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第18話 違和感と怒りの爆発

「本来の部屋はここ、というわけよね?」

「はい、そうです」


【えー】

【端っこー】


 本来なら、夫人の部屋は日当たりが良い部屋を宛がうべきだ、とか追い出す気満々じゃーん、とか、精霊たちは不満しかないのかあれやこれや出てくる。


「もうここからいなくなるので、特に気にしなくていいですよ。ありがとう、私のために怒ってくれて」


 ふ、とミスティアが微笑むと精霊たちはとても嬉しそうに、はしゃいでいる。

 きゃいきゃいとはしゃぎながら飛び回り、そして飽きるとミスティアの頭の上にちょこんと乗ってみたりと、本当に好き勝手しているが、大体こうなのだ、と知っているからミスティアは彼らに好きなようにさせている。


「持って帰るものといえば、宝飾品くらいなんですけど……ドレスは捨ててしまえばもうそれで」

「ミスティアちゃん、帰ったらわたくしとショッピングしましょうね! 素敵なドレスを仕立てなくちゃ!」

「姉様、あまり華美なものはやめてくださいませね?」

「あら、ミスティアちゃんはとっても愛らしいのだから何着贈っても足りないくらいなんだけど……」


 むぅ、と頬を膨らませるステラは、とても可愛い。

 そこそこな年齢なのにこれだけ可愛いのは羨ましいレベルだわ、とミスティアは思いながら部屋のドアを開けた。


 …………だが。


「お母様!」


 ぱっと顔を輝かせてこちらへと走ってくるランディの姿を見た瞬間、ステラがあ、と言う前にミスティアは思いきり部屋の扉を閉めた。それはもう勢いよく。

 ごん!という音が聞こえたので恐らくランディが部屋のドアにそのまま突進してぶつかったんだろうと推測したが、そんなことはどうでもいい。


「……何あれ」

「ミスティアちゃんの息子?」

「一応は……」


【精霊眼のない役ただず】

【っていうか、あいつミスティアにめっちゃ暴言吐いた】

【ぶっ飛ばそ】


 相変わらず悪口腹黒絶好調な精霊たちはすでに臨戦態勢、それだけ聞いたステラも、ステラの周りにいる精霊も臨戦態勢に入ってしまった。


「あの子がいると私、荷物取れないのでとりあえず部屋から出しましょうか」

「ミスティアちゃん冷静ねぇ……」


 わたくしったらついうっかり、とダダ漏れにしていた殺気をどうにかステラはしまい込んだ。

 とはいうものの、部屋の中にあれこれ荷物があるから、入らないと取れない。


「……仕方ありません」


 えぇい、と覚悟を決めて入ればランディと、ランディに寄り添ってこちらを睨んでいるメイドが視界に入る。


「奥様、ぼっちゃまになんということを!」

「……あら、その子は私を母とは思わないと自分で宣言しておりましたし、私がその子を息子と思わないのは当たり前のことではありません?」


 これから文句を言いたかったであろうメイドは、間髪入れずにくらったミスティアの反撃にあっけなく沈黙した。

 実際、ランディはミスティアのことは『お前のどこが母親だ』とか、『やーい、役立たず』だとか散々言っていた。


「自分のやってきたこと、言ってきたことを棚に上げてよくもまぁ図々しい」


 はぁぁぁぁ、と深い深いため息を吐いたミスティアに、これはいよいよ本気だったんだな、とランディもメイドも思い知る。

 どうやらランディはメイドから『ぼっちゃまがお母様、と言いながら抱き着きでもしたらすぐにあの女は思いとどまりますよ!』とでも言われていたらしい。

 そんなはずない、と目で訴えているけれどミスティアには何一つも響かなかった。


「泣きたければどうぞご勝手に。……あら」


 そういえば、部屋の中が何やらおかしい、とミスティアは注意深く室内を観察する。


「何かしら」


 きょろきょろと室内を見渡して、あ、と小さく声を上げた。


「あぁ、そういうこと」


 言ってからミスティアは貴重品をしまっていたデスクの引き出しに手をかける。

 鍵をかけていたはずのそこは、簡単に開いてしまい、中は恐らく指輪やペンダントが入っていたであろうと思われる、空き箱ばかりが入っているだけだった。


「…………っ!」


 メイドが何かを言いかけたが、言う前にミスティアが思いきりメイドの頬を叩いた。

 バチン!と重さのある音がして、思わずメイドはよろけてしまう。


「ひいっ!」


 ランディが悲鳴をあげるが、ミスティアの怒りの前には黙ることしか出来ない。


「この屋敷には窃盗犯と、クズ人間しかいないということが、ちゃぁんと分かったわ」


 低く呟かれた言葉に、ランディはへたりこみ、メイドは痛さから呆然とミスティアを見ることしかできなかった。


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