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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第二章 帝都の影
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第十三話(第30話) 密行部隊、東方へ

今回は東方戦線への密行行軍を描きました。

古代ローマでは大部隊の移動はすぐに情報が広まり、密行は難易度が高い作戦でした。

カエソは影の派閥の妨害を避けるため、少数精鋭での迅速行軍を選びました。

夜の帝都を抜ける軍馬の蹄音は、石畳の上で抑えられた低い響きとなって消えていった。

カエソは甲冑の上から黒い外套を羽織り、顔を半分覆っている。

同行するのはクラウディア、ルキウス、そして志願した精鋭兵二百名。


隊列は細かく分けられ、各部隊が異なる街道を通って東方へ向かう。

これは行軍を秘匿し、敵の密偵や影の派閥の監視から逃れるためだ。


「夜間行軍で兵は疲れるが……」

ルキウスが馬上で呟く。

カエソは前方を見据えたまま答えた。

「日が昇れば、影に見つかる」


——


二日目の夜。

一行はアナトリア中部の小都市に差し掛かった。

街の門は閉ざされ、見張り台には緊張した兵士たちが立っている。

門番がランプを掲げ、カエソたちの部隊を怪訝そうに見下ろした。


「通行許可はあるのか?」

「急使だ。国境要塞の救援に向かう」

クラウディアが通行証を掲げるが、門番は首を振った。

「命令では、兵の通過は元老院の承認が必要だ」


その言葉を聞いた瞬間、ルキウスが小声で吐き捨てる。

「やっぱり影の派閥の手が回ってやがる」


交渉は膠着し、夜明けが近づく。

このままでは出発が遅れ、救援の意味を失う。

カエソは短く命じた。

「……側門を使う。静かにな」


側門は古い石造りで、半ば崩れかけていた。

ルキウスが釘を外し、兵たちが一人ずつ闇の中へ滑り込む。

外に出た瞬間、乾いた風が頬を打った。東方の大地は、もうすぐそこだ。


——


三日目の午後、隊は国境近くの峡谷に差し掛かる。

その時、前方の斥候が駆け戻ってきた。

「敵の斥候部隊! 二百騎がこちらに向かっています!」


カエソは即座に地形を確認した。

峡谷の両側は切り立った岩壁、退路は狭く、避ければ必ず追いつかれる。

「迎え撃つ。ここで道を塞ぐぞ!」


精鋭二百名の密行部隊が、岩陰に散開して弓を構える。

やがて峡谷の奥から砂煙が立ち上り、パルティア騎兵の影が現れた──。

東方への道は、すでに敵と影の派閥の両方に狙われています。

この密行部隊の初戦は、地形を活かした迎撃戦。

次回は峡谷での戦闘を詳細に描きます。

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