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ピルンとアルミーネ

 その日の夜、僕たちは他のパーティーといっしょに川辺に集まっていた。焚き火の炎がパチパチと音を立て、周囲の景色を照らしている。


「結局、神殿は見つからなかったね」


 アルミーネがため息をついた。


「初日だからね」


 僕はガホンの森の地図を見ながら言った。


「まだ、探してない場所もいっぱいあるし」

「そうね。明日に期待だね」


 アルミーネは木のコップに入った紅茶に口をつける。


「今夜は早めに寝ておいたほうがいいかな。見張りは炎龍の団の人たちがやってくれるから」

「うん。眠れる時にはしっかり眠る、が冒険者の基本だから」


 僕は丸くなって眠っているキナコを見つめる。


 こうやって眠っている姿を見ると、Aランクの冒険者とは思えないな。口から舌をちょっとだけ出しているのもかわいいと思う。


「ヤクモっ!」


 ピルンがピンク色の寝袋を持ってやってきた。


「この寝袋はアルミーネが作ってくれた特別製で寝心地が最高なのだ。いっしょに寝るのだ!」

「えっ? 寝袋に二人で寝るの?」

「この寝袋は大きいから大丈夫なのだ」


「だっ、ダメだよ!」


 アルミーネが慌てた様子でピルンの腕を掴んだ。


「男の人といっしょの寝袋に入るなんて」

「大丈夫なのだ。ピルンはヤクモのことが大好きだから」


 ピルンは僕に抱きつく。


「大好きな人とはいっしょの寝袋で寝ていいって、法律で決まっているのだ」

「そんな法律ないから! それに好きにもいろいろあって……」


 アルミーネは顔を赤くして、ピルンに説明をする。


「……だから、ピルンは一人で寝るの。第一、ヤクモくんの寝袋だって、ちゃんと準備してるんだから」

「むうっ、二人で寝たほうがあったかいのだ」


 ピルンは不満げに頬を膨らませる。


「それにヤクモだって、ピルンといっしょに寝たいって思ってるはずなのだ」

「いや、一人のほうがいいかな」


 僕は笑いながら答えた。


「女の子といっしょのベッドで寝ると気を遣うから」

「え……?」


 アルミーネがダークブルーの目を丸くした。


「ヤクモくん……女の子といっしょのベッドで寝たことあるの?」

「うん。よくあるよ」

「よくあるって……」

「僕は孤児院出身だから。今でも、たまに孤児院に泊まると子供たちが僕のベッドに潜り込んでくるよ。その中には女の子もいっぱいいるから」

「あ……そういうこと」


 アルミーネが大きく息を吐き出す。


「……もうっ! 変な言い方しないで!」


 アルミーネがピンク色の眉を吊り上げて、僕の肩を強めに叩いた。


「あっ、ご、ごめん」


 僕は慌てて頭を下げた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 2024年2月29日、この小説の2巻が発売されます。


タイトル:「雑魚スキル」と追放された紙使い、真の力が覚醒し世界最強に ~世界で僕だけユニークスキルを2つ持ってたので真の仲間と成り上がる~ 2

出版社:双葉社(Mノベルス) 作者名:桑野和明


 応援してやるか、と思った方は、ぜひ、購入よろしくお願いいたします。

 今回の話の続きがすぐに読めて、書き下ろし小説もあります。

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