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【書籍化決定】さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~【完結済】  作者: みなと


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第45話 風の王はご機嫌だが、爆弾発言も平気でする

【あっはっはっは! そのように固くならずとも良いのだぞ!!】


 朗らかな笑い声が響き、サイフォス家の面々は『そんなわけにはいかない!』と全員心の中で絶叫した。

 いつの間にか先代夫人であるリリカも帰宅して、ミスティアとの再会を喜んでいただけではなく、ミスティアが精霊の愛し子だと知って、喜びながらも戸惑いが大きかったらしく、『まぁまぁ! ミスティア、あなた凄い人だったのね!』と感動されるが、王がそこにいるのでそれどころじゃないんです、としか思えなかった。


「あの……ええと、ですね」


【うむ、良いぞ。話してみよ】


「私が愛し子で、あの……精霊ちゃんたちに愛される、というのはまぁその、理解できるんですが……」


【あぁ】


「確か……神殿に行けば、精霊の神子として……お役目をいただける、とか……」


【それを、望むか?】


「え?」


 少しだけ声音が変わった王に、ミスティアは目を丸くした。


【望むのであれば、お前は今後家族とそう気軽に会えなくなる。神子の役割は、とても大きなものだ】


「あ……」


 言い伝えで聞いている、『精霊の神子』の役目。

 精霊たちが平穏に、それでいて楽しく過ごせるために祈りを捧げること。

 これが一番の仕事ではあるのだが、それをするためには神殿の中でずっと祈り続ける必要がある。

 現在在籍している神子は、存在を秘匿されているとも聞くが、災害か何かで親族を失っている、ということらしい。だから、神殿でずっと過している方が、その人にとっては安全でもあり、衣食住が保証もされているから将来安泰だ、ということらしい。


「そう、なんですね……」


【そもそも、神子たる資格を持ち得る者が少ないから、正確な情報は伝わりづらいことが難点ではある。だが、神子になるのであれば、お前の場合はあまりよろしくないだろう。……この屋敷にいる、大切なものとの別れをしてまで、神殿に属さぬとも良い】


「ですが、神子の役割が……!」


【愛し子が今代一人、というわけではない。それに、精霊眼が伝わっている家として有名なのがここであって、他にも宿しているニンゲンはいるのだ。さほど気にせずとも良い】


「え……」


【そなたらの世界は狭すぎる。この国でなくとも、精霊眼の持ち主はいるし、神子の資格を有している者もいる。それに】


 王は、ふっと微笑んで続けながらミスティアの頭をぽんぽん、と撫でた。


【今度こそ、そなたは大切な家族とともに幸せに笑って過ごすこと。その方がそなたにとっては有意義なヒトとしての生を過ごせるであろう?】


「…………あ」


【そうやって、贔屓をするくらいには気に入っておるのだよ、ミスティア】


 愛し子、ということもあるのだろうが、精霊たちがミスティアにとても懐いているということ。

 そして、その精霊たちが望んでいるのは、『ミスティアが笑って過ごせること』なのだ。

 確かに、愛し子であり精霊眼を持っているミスティアが、更に神子としての役割を持ってくれると嬉しいことに変わりはない。だが、それでミスティアが笑えるのか、寂しくないか、と精霊たちはわちゃわちゃと話し合った、らしい。


【ミスティア、あのクソとは縁切って?】

【ねぇミスティア、学校の先生とかいいんじゃない?】


「せ、精霊ちゃんたちってば……」


 わらわらとミスティアの周りに寄ってくる風の精霊たちは、彼らなりにミスティアを気に入り、あれこれアドバイスめいたものをくれている。

 神子となり、祈りを捧げることでミスティアがその場にいることは理解、認識できたとしてもこのように気軽には過ごせなくなってしまう。

 それが、精霊たちはどうしても嫌なようだ。


【ミスティアが王の祝福を受けたら、ミスティアはもっともっと風使いとして凄くなれる!】

【神子になんてならなくていいよ! だから、ボクたちと一緒に遊ぼ!】


「それはどうなんだ」

「でもねぇ、ミスティアは……わたくしの子の中でも一番風魔法が上手だし」

「義母さま、当主補佐なんかいかがでしょう? そうしたらミスティアちゃんはここにいられますわ!」


「あのー」


 本人の意思はどこへやら。

 とはいえ、これくらい心配してくれていて、自分の将来なんかを案じてくれているのだから、やはり嬉しい。

 ローレル家にいた頃には考えられないくらい、あれこれ考えて忙しいけれど、でも、ミスティアにはそれが嬉しかった。


【でもミスティアまだ自由じゃない】

【ローレル潰す?】

【あの家で風魔法と相性いいの、リカルドとかいうニンゲンくらいじゃないっけー?】

【どうでもいいから覚えてなーい】


「……ん?」


 そういえば、とミスティアは思う。

 ランディはどうやら風魔法との親和性が思ったより高くない、のであれば……一体何と親和性が高いのだろうか。

 そもそも精霊眼は受け継がせようとして出来るものではない、であれば、何かしら受け継ぐに必要な因子か何かがあるのではないのだろうか。

 とはいえ、それが簡単に分かれば苦労しないのだろうな、と思ってミスティアは真剣な顔で王へと呼びかけた。


「……あの、王」


【何だ】


「ランディは……」


【アレは、風との相性がすこぶる悪い。無理矢理に風魔法を使っているから、大変な思いをしているのだろうよ】


「え」

「は?」

「……あらぁ……」


 ミスティア、ペイスグリル、そしてステラが素っ頓狂な声を出してしまったのだった。


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