第二十七話(第44話) 二重の罠
はい、今回は敵将サフラの「二重包囲」が炸裂!
カエソたちは勝ったと思ったら、実は敵の掌の上……という痺れる展開になってきました。
でも、こういう窮地ほど燃えるんですよね。ヴァレリアが囮役に名乗り出たシーンは、アニメ化したらきっと「影の剣士の本領発揮」って感じで映えるはず。
堅苦しい前書きはもーやめだー
敵陣を焼き払い、狼のように突破したその翌朝。
勝利の余韻に包まれる要塞に、再び冷たい空気が流れ込んだ。
敵軍の布陣が、再び変わっていたのだ。
サフラは笑みを浮かべ、砂漠の地図を指でなぞった。
「ローマの牙は確かに鋭い。だが鋭い牙ほど、深く突き立てさせれば折りやすい」
敵軍は要塞を囲むだけでなく、そのさらに外側に第二の包囲を敷いていた。
まるで二重の網。
要塞を餌にして、外へ出た兵を丸ごと呑み込む仕組みだ。
——
「……やられた」
クラウディアが城壁上から遠望し、唇を噛む。
「昨夜の逆襲は、サフラに読まれていた。奴はわざと一部の補給を露出させ、こちらを誘ったのよ」
兵たちの顔色が青ざめる。
「じゃあ……あれは罠に飛び込んだってことか……?」
「もう出る道はない……」
不安が再び要塞を満たす。
しかし、カエソの瞳は揺らがなかった。
「いや。罠に飛び込んだのは奴らの方だ」
低く呟いたその声に、兵たちが振り返る。
「二重の網を張ったつもりだろうが、網が広がれば必ず綻びが生まれる。
敵は数を分散させた。つまり……叩ける敵が目の前にいるということだ」
——
その夜。
カエソは再び軍議を開く。
ルキウスは拳を叩きつけた。
「網だろうが鎖だろうが、俺がぶっ壊してやる!」
クラウディアは肩を竦める。
「ただ突っ込むだけじゃ、敵の思う壺よ。囮を立てて、敵を引き出すしかない」
沈黙していたヴァレリアが口を開いた。
「……囮は私がやる」
その声に兵たちがざわめく。
「危険すぎる!」
「お前一人で敵陣に飛び込む気か!」
だがヴァレリアの瞳は揺るがなかった。
「私は影の剣。囮こそ……一番得意だ」
カエソはしばし考え、ゆっくりと頷いた。
「分かった。だが一人では行かせない。俺が必ず後ろから掴み取る」
軍議の場に緊張が走り、やがてそれは熱となって兵たちの胸を燃やした。
二重の罠。
その網を断ち切る戦いが、今まさに幕を開けようとしていた。
さあ、次はいよいよヴァレリアが命を賭けて敵陣に突っ込むターン!
そこにカエソやルキウス、クラウディアがどう絡むのか……作者的にもめっちゃ描きたいシーンです。
窮地をどう突破するのか、楽しみにしててください!