切り札
「ば、バカな……」
ダグルードは呆然とした顔で僕を見つめる。
「どうして柱が消える?」
「僕が作った紙の柱だからだよ」
僕は魔喰いの短剣を構えて、ダグルードの疑問に答えた。
「紙……だと?」
「うん。擬態効果がある紙だよ。それで紙の柱を作って、キナコに誘導してもらったんだ」
「ぐっ……貴様っ!」
ダグルードは黄金色の剣を振り上げた。
怒りでアレがまだ残っていることを忘れてるな。
僕は頭上を旋回していた操紙鳥を動かし、ダグルードの背中にぶつけた。
大きな爆発音が響き、鎧の一部が破損する。
「あとはまかせておけ!」
キナコがダグルードに突っ込む。
「『肉球波紋掌』!」
キナコの肉球がダグルードの脇腹に強く当たった。ダグルードの顔が苦痛に歪み、黄金色の剣が地面に落ちる。
「私を忘れてないわよねっ!」
逆方向からシルフィールがダグルードに攻撃を仕掛けた。双頭光王を振り回しながら、素早く呪文を唱える。
シルフィールの両手のひらから青白い光が放たれた。その光は一直線にダグルードの腹部に当たる。
「ぐあっ……ぐ……」
それでもダグルードは倒れなかった。腹部から青紫色の血を流しながら、キナコとシルフィールから距離を取る。
「もう諦めろ」
キナコがダグルードに近づく。
「この状況でお前が勝てる可能性はゼロだ」
「……お前たちの顔は覚えておく。次に戦う時がお前たちが死ぬ時だ!」
「次があると思ってるのか?」
「あるな」
ダグルードの背中から黒い翼が生え、ふわりと浮かび上がった。
「逃がすかっ!」
キナコが高くジャンプしてダグルードの足首を掴もうとしたが、ぎりぎりで届かない。
ダグルードは口角を吊り上げて笑う。
まだ、笑うのは早いよ。
僕は宙に浮かんでいるダグルードの周囲に無数の紙の足場を具現化した。その足場を使って、ダグルードに近づく。
「またお前かっ!」
ダグルードは怒りの表情で僕に右手を向ける。指の先端から、青白い光線が発射された。
僕は紙の足場をジャンプして、光線をかわす。
一瞬、キナコとシルフィールが紙の足場を利用して、近づいてくるのが見えた。
あの二人なら、この足場を使ってダグルードを攻撃できる。
「くっ……くそっ!」
ダグルードはさらに上に逃げようとした。
そうはさせない!
ここで切り札を使う!
魔法のポケットに入れていたあの紙を全部出して……。
「『黄金紙吹雪』!」
黄金色に輝く細かい紙片が吹き上がる吹雪のように乱れ飛ぶ。
小さな紙片がダグルードの体を切り刻み、ぶつかり合った紙片同士が次々と爆発した。
この紙片は小指の爪より小さいサイズだけど、強い魔力が込められている。しかも紙同士がぶつかると爆発する効果がある。その威力は小さいけど、何百回も爆発すれば……。
ダグルードの翼が破れ、鎧の一部が砕けた。
「があっ……っ」
ぐらりとダグルードの体が傾き、下降していく。
呪文を唱えていたシルフィールが真横からダグルードに突っ込む。
「『神撃月虹』!」
双頭光王の刃が七色に輝き、ダグルードの鎧を貫いた。
「があっ……あ……」
ダグルードは両目を大きく開いて、自身の胸元に開いた大きな穴を凝視する。
「これが私の決め手よ。六属性全ての魔法を組み合わせて双頭光王の攻撃力を限界まで上げたの」
シルフィールが上唇を舐める。
「この技を受けて死ななかった生物はいないわ」
「こ……こんなバカな……ことが……」
ダグルードの声が途切れ、金色の瞳から輝きが消える。
そして――。
ダグルードの体が真下に落ちた。ぐしゃりと音がして、青紫色の血が神殿の床に広がっていく。
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