第四話(第21話) 路地裏の追走
今回は純粋なアクション回。
狭い路地での追走、暗殺者との近接戦、そして増援の出現による緊張感の高まり──
帝都では、情報を探るだけで命がけになります。
湿った石畳に靴音が響く。
カエソとルキウスは狭い路地を全力で駆け抜けた。
背後から迫る足音は二人分──いや、増えている。
「三人……いや、四人だ!」
ルキウスが振り返りざま短剣を投げる。
金属音と短い悲鳴が夜に溶け、足音が一つ減った。
「角を曲がれ!」
ルキウスの指示で右へ飛び込み、二人は市場跡の広場に出た。
月明かりに照らされたその場で、三人の黒装束が立ちはだかる。
それぞれ短剣や棍棒を構え、迷いなく間合いを詰めてきた。
「こいつら、普通の追っ手じゃないな」
カエソは低く呟くと、一人の突進を盾代わりの左腕で受け止め、右手のグラディウスで一閃。
血が石畳を濡らし、残り二人が躊躇なく包囲を狭める。
ルキウスは背後から回り込み、一人の背中に刃を走らせた。
残った最後の男は、距離を取ると腰から小さな筒を取り出し、口元に当てる。
「伏せろ!」
ルキウスの声と同時に、鋭い笛のような音が響く。
次の瞬間、路地の奥からさらに数人の影が現れた。
「増援か……!」
カエソは息を整える間もなく、ルキウスと背中を合わせた。
狭い市場跡が、たちまち刃の林となる。
「逃げ道は一つだけだ」
ルキウスが視線を向けたのは、古い排水路の入口。
闇の奥へ続くその穴は、人一人がやっと通れるほどの狭さだった。
「……行くぞ!」
二人は同時に駆け出し、影たちが追いすがる中、排水路の暗闇へと飛び込んだ。
この戦闘は単なる暗殺未遂ではなく、明確にカエソとルキウスを消すための作戦です。
黒幕はすでに動き出しており、その手は元老院や街の裏社会にまで伸びています。
次回は排水路の先での潜伏と、ルキウスが語る“帝都の闇の構造”を描きます。
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