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冒険者ギルド

次の日の朝、僕はタンサの町の中央にある冒険者ギルドに向かった。


 冒険者ギルドは四階建ての大きな建物で、中には多くの冒険者たちがいた。


 ロングソードを腰に提げている人間、弓矢を背負ったエルフ、革製の鎧を装備している頭部に獣の耳を生やした亜人。


 彼らは真剣な表情で、掲示板に張り出された依頼の紙を見ている。


「ちっ! ろくな依頼が残ってないな。オーガ退治の仕事で大金貨二枚はないだろ」

「そうだな。オーガなら、最低でも大金貨三枚ってところだろう」

「それなら、盗賊退治の仕事はどう? ミファ村が依頼出してるわよ」

「いやいや、盗賊退治は人数の多い団がやる仕事だろ? 俺たちみたいな四人パーティーじゃ厳しいって」

「今回は素材採集の仕事にしておくか。安い依頼でも死ぬよりはマシだからな」


 僕は冒険者たちの間をすり抜け、受付に向かう。

 そこには白い絹のシャツを着たエルフの女性がイスに座っていた。


「すみません。団員の募集をしている団はありませんか?」

「いらっしゃいませ。入団希望の冒険者の方ですね」


 エルフの女性は、僕のベルトにはめ込まれたFランク冒険者の証である白いプレートを目で確認する。


「Fランクの冒険者ですか。となると、新人の冒険者の育成を考えている団になりますね。それなら……」


 エルフの女性は木製のテーブルの上に数十枚の紙を並べる。


「……今だと、新人の冒険者を募集している団はありませんね」

「そう……ですか」


 僕の口から暗い声が漏れた。


 団はリーダーがBランク以上で団員が五十人以上いないと、冒険者ギルドに認定されない。ただ、認定されると、国の補助を受けることができて、報酬の高い依頼を受けやすくなる。


 この町には三十以上の団があったはずだけど、どこも新人は募集してないのか。


「大人数の団に入れば生存率が上がりますし、給料を受け取れて生活が安定します。ただ、当然、団のほうも即戦力か将来性のある冒険者を団員にしたいと思っていますので」


 エルフの女性は値踏みするかのように僕を見つめる。


「戦闘スキルはお持ちですか?」

「いえ。戦闘スキルは持ってませんが……難しいでしょうか?」

「……うーん。募集がありませんからねぇ」


 エルフの女性の眉が眉間に寄る。


「団ではなく、少人数のパーティーに入る選択はいかがでしょう? ソロで依頼を受けるより安全ですよ」

「募集しているパーティーがあるんですか?」

「えーと……たしか……」


「ゴミスキルしか持ってないこいつを入れるパーティーなんて、あるわけないだろ」


 突然、背後から声が聞こえた。

 振り返ると、そこにはアルベルが立っていた。


「よぉ、ヤクモ」


 アルベルはにやにやと笑いながら、僕の肩を叩く。


「新しい仲間探しか。大変だなぁー」


 アルベルは周囲にいる冒険者たちにも聞こえる声で言った。


「こいつは将来性のない弱い冒険者って判断されて、団を追放されたんだぜ」


「おいっ、マジかよ?」


 青髪の男がアルベルに声をかけた。


「追放って、おだやかじゃねぇな」

「それだけ、こいつがダメだったってことさ」


 アルベルが僕の頭を人差し指で突く。


「こいつは紙を具現化するだけのユニークスキルしか持ってねぇし。そりゃあ、追放もしたくなるって」

「……ふーん」


 青髪の男はちらりと僕を見る。


「たしかにそれじゃあ、団どころかパーティーに入れたいと思う者もいねぇだろうな」

「というわけさ、紙使い」


 アルベルは僕に顔を近づけて舌を出す。


「これからは冒険者ギルドで記録係でもやったらどうだ? それならお前の雑魚スキルも役に立つだろ。あ、でも、具現化する紙は時間が経つと消えちまうから、意味ねぇか。ははっ」


 周囲にいた冒険者たちが笑い出した。


「そりゃ、使えないユニークスキルだな。戦闘以外にも役に立たないのか」

「運が悪かったな、坊主。強いユニークスキルだったら、Sランク冒険者になれたかもしれねぇのに」

「戦闘センスのないヤクモじゃ、強いスキルを持っててもSランクなんて無理だって」


 アルベルが笑いながら言った。


「まっ、Sランクになるのは、戦闘スキルを三つ持ってる俺さ」

「……ほぉ。お前、戦闘スキルが三つもあるのか?」


 青髪の男が目を丸くした。


「二つはたまにいるが、三つは珍しいな。お前、強くなるぜ」

「そのつもりさ。スキルだけに頼るつもりはないからな」

「おいっ、お前、俺たちの団に入らないか?」


 背の高い男がアルベルの肩に触れた。


「戦闘スキルを三つも持ってるなら、将来、うちの団のエースになれるぞ」

「それは無理だな。俺は聖剣の団の新人だから」

「あーっ、聖剣の団か。あそこはAランクが四人もいるからな。うちの団より格上か」


 背の高い男はがっくりと肩を落とした。


 結局、パーティーの仲間募集の依頼もEランク以上の冒険者を求めていて、Fランクの僕では条件が合わなかった。


 仕方なく、僕は薬草採取の仕事を受けることにした。これなら、Fランクのソロでも受けることができるから。


 今は地道にやるしかない。もうすぐ昇級試験もあるし、そこでEランクになれたら、団は無理でも、どこかのパーティーには入れるだろう。

この物語を『面白い』『続きを読んでみたい』『作者がんばれよ』『応援してやるか』など思っていただけたら、ブクマ、評価などしてもらえると、作者が大喜びします。


また、私の作品以外でも、小説家になろうの中で気に入った作品があったら、同じように評価してあげてください。

作者は、こういうことで喜び、モチベがあがるので。


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よろしくお願いします(ぺこり)

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[気になる点] 主人公は倒したキマイラをギルドに運ばなかったのですか?(一部素材や討伐証明部位など)…金になるでしょうし、強さの証明にもなるのに…
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