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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第二章 帝都の影
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第十七話(第34話) 最初の総攻撃

今回は籠城戦における最初の総攻撃を描きました。

数で押し寄せる敵に対し、防御側は士気と声で陣形を支えるしかありません。

カエソの檄は、兵の恐怖を押さえ込むために必要な「武器」でした。

暁の空が白み始めた瞬間、地平線に並ぶパルティア軍の旗が一斉に翻った。

次いで鳴り響くのは、低く重い太鼓の連打。

それは総攻撃開始の合図だった。


「来るぞ──!」

ルキウスの叫びと同時に、数千の足音が大地を揺らす。

パルティア軍の歩兵が盾を前に押し出し、弓兵がその背後から矢を放つ。

さらに騎兵が両翼を疾走し、要塞を包囲しながら突撃の態勢を整えていった。


城壁上では、ローマ兵たちが盾を掲げて待ち構えていた。

矢の雨が容赦なく降り注ぎ、金属と木を叩く音が要塞全体を震わせる。

何人かが呻き声を上げ、壁の上に崩れ落ちた。


「投石器、用意──放て!」

カエソの号令で、城内の投石器が唸りを上げた。

巨大な石弾が唸りをあげて飛び、敵陣中央に落ちる。

地響きとともに人馬が潰され、悲鳴が上がる。


だが敵も怯まない。

突撃してきた歩兵が梯子を掛け、城壁をよじ登り始めた。

最前列の兵が斬り合いに突入し、要塞は一気に肉弾戦の修羅場と化す。


「押し返せ! 一歩も引くな!」

カエソは前線に立ち、大盾で敵を突き落としながら剣を振るう。

隣ではルキウスが敵兵を斬り伏せ、クラウディアが矢を次々と射抜いた。


だが敵の圧力は止まらない。

梯子は次々と掛けられ、どれだけ倒しても次の兵が登ってくる。

守備兵の一人が恐怖に駆られ、盾を捨てて逃げ出そうとした瞬間、カエソが声を張り上げた。


「逃げるな! ここはローマだ! お前たちの背後には、祖国の民がいる!」


その叫びは兵たちの耳を打ち、崩れかけた陣形を再び繋ぎ止めた。


——


戦闘は半日続き、要塞全体が血と煙に包まれた。

夕刻、ついにパルティア軍は攻撃を退き、野営地へ戻っていく。


勝利はした。だが代償は重い。

守備兵の三分の一が倒れ、残った者も疲労困憊だった。

城壁の上で夕陽を浴びながら、カエソは呟いた。


「……これが最初の一撃か。ならば次は、もっと苛烈になる」

初日の総攻撃を凌いだものの、戦力差は埋まらず、消耗戦の幕が開きました。

籠城戦は一度の勝利では終わらず、飢え・渇き・士気の低下との戦いも始まります。

次回は、その「静かなる圧力」と、次なる敵の策謀を描きます。

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