ポーションの効果
2リットルのペットボトルで20個のポーションBを作成して、空っぽになったペットボトルに水道水をいれる。
日本の基準だと飲んでも問題ない水道水だけど、やっぱり少しだけカルキ臭いというか…
気になる時は気になるよねぇとくんくんと匂いを嗅いでみる。
その水に指先から、綺麗になるように…そうだな不純物を取り除くイメージで…。
「なんか…キラキラ…してる?」
これは台所の小窓から明かりが入ってるからとかではない。
これこそ鑑定の出番では?とスマートウォッチをみたら、魔力水とでた。
魔力を含んだ水、なるほどそのままですね。
なんとなく体に悪いもんでもないだろうとコップ一杯飲んでみたけど、味も変化なく特にわからないただの水。
ただしいていうなら、水道水っぽさはなくなったなとおもう。ミネラルウォーターのような感じ。
それをポーションにしてみたら…
『ポーション(B+)深い傷が治り、状態異常が速やかに治る。味は飲みやすいが、少しざらつく。』
おー!きた!
これはいいのでは!…けどあれか、急にいい品質のものが市場に出回ると大変なことになったりするのだろうか…?
いやでもこんなBぐらいでいい品質でもないか。
様子を見て売るのは考えるとして、まだ実験はしたい。
そもそもこの薬草を栽培できるのか、というところが気になる。
薬草そのものが品質が上がればポーションの品質も必然的に上がるはず。薬草に品質があるのか分からないけど。
小さいながらもベランダがあるので、今度プランターと土を買ってきて試してみたい。
うんうん、次の休みはホームセンターに行くことにしよう。ついでに洗剤のストックとかね。
とりあえずはこのポーションを売れるかどうかも気になるので再び扉の向こう側へ。
門番に身分証明書を提示しながら、聞いてみる。
「ポーションって、どこかで買取して貰えますか?」
「それなら生産ギルドがいいんじゃないか?あのでかい建物の横にある茶色の建物がそうだから行ってみるといい」
お礼を言いながら、やっぱり生産ギルドもあるのかぁと目的地に進んでいく。
とりあえず販売してもらった品質と同じものを提示して、様子を見てC+を見せてみようかな。
「ようこそ生産ギルドへ。ご要件はなんでしょう?」
「あ、えーっと」
まさかすぐ声をかけられるとは思っておらず、そしてこの世界で初めて話しかけられたぱっと見てわかる人間以外の種族に口ごもってしまった。
いやいやこんなことでドキドキしてられない。
「ええと、すみません、ポーションを買取してもらえたりしますか?」
「はい!ではこちらへどうぞ」
案内された先は半個室のような区切りがされていて、向かい側には案内してくれた人がそのまま着席した。
見るからにイヌ科です、という毛並みと耳。ちらりと見える犬歯は鋭さがある。
というか犬が二足歩行している。
オオカミっぽいな?
「ではこちらにポーションをのせていただけますか?」
なにか木の台のようなものにカバンから水道水と薬草だけで作ったCのポーションをひとつのせると、微かに光った。
というか手は人間っぽさあるー。
まぁあの肉球の感じだと何かと補助が必要になりそうだしね。
これは品質チェックか鑑定するものなんだろうな、と相手を見ると、うんうんと頷いている。
「こちらポーションですね。では100レンとなります。」
販売価格と同じなんだとわかり、とりあえず5つ渡して500レンを冒険者カードに入れてもらう。
「あの、これは売れますか?」
そういって、C+のものを先程の木の台にのせると、ピクリと耳が動いた。
おお、耳だけ動くとは流石…とみていると、じーっとポーションをみている。
むしろこの人…人?性別がわからなーい。
キリッとしたオオカミっぽい感じだし背が高いけど…まぁ性別はとりあえずいいや。
ポーションとわたしを見比べてるけど、うーん、この反応はどうなのかがわからないぞー?
「こちら、どこで手に入れたかお伺いしても?」
「あー…自分で作りましたが、ダメでしたか?」
「あら、では薬師さんなんですね」
その問いには、はははと言葉を濁し笑って誤魔化す。
そもそも薬師ということはポーションを作るのは薬師の仕事なのだろうとは思うけど、やってること錬金術に近い気がしているし、魔法でモンスター狩ってるあたり、そもそも私はなんなんだ?ていう。
日本の社畜だよ!
このC+は300レンで買い取ります、と言われたのでとりあえず取り引き。これも5つ。
ちょっとさっきの反応が何を意味するのか判断しかねるし怖いので、Bのものは提示するのはやめた。
今度にしよう、今度。
チキンだからね、仕方ないね。
もう少し世界を知ってからにしよう、と生産ギルドを後にすると、またお越しくださいとにっこり見送られる。
これはまた売りに来てねってことだろうか。
流通が滞ることなどがあるのだろうか。
いやでもこの世界、きっと魔法で傷なんて治せるのでは?そこまで需要があるとは…。
うーん、日本とは全く違うからそこら辺は難しいなぁとちょっと街をうろついてみる。
それなりに人の流れもあるから、流通が〜なんてことはなさそうだし、販売されてる野菜はよく見かけるものもあり、物価は少し安い?ぐらい。
都内と地方の値段差という感じだろうか。
お肉も売られていたけど、見たことない名前の肉もあったので、あれはもしやモンスターの肉…?
gでみたらちょっといい値段したので、きっと美味しいものなんだろう。
街から出て草原から家に帰るかね、と門に向かっていると門のところに人だかりができている。
なんだ?と覗き込んだら門番が血まみれの人を抱えている。
うわ、と顔をしかめてしまうが、周りの声を聞いていると、どうやら最近ランクが上がったばかりの冒険者らしく、4人ほどで討伐に出かけてしくじったらしい。
1人だけ傷が大きく、ほかの3人も怪我こそあれども大きな傷はない。
だけど顔色は青ざめていて、ただただ門番が抱えてる人を見つめている。
きっとあの人はタンクのような立場なんじゃないかな?たぶん。
ヒソヒソと聞こえる周りの声は、『だから調子乗るなといったのに』『ランクが上がったからといって万能ではないと、なぜ耳を傾け無かったのか』『これは自業自得だ…』『聖人もあれだからな…』
ほほう?回復できる人、聖人かな?ヒーラーがやっぱりいるのかな?でもこの場にはいないのか、珍しいというより、あれだからな、に全てまとめられている気がするけども…
というかポーション持ってないのかな?
うーん、ここで見て見ぬふりは出来ないなぁと、近寄りBのポーションを門番に渡す。
これで治せるのかはわからないにしても、傷はそこまで深くなさそうだし…ないよりましかな?
「…飲むかわからんが、いいのか?」
「まぁ、ほっとけないので」
「すまない、代金はあとで支払わせよう」
キュポッとコルクが抜かれゆっくりと、虫の息の冒険者の口に入れていく。
これ飲むかわからんって言うけど、飲めない場合は傷にかけるのかしら。
その時も同じように治るのか、それとも少し治りが悪くなるのか…。
それとも瀕死だから飲めるかわからんってことかな?
見た感じむせることなく飲めてるけどなー?
観察していると、みるみる傷が塞がっていく。
それは不思議な光景で、肉が盛り上がり元に戻っていく。
傷口の回復力がすごく高くなって再生しているようなものかな?となかなかグロいその光景を眺めていると、周りが静かなことに気がついた。
おや?と周りを見るとその傷口に注目している?
おっとこれは…やらかしたかもしれないし、気の所為かもしれないが、なんとなくこの場から離れるべきだという気がするので、そぉっとその場から動きそそくさと草原に向かう。
「…よし、ホーム」
果たしてあの人は大丈夫なのだろうか…
ポーションで傷は治ったところで、それまで流した血液が復活する訳では無いだろうから、失血死なんてこともあるだろう。
輸血の文化なんてないかもしれない…
いやでもそもそも血を増やすポーションなんてものがあるのかも?
どんなポーションだろうか…造血?うーん、やっぱ赤いのかな…
いやいや固定概念外さなきゃ
あの世界のみんなが赤い血かというとね、違うかもだしね!
もしかして説明書に載ってるかな?なんて捲ってみたものの、今度生産ギルドで聞いてみる方がよっぽどノーラの世界を楽しめる気がする…。
もしかしたら教会か病院があって運び込まれてるかもしれないし。
それこそヒーラーがきたら一発全快では?
うんうん、とりあえず説明書は閉じておこう。
とりあえず次に確認すること、やることリストをスマホに入力していく。
休みにはプランターと土を買う。
ノーラの世界の薬草を6つほど根っこごと抜いて植えてみる。
その際、水は魔力水を与える。
生産ギルドでポーションの種類を確認して、必要な材料の確認。
それから冒険者ギルドにて、依頼書の確認で生産に繋がりそうなものを受ける。
薬師のこととかわかりそうなやつがあればうれしいな。
そうと決まれば、とりあえず販売できそうなC+のポーションとBのポーションをあるだけ作っておこうと在庫をスマホで確認したら、味を良くしたBのポーションがひとつ減っていた。おんやぁ…
どうやら先程のけが人に飲ませるのをうっかり間違えたらしい。
そりゃあんなケガしてる人近くで見ることなんてないし、さすがに動揺していたのだろう。
まぁ仕方ない。うん、仕方ない。
それにほら、とりあえず飲めてたし、傷もりもり再生して治ってたし?
効果はバッチリだね。
そして肝心のポーション作りのための薬草の在庫が空っぽだったので明日は薬草狩りからはじめよう…と、今日はクローゼットを閉じて過ごすことにした。