影
52/97

第三十五話(第52話) 決戦の砂漠

今回はついに「決戦」という名にふさわしい総力戦になりました。

敵の重装歩兵に押し潰されかけながらも、カエソが突破の策を閃きます。

楔形で貫くという決断は、まさに命を懸けた一手でしたね。

砂漠は血と砂煙に覆われ、昼であるはずなのに戦場は闇のように重苦しかった。

サフラの鉄槌が繰り返される中、ついに隠されていた重装歩兵が進軍を開始する。


「これ以上……挟まれたら終わりだ!」

クラウディアが叫び、弓を引き絞る。

矢は的確に敵の喉を貫くが、それでも歩兵の壁は止まらない。


ルキウスは盾で突撃し、数人をまとめて弾き飛ばす。

「押し返せ! 死ぬなら前でだ!」


ヴァレリアは敵の後列に飛び込み、刃を閃かせて指揮官を倒す。

「……退け」

冷たい声が響き、敵陣に乱れが生まれる。


——


だが、圧倒的な数の差は覆らなかった。

敵は波のように押し寄せ、ローマ兵は再び押し込まれていく。


「くっ……!」

カエソは剣を振るい続けながら、心臓が潰れそうな重圧を感じていた。

味方の息は荒く、盾列は限界に近い。

このままでは……全滅だ。


その時、彼の脳裏にかつての戦場で聞いた師の声が蘇る。

『敵の力を正面から受けるな。嵐のような圧力には、逆に風穴を開けろ』


カエソの瞳が鋭く光る。

「……そうか。突破するんだ。受けるんじゃなく、貫く!」


彼は剣を高く掲げ、叫んだ。

「全軍、俺に続け! 敵を正面から貫き、砂漠を抜けるぞ!」


——


兵たちの動きが一斉に変わった。

受けに回っていた盾列が一点に集中し、槍を突き出す。

狭く鋭い楔のような陣形が、敵の中央を突き破った。


「なっ──!」

敵兵の驚愕の声が響く。


ルキウスが最前で盾を押し広げ、クラウディアが左右を支え、ヴァレリアが切り込み口を血で染める。

その中心でカエソが吼える。

「狼は檻に閉じ込められぬ! 俺たちは砂漠を喰らい尽くす!」


——


高台からその光景を見たサフラは、初めて表情を険しくした。

「……抜けた、だと?」

彼の冷静な瞳に、わずかな焦りが揺らいでいた。


砂漠の地獄で繰り広げられる決戦。

ローマ兵はなお生き延びようと牙を剥いていた。

サフラの鉄槌と重装歩兵の圧力を、カエソたちは突破という形で迎え撃ちました。

けれどまだ完全に戦いが終わったわけではありません。

次回はいよいよ、この死闘に明確な決着がつくことになるでしょう。

物語の大きな節目になる回になるはずです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ