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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第二章 帝都の影
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第五話(第22話) 地下水路の密談

今回は追走劇の直後、初めて“黒幕の輪郭”が見え始める回です。

「影の派閥」という存在は、帝都の混沌そのもの。

彼らは正義でも悪でもなく、ただ自らの力を保つためだけに動く。

排水路の闇は、外の夜よりも深かった。

冷たい水が足首を流れ、湿った石壁には苔がびっしりと生えている。

頭上からはかすかな水滴の音が続き、息を潜める二人の鼓動がそれに混じった。


「……ここならしばらくは追っ手も来ない」

ルキウスが壁にもたれ、肩で息をつく。

「お前を狙っているのは、元老院の“影の派閥”だ」


カエソは眉をひそめた。

「影の派閥?」


「ああ。表では皇帝派にも反皇帝派にも属さず、裏で両方に人間を送り込んでいる連中だ。

戦場で功を立てた将軍や士官を、必ず一度は潰す。それが奴らのやり方だ」


カエソは昨夜の暗殺者の言葉を思い出した。

──帝都には、お前を生かしておきたくない者が多い。


「理由は単純だ」

ルキウスの声が低くなる。

「お前が皇帝に忠義を尽くせば、影は反皇帝派に揺らぎを生む。

逆に反皇帝派につけば、皇帝派に疑心を植え付けられる。

つまり、お前は利用価値が高すぎる──だから消される」


水路の奥から風が流れ込み、二人の松明が揺れた。

カエソは静かに息を吐く。

「……じゃあ、俺はどう動けばいい」


ルキウスは笑みとも嘲りともつかない表情を浮かべた。

「影を狩るには、影になるしかない」


その言葉の重みを理解するには、まだ時間が必要だった。

だが、帝都で生き残るための道が、今はっきりと分かれた瞬間だった。

戦場では敵を倒せば終わりだが、帝都では敵が終わりを決めない限り戦いは続く。

この密談で、カエソは初めて「戦場の外での戦い方」を突きつけられました。

次回は、影の派閥が動き出す兆しとして、元老院での緊迫した政治劇を描きます。

ブックマークや評価で応援いただければ、この政治編をさらに濃く仕上げます。

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