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【書籍発売中!】さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~【完結済】  作者: みなと


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第32話 責任転嫁の雨嵐

「お前が大奥様の言うこと聞こう、とか言うからだぞ!」

「何言ってんだ、お前だって大奥様の言うことは正しいに決まっている! とか言ってただろうが!」


 ぎゃんぎゃんと言い争いをしている使用人達を見ながら、ペイスグリルも警備隊長も苦笑いを浮かべるしかできなかった。

 まさかここまで醜い争いを繰り広げるだなんて、ということまでは想像していなかった。恐らくそこそこの言い争いは始まると思っていたものの、だ。


「いやぁ……馬鹿丸出しとは、このことですねぇ」


 他所行きの口調でペイスグリルは笑いながら言い、警備隊長もそれには迷うことなく頷く。


「由緒正しきローレル家の使用人たちが、まさかこんなにもみっともない真似をするだなんて……」

「人間、金に目がくらんだらこうなる、ということでしょう。とはいえ、これはさすがに想定外、というやつですよ」

「サイフォス男爵、割と面白がってませんでした?」

「おや、ばれていた」


 あっはっは、と朗らかに笑って話している二人を、使用人たちは恨めしそうに睨んだ。

 そして、責任を全てミスティアに放り投げようと皆が揃いの思考を持ち、わっとペイスグリルと警備隊へと詰め寄ってきた。


「ちょっと、これは嵌められたんですよ!? 誤認なんです!」

「このまま逮捕したら、誤認逮捕になってとんでもない問題になるんですけどぉ!?」


 何言ってんだこいつら、とあからさまに顔に出している警備隊を見て、使用人たちはぐっと言葉に詰まりかけるが、メイド長が自信満々に出てきた。


「何せ、わたくしたちは大奥様が良いと、仰ったから売り払ったんです。それにあの馬鹿女も、文句何て言わなかったのに実家に逃げ込んだとたん手のひら返すなんて、当家の顔に泥を塗りたくったも同然!」


 フン! と鼻息荒く言った言葉が、まさかペイスグリルの逆鱗に触れた、なんてメイド長は思っていない。思うわけもない。

 ステラが血が繋がっていないにも関わらずシスコンだった、という報告を真に受けていればきっと……こうならなかったのにな、と後にペイスグリルは思ったとか何とか。


「馬鹿女……?」


 ひく、とペイスグリルの口元が歪んだその瞬間、精霊達も同時に激怒した。


【馬鹿はどっちだ、ニンゲン風情が】


 怒りの大きさ故に、ついうっかり実体化した精霊を見て使用人達はぎゃあぎゃあと悲鳴をあげ始める。


「うわあああああああああ!!」

「ひいい、何よあれ!!」

「化け物!!」


【どっちが化物だ、ニンゲンの皮をかぶったクソ共が】


「え……?」


 まるで、これまでのことを全て知っているかのように、精霊がメイド長を睨みつける。

 これでは、今の理由が一切合切何も通じないばかりではなく……。


【精霊の愛し子たるミスティアへの暴言吐いたクソなんか、いなくなって然るべきだ】


 普段ミスティアに甘えている口調とまるで違うそれに、ペイスグリルの怒りが思わず霧散する。

 そういえば、ミスティアが愛し子だから精霊の王と会わせたいと言っていたな……、と思い出しつつ一歩後ろに下がる。


「動けなくなるぐらいにはお仕置きをしても良いが、殺すなよ? 人の世界の法律を以て生き地獄を味わわせるんだから」


【えーーーー!!!!】


「精霊様、どうかお願いします。この馬鹿ども、殺すだけならそれで苦痛が終ってしまうでしょう?」


【………………】


 それもそうか、と思った精霊はにこー、と可愛らしく笑って、構える。

 そして。


【えい】


 微笑んだままで手のひらから放たれた激流が使用人に逃げる隙も与えず、そのままどぷり、と呑み込んだ。


「~~~!!」

「…………!?!?!?!?」


 何か言っているようだが、そうすればするほど酸素を消費してしまって苦しくなるだけなんだよなぁ、とペイスグリルは冷静に考えていた。

 警備隊の面々はさすがにこんな大規模な魔法を!?と驚いているのだが、平然としているペイスグリルを見て、少しだけ冷静さを取り戻したようだ。


「あの、サイフォス男爵、あれは……」

「問題ない。こちらが魔法を発動するときに精霊達が力を貸してくれる、というのが基本的な流れなんだが、そこはご理解されておりますか?」

「ええ、そこは……」

「ちょっと当家の特殊な事情によりまして、ああして精霊達が思いっきり術を使っているというわけでして」

「はー……」


 そういえば、と警備隊の団長は思い出す。

 サイフォス男爵家の特殊すぎる成り立ちと、特別なスキルを持っている、ということを。


「とりあえず、アイツらは放置で良いので?」

「そろそろ動かなくなってきているでしょう。……とはいえさすがに可哀想な気もするが……」


 警備隊の誰かが、うわぁ……と呟いた。


 水の精霊によって、大きな水の塊に飲み込まれただけではなく、その水が上下左右に、規則性の全くない動きでぐるんぐるんと内部だけで回転させられている上に、水の塊の中でも水流が異なるというとんでもないことになっている。


「手を出す相手を、この家の馬鹿どもは間違えた、というわけでしょうなぁ……」

「そもそもサイフォス家のご令嬢を蔑ろにしたから、彼らはこうなっているんだろう?」

「お気の毒様、というやつか?」

「いや、それ以前にさ」


 水流がおさまるまで、警備隊は好き好きに会話している。

 一般の警備兵が、最後にこう呟いた。


「利用するだけ利用して、搾取して許されるって思ってる方が、馬鹿だろう?」


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