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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第二章 帝都の影
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第七話(第24話) 反撃の密議

今回は政治と軍略が交錯する回です。

元老院の罠で追い詰められたカエソが、逆に戦場へ自ら赴くための策を立てました。

実際のローマでも、将軍の評価は戦場での功績に大きく左右され、戦線に出られないことは致命的でした。

ここでカエソは、戦場で生き延びた兵士の直感を政治に応用し始めています。

元老院での罠から二日後、カエソはクラウディアの案内で、とある地下室へと向かった。

場所はフォルム・ロマヌムの外れ、古い浴場跡を改装した隠し部屋だ。

そこには既にルキウスが待っていた。


「よく来たな、英雄殿。……あんたの首が元老院の皿に乗せられるのも時間の問題だ」

皮肉混じりの挨拶に、カエソは椅子へ腰を下ろす。


クラウディアが机の上に羊皮紙を広げた。

そこにはローマ帝国の主要街道図が描かれ、赤い線で補給路、青い線で各軍団の駐屯地が示されている。

「次の戦場は、恐らく東方。パルティアとの国境がきな臭い。

でも影の派閥は、あなたをその遠征から外すつもりよ」


「戦場から外す?」

「そう。戦場に立たない将軍は、忘れられる。忘れられた将軍は、政治的にも死んだも同然」


ルキウスが口を挟む。

「だが逆に考えれば、戦場で功績を立てれば奴らの計画は崩れる。

問題は……どうやって自分から戦場に入り込むかだ」


カエソはしばし黙考した。

「補給路だ」

二人が目を向ける。

「影の派閥は表向き、軍の補給計画に口を出せない。

だがもし、敵が補給路を襲えば──防衛のために俺を派遣せざるを得なくなる」


クラウディアは苦笑した。

「自分で戦を呼び込むつもり?」

カエソは頷く。

「戦が避けられないなら、選ぶのは俺だ」


ルキウスはその瞳に戦場と同じ光を見た。

「いいだろう。じゃあ俺が噂を流す。パルティアの密偵が補給路を狙っているとな」


密議の空気は静かだが、そこには剣戟と同じ鋭さがあった。

戦場は帝都の外にも、すぐそこに迫っている。

帝都の密室での策謀は、剣戟よりも静かで、だが同じくらい命を削ります。

そして、決まった策は必ず戦場に波紋を広げる。

次回は、この密議を発端に、実際の軍事行動とそれに伴う諜報戦を描きます。

戦場と帝都が、表裏一体で繋がる瞬間です。


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