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【書籍化決定】さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~【完結済】  作者: みなと


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第40話 愛し子とは

 ローレル家での騒動は、ミスティアには知らされないまま平穏な日々を過ごしていた。

 とはいえ、まだ離縁届けを出していないのだから関係は持続している。早々に解消したいけれど、あの家に行くの嫌だしなぁ……と、ミスティアがあれこれ考えていると、いきなり頬がつん、と押された。


「んむ」

「隙だらけよ、ミスティアちゃん」

「姉さま……」

「うふふ」


 食事も取れるようになった。

 というか、あの回復の早さは何だったんだ、とミスティア本人も思う中、あまりにも体を動かしていなかったせいで色々不便が出てきてしまう、とミスティアはステラにお願いをして散歩をしている。

 万が一自分が倒れたら運んでほしい、と付け加えて。


「倒れたら風の精霊ちゃんたちが大泣しちゃうわ」

「そうかもしれないんですけど、ほら。一人で散歩してて何かあったら嫌ですし」

「それはそうね」


 うんうん、とステラが頷いて、ミスティアもにこりと微笑む。

 こうやって、外の空気をゆっくり吸うのもいつぶりだろうか。前は意識があるような、ないような感覚で大変気持ちが悪かったことだけは覚えている。

 人を人でないような扱いをしてくるあのローレル家の人達とは、早々に縁を切ってしまわなければ、と改めてミスティアは思った。

 それと並行してやらなければならないことは、割と色々ある。


【ねぇ、精霊ちゃんたち】


 ミスティアが精霊語を使って周りの精霊たちへと呼びかければ、わっと一気に皆が集まってきた。


【はいはーい!】

【呼んだー?】

【ミスティア今日は顔色いいね!】


 ミスティアの周りを嬉しそうにクルクル飛び回る彼らに、ミスティアは微笑んでかねてからの疑問を投げかけた。


【ねぇ、愛し子、ってなぁに?】


 問いかけに、精霊たちがぴたり、と動きを止める。


【ミスティア、愛し子知らない!?】


 問いかけに問いかけで返された……とミスティアは思うが、詳しくは知らない。

 薄ら知っているかなぁ、くらいのものしかないから、何か、と問われればふんわりした回答しかできないのだ。


「姉さま、愛し子って……」

「わたくしも知らないのよね……。だって、周りにいないでしょう……?」


 うーん、と二人して唸っているミスティアとステラを見て、精霊たちはくるくるも彼女達の周りを飛び始めた。


【ミスティア、愛し子】

【サイフォスの初代みたいに、大切にしたい子】


「初代、みたいに……?」


 見た目は小さくて愛らしい精霊たちだが、時間の流れがそもそも人と違うことを、ミスティアもステラもすっかり忘れていた。

 顔を見合せ、ぎぎぎ、とゆっくり精霊たちを見れば、きゃるんと何とも可愛らしく首を傾げている。


【ねぇ……精霊ちゃんたち、いくつ……?】


 恐る恐る聞いてはみたものの、彼らにとって年齢がどうとかこうとかいう概念は無いらしい。

 はて、と揃って首を傾げて、うんうんと唸り始めてしまった。


【いくつ……】

【誰か数えたことある人ー】

【いやボクら人じゃないし】

【ニンゲンで言うと……えーっと……】


「(しまった……精霊ちゃんたちが混乱してる……)」

「(年齢、っていう概念ないのね……)」


 しばらく双方黙ったまま、じっと考えていた精霊たちがばっと顔を上げる。


【多分、サイフォス家ができた前からいる!】


「(思ったより長い……!)」

「まぁ……かわいこちゃんたちはとっても長生きなのね」


【ステラ、ニンゲンの時間と同じ解釈しちゃダメ】


「あらぁ……」


 注意されたステラはしょんぼりしているが、とはいえこの見た目愛らしい精霊がそんな長生きなの!?と、ステラもミスティアもぎょっと驚いている。

 見た目で判断してはいけない、とわかっているけれど、可愛いからとついつい見た目で判断してしまったのだ。


「待って、本題から逸れた。結局、愛し子って何?」


【ボクらの大切な子】


「大切な……」


【精霊の神子になるための必須条件だよ、ミスティア】


 精霊の神子。

 地、水、火、風、それぞれの神殿があり、精霊に仕え、精霊の声が聴けるとされている稀有な存在。

 神子なしでは精霊との意思疎通は基本的にできないとされているが、まさか自分がその資格があるとは……と、ミスティアは驚いた。


「私、が……」


 そんなことがあるのか、と驚いている部分もあるのだが、ミスティアが真っ先に思ったことが一つ。


「……再婚しなくても……私、家の役に立てるわね……!」

「ミスティアちゃん、そこは気にしなくていいの!」

「え」

「んもう……!」


【ミスティアはいるだけでいいの】

【そうそう】


 思わずステラが突っ込みを入れたが、ミスティアが不安に思うのは当然のことだった。

 離縁して、しかも今の年齢を考えると実家に頼りきりになるわけにはいかない、と思っていたところだったから、『少しでも役に立てるのならば』と、ミスティアはホッと胸を撫でおろした。


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