出会い3
「あ、他にも理由はあるの」
アルミーネは言葉を続けた。
「混沌の大迷宮の最下層には黄金の城があって、その宝物庫には、錬金術師が邪神に魂を売っても欲しがる『天界龍の宝珠』があるって噂があるの。それがあれば、錬金術師は何だってできるようになるから」
「それはすごいアイテムだね」
「他にも国宝級の武器や防具、不老不死の秘薬や若返りの秘薬もあるんだって。それに世界の理が全て書かれた本とか、邪神を封印した宝石とか」
アルミーネは興奮した様子で僕に顔を近づける。
「そんな話を聞いたら、ヤクモくんだって、混沌の大迷宮に行きたくなるでしょ?」
「そうだね。世界の理が全て書かれた本は読んでみたい気持ちがあるかな」
「でしょ。それにお金もいっぱい手に入るよ。王都に豪邸が建てられるぐらい」
「豪邸かぁ。あんまり大きな家はちょっと。掃除が大変そうだし」
「ふふっ、そんなこと気にするんだ」
アルミーネが笑った。
「じゃあ、ヤクモくんがやりたいことって何?」
「やりたいこと……」
口元に手を寄せて、僕は考え込む。
「……孤児院への寄付かな」
「孤児院への寄付?」
「僕は孤児院で育ったから」
アルミーネから受け取った金貨を握り締め、僕は言葉を続ける。
「孤児院の前に捨てられていた僕を拾ってくれたのがフローラ院長なんだ。フローラ院長は僕のために栄養のあるスープを毎日作ってくれた。病気になった時は、大切な髪飾りを売って魔法医を呼んでくれた。言葉や勉強を教えてくれたのもフローラ院長だ。だから、その恩返しをしたいんだ」
「……恩返しか」
「うん。冒険者の仕事で稼いで、いっぱい寄付したいんだ。あの孤児院は僕の家みたいなものだから」
「……ふーん。ヤクモくんって、優しいんだね」
アルミーネはじっと僕を見つめる。
「それなら、私のパーティーに入るのはヤクモくんにとっても、悪くない選択だと思うよ。危険もあるけど、稼ぎも大きいから」
「稼ぎも大きい……か」
「うん。混沌の大迷宮に入る資格を得るためには多くの実績が必要になる。そのためには危険度の高い依頼を受け続けないといけない。その分、報酬も高くなるってわけ」
「そう……だよね」
僕はアルミーネと視線を合わせる。
アルミーネは僕に金貨をくれた。命を助けられたお礼としても、なかなか渡せない金額だ。
それに彼女は僕を信頼できる人物だと認めてくれた。
聖剣の団を追放された僕を……。
「わかった。君のパーティーに入るよ。僕も入るパーティーを探してたし」
「やったっ! ありがとう」
アルミーネは僕の手をぎゅっと握る。
「じゃあ、早速採寸だね」
「えっ? 採寸?」
「うん。これから、私たちは危険な依頼を受けまくることになるからね。少しでもあなたの防御力を上げておかないと」
「僕の服をアルミーネが作るってこと?」
「うん。魔法攻撃と物理攻撃を軽減する服をね」
アルミーネは棚の上に置いてあった巻き尺と素材を手に取る。
「せっかくだし、『地龍の骨粉』も使っちゃおうかな。これを生地に練り込めば、魔法耐性が格段に上がるし」
「え? 『地龍の骨粉』ってレア素材だよね? 僕、全然お金持ってなくて」
「お金はいいから。これは初期投資だし」
「それは……ありがたいけど」
僕は楽しそうに僕のサイズを図るアルミーネを見つめる。
こんな形でパーティーに入れるとは思わなかったな。でも、幸運なことかもしれない。出会ってたった一日しか経ってないけど、アルミーネは信用できる人物に見えるから。
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