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ダンジョン

 その後、僕たちはモンスターを倒しながら、ダンジョンの探索を続けた。


 あちこちに調査団の痕跡はあったが、彼らを見つけることはできなかった。


「むむむっ! ここも行き止まりなのだ」


 ピルンが半円状の壁の前で頬を膨らませた。


「さっきから、行き止まりばかりなのだ。調査団の人たちはどこにいるのだ?」

「うーん。ここも違ったかぁ」


 アルミーネが頭をかいた。


「調査団の痕跡から考えると、こっち側にいる可能性が高いと思ったのに」


「そうだな」


 キナコが地面に顔を近づけて、鼻をひくひくと動かす。


「古い乾パンの粉が落ちている。ここに調査団がいたのは間違いなさそうだが……」

「行き止まりだから戻ったのか……それとも……」


 アルミーネは半円状の壁に近づき、右手で触れる。


「あ……この壁……少し気になるなぁ」

「んっ? 何が気になるの?」


 僕はアルミーネに質問した。


「うん。今までの壁と違って、微量の魔力が感じられるの。これは何かの仕掛けがあるみたい」


 アルミーネは魔法のポーチから魔法文字が刻まれたカードを取り出した。そのカードには円形の穴が二つ開いていて、下部にガラス板のようなものがはめ込まれている。


 どうやらアルミーネが作った魔道具のようだ。


「さて……と……」


 アルミーネはカードを顔に近づけ、開いた穴から壁を見つめる。


「んーっ、ここは違うか。じゃあ……こっちかな」


 数分後、彼女の足が止まった。


「ここか……」


 アルミーネが人差し指で壁に触れると、金属同士がぶつかり合うような音が聞こえた。

 そして壁の一部が左右に開き、細い通路が現れた。


「こんな場所に隠し通路があったのか……」


 僕は真っ直ぐに伸びた薄暗い通路を覗き込む。


 普通の冒険者なら、この隠し通路を見つけるのは難しいだろう。だけど、調査団なら、見つけて先に進んだ可能性は……あるか。


 ひんやりとした空気が引き締まった僕の顔に当たった。


 薄暗い通路は僅かに傾斜していて、右に弧を描くように曲がっていた。

 その通路を僕たちはピルンを先頭にして進んだ。

 十分以上進むと、金属製の扉があった。その扉をピルンが開くと、一気に視界が広がった。

そこには黄土色の建物が並ぶ町があった。


「ここは……」


 僕は口を半開きにしたまま、町を見回す。

 町の建物は立方体を積み重ねたような形をしていて、多くが半壊していた。天井は高く、百メートル以上はあるだろう。その天井がぼんやりと輝いていて、静まり返った町を照らしている。


「これは地下都市の遺跡みたいね」


 アルミーネが口を開く。


「多分、この建物の形はポルタ文明かな」

「ポルタ文明って、五百年以上前に栄えた文明だっけ?」


 僕の質問にアルミーネがうなずく。


「邪神ドールズの復活を危惧して、当時の王が多くの地下都市を作ったんだよね。そこには財宝が隠されてるってウワサもあるよ」

「財宝があるのかっ!」


 ピルンの紫色の瞳が輝いた。


「これでピルンも家が買えるのだ」

「いや、私たちは雇われてこのダンジョンに入ってるから、財宝があったとしても自分たちのものにはならないよ。少しは追加の報酬をもらえるだろうけど」


 アルミーネが言った。


「まっ、今は財宝よりも調査団を見つけないとね」


 その時、遠くからパンと爆発音が聞こえ、青色の煙が上がった。


 あの煙は……救援用の煙玉を使ったのか。誰かが助けを求めてるんだ。


 僕たちは同時に動いた。斜面を駆け下り、煙の上がっている方向に走る。

 半壊した建物を曲がると、ウサギの耳を頭部に生やした亜人が八体の骸骨兵士に囲まれていた。

 骸骨兵士は額に赤い宝石が埋め込まれていて、黒い鎧を装備している。


 あの亜人……昇級試験の時に白銀狼と戦っていたミルファだ。どうして、こんな場所に……って、そんなことを考えてる場合じゃないっ!


 僕たちの接近に骸骨兵士が気づいた。

 骸骨兵士は白い歯をカチカチと鳴らしながら、両手に握った曲刀を同時に振り下ろした。


 僕は左右に魔防壁を展開して、その攻撃を止める。

 そして、魔喰いの短剣で骸骨兵士の顔を突いた。

 青白い刃が骸骨兵士の下顎を砕き、白い歯がボロボロと地面に落ちる。


 しかし、骸骨兵士の動きは止まらなかった。予想以上の速さで僕の側面に回り込み、曲刀の攻撃を続ける。

 僕は紙の壁を出して、骸骨兵士から距離を取る。


 この骸骨兵士たちは普通の個体とは違う。力が強いし、スピードもある。額の宝石で強化してるのか?


 それなら――。


 僕は魔喰いの短剣に注ぎ込む魔力を増やした。青白い刃が一メートル以上長く伸びる。


「カッ……カカッ」


 骸骨兵士が大きく口を開いて、曲刀を斜めに振り下ろした。その攻撃を頭を低くしてかわし、魔喰いの短剣で骸骨兵士の足の骨を斬った。

 骸骨兵士の体がぐらりと傾く。


「あとはまかせるのだーっ!」


 ピルンがマジカルハンマーで骸骨兵士の頭部を叩いた。赤い宝石が割れ、頭部がなくなった骸骨兵士がバタバタと手足を動かして横倒しになる。


「ありがとう、ピルン!」


 僕はピルンに礼を言って、ミルファに走り寄る。

 ミルファが僕に気づいた。


「あ、あなた……昇級試験の時の……ヤクモくん?」

「話は後で!」


 僕は突っ込んできた骸骨兵士の前に紙の壁を出した。骸骨兵士が紙の壁にぶつかり、片膝をつく。そこにキナコが駆け寄り、骸骨兵士の頭部を肉球で叩いた。陶器が割れるような音がして、骸骨兵士の頭部が粉々になる。


「ミルファ! まずは敵を全員倒そう!」

「わっ、わかった!」


 僕とミルファは正面にいた骸骨兵士に攻撃を仕掛けた。

この物語を『面白い』『続きを読んでみたい』『作者がんばれよ』『応援してやるか』など思っていただけたら、ブクマ、評価などしてもらえると、作者が大喜びします。


また、私の作品以外でも、小説家になろうの中で気に入った作品があったら、同じように評価してあげてください。

作者は、こういうことで喜び、モチベがあがるので。


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よろしくお願いします。

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