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【書籍発売中!】さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~【完結済】  作者: みなと


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第60話 心からの反省とこれからの未来へ向けて

 嘘でしょう、やめて、ごめんなさい。


 ありとあらゆる謝罪やら反論めいた何かやら、あとついでにミスティアに対して助けを求めるような台詞やら、どう思っているのかリカルドからは自分のことを好いているはずなんだから意地を張ると元に戻れないぞ!とか、それはそれは様々な言葉を聞いたような気がする。


 気がする、というのは風の精霊王が音を届けないようにしてくれていたから、ミスティアたち一同に聞こえていなかったのだが。


「まさに嵐だったな」


 ぽつりとペイスグリルが呟いて、ステラが困ったように笑う。


「ミスティアちゃんを連れだして、綿密な計画をたててから離縁に持ち込もうと思っていたのに、まさか向こうから乗り込んできてくれるだなんて、手間が省けたのは良かったのですけれど……」

「あの……」

「ランディ?」


 ステラの言葉に、ランディがおずおずと手をあげた。


「その……僕とかお父様が、あれこれ騒いだせいもあるのかもしれない、です」

「あなたが?」


 じぃ、とステラに見られるランディは、少しだけ身を固くする。

 そんなに簡単に信じてもらえるわけがないとか理解はしているが、少しだけつらい。そう思うこともおかしいとは何となくわかっているけれど、それでも、だ。


「……あ、ああ、あの」

「……」


 そういえば、ステラは結構な勢いでランディのことを罵ったから怯えられて当然か、と思い至った。


「ローレル家でのこと、ごめんなさい、とは謝りません。あなたがそれだけのことをミスティアちゃんに言って、心を傷つけたんですからね」

「は、はい……」

「それで、わたくしとミスティアちゃんがローレル家を出た後、何がありましたの?」

「あの……」


 ランディは、ローレル家であったことを細かく話していく。

 ペイスグリルやステラの視線は痛かったけれど、自分がそれだけのことをやってきたのだから……と思う。だが、彼らの目が厳しいのにはもう一つ理由があった。


「結局、あの家はセレスティン様によって牛耳られていた、も同義ということか」

「リカルドさんって、そんなにお馬鹿でしたのね……」

「っていうか、リカルドが屋敷の業務をするときは古株の使用人がべったりでしたし……」

「まって、ミスティアちゃんもしっかり使われていたんでしょう?」

「ええ、まぁ」


 あはは、とミスティアが笑うと、ランディは目を丸くしている。


「お母さま……屋敷の業務、やってたの?」

「やっていましたよ。リカルドが何もできないぼんくらだったから」

「……お父さま、全部自分でやってる、って……それに学生時代の成績だってとても優秀だったとか、っておばあさまが」


 ランディの口から出るわ出るわ、リカルドに関しての無い事実。

 ミスティアは『ああもう……』と頭を抱えているが、ミスティアつきの侍女がいそいそと近寄ってきて、ミスティアに付き添う。


「ミスティアお嬢様、あれこれ一気にやりすぎですわ。少しお休みくださいませ」


【ミスティアの体内にまだ精霊封じの毒がある、取り除く作業も必要だ】


「すみません、王」


【なぁに、愛し子のためだ】


 ミスティアがサイフォス家に戻ってきて、半年も経過していないのに、勝手にローレル家の皆さまが押しかけてきて叶ってしまった離縁。

 だが、ミスティアの中に未だ残っている、精霊封じのお香の毒性は完全に抜けきっていない。

 年単位で焚かれ、眠らされつつ無理に起こされ、食事や社交を無理やりにさせられながら過ごしてきた年月の積み重ねが、ミスティアの体を確実に蝕んでいた。


 だが、そんな状態であったにも関わらず、ミスティアはステラの力も借りつつあれだけの立ち回りをこなしてみせた。


「お母さま……」

「ランディ、しっかりと覚えなさい。精霊と親和性の高い人にこういうものを使うということは、その人を殺すことも含めて、とんでもない悪意をもって行われるということを」

「……」

「そして、恐らくこれをあと何回か使われていたら」


【我が愛し子の命はなかった】


「そんな……」


 そんなことをやっていた人たちを、尊敬していたのかとランディはへたり込んだ。

 だが、後悔したところで過去には戻れない。


「……僕……自分をやり直したい。面倒だからって、学校の勉強もちゃんとやっていなかったから、生まれ変わる、っていう意味で、きちんとしたい」

「そうね」


 ランディの望みは、ローレル家からの慰謝料で問題なく叶えることができるだろう。

 ステラやペイスグリルがランディのことを疑い深そうに見ていたが、やり直しのチャンスをあげないというのも不公平かもしれない、まして相手は子供なのだから、とどうにか自分たちを納得させてくれたようだ。


「ランディ」

「は、はい!」

「きっと、あなたの入学するであろう学校は、とても厳しいわ。……でもね、夏季休暇とかの長期休みには、家に戻れるの。……そういうときは、ここに帰っていらっしゃい」

「……いいの……?」

「ええ」


 それが、ミスティアにとっても償いにもなる。

 そう続いた言葉に、ランディは頷いて深く頭を下げた。


「ありがとう……!」


 これから、ランディは編入試験に向けての猛勉強をしなければならないから、呑気に過ごすことはできない。だがそれでも、ねじ曲がって色々なものが絡んで、ぐちゃぐちゃになっていたものを、少しづつ、ほどいていくことにしたのだ。


 未来へ、進むために。


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