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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第二章 帝都の影
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第二十九話(第46話) 追撃の砂嵐

前回はヴァレリアの剣舞で二重の包囲に綻びを作りましたが、当然これで終わりではありません。

敵の知将サフラが、そう簡単にローマ兵を逃がすはずがないですよね。

今回はその反撃、パルティア騎兵による怒涛の突撃戦です。

砂漠の戦場ならではの「砂嵐の突撃」、ぜひ臨場感を楽しんでください。

夜を切り裂いた囮の剣舞は、確かに包囲の一角を崩した。

だが、戦いは終わってはいなかった。


夜明けと同時に、砂漠を震わせる轟音が迫ってきた。

それは数千騎の騎馬軍。

砂を巻き上げて疾駆するその姿は、まるで砂嵐そのものだった。


「サフラめ……これが本命か!」

ルキウスが呻き、巨大な盾を構える。


サフラは敵陣の中央から静かに命を下していた。

「ローマの兵を逃がすな。砂漠に飲み込み、跡形もなく潰せ」


その声に応じ、騎兵は一斉に槍を突き出す。

砂嵐のような突撃が、突破しようとするローマ兵を呑み込もうとしていた。


——


「全軍、盾を構えろ!」

カエソの怒号が響き渡る。

兵たちは痩せ細った腕で必死に盾を重ね、槍を構えた。

その陣形はローマ軍伝統の密集防御──“テストゥド”だ。


轟音とともに、敵の突撃が直撃する。

盾が軋み、兵が押し潰される。

砂が舞い、視界が閉ざされる。


「ぐぬぅ……! 踏ん張れ!」

ルキウスが盾ごと敵騎兵を押し返し、カエソも剣で突撃を弾き返す。


——


しかし敵は止まらない。

砂嵐のような突撃は何度も繰り返され、そのたびに兵は倒れ、盾の列は揺らいでいった。


クラウディアが顔をしかめる。

「このままじゃ持たない……! 何か打開策を──」


その時、ヴァレリアが口を開いた。

「……砂を使う」


彼女は短く説明した。

「砂嵐は敵の武器にもなるが、こちらも利用できる。

焚き火を撒き散らし、砂を煙と共に巻き上げれば……敵の視界を潰せる」


カエソは即座に決断した。

「よし、やるぞ! 敵の嵐を、我らの嵐で呑み込む!」


——


兵たちは松明を砂に投げ入れ、油を撒いた。

瞬く間に炎が立ち昇り、煙と砂が渦を巻き始める。


「な、なんだこれは──!?」

突撃してきた騎兵たちが次々と混乱し、槍が仲間同士を突き刺す。


視界を奪われた敵騎兵の群れに、カエソが吼えた。

「突撃だ! 砂嵐を制するのは我らだ!」


剣を掲げて飛び出すカエソに、兵たちも続いた。

混乱する敵を次々と斬り伏せ、砂嵐のただ中でローマ兵の雄叫びが響く。


——


サフラは遠くからその光景を見ていた。

「ほう……砂を利用してこちらの突撃を潰すか」

彼の口元に、わずかな笑みが浮かぶ。

「ますます面白い……だが、まだ終わらぬ」

いやあ、書いていて自分でも息が詰まるような攻防でした。

盾で必死に耐えるローマ兵と、嵐のように押し寄せる騎兵隊。

そしてカエソたちが砂を逆手に取って反撃する場面は、ここまで積み上げたものが一気に爆発する瞬間になったと思います。

ただし、もちろんサフラはまだ余力を残しています。

次回は知将としての本領がさらに見えてくるはずです。

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