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異文化コミュニケーション

19


まさか急に話しかけてくるとは思わなかった。

そして見えた姿は手はカマキリのかま。手というか、腕?

でも腕4本あって、そのうち上二本がカマキリで下は人間。

虫人間って思ったら、下半身ヘビ。

サイズはわたしと変わらない。

顔?人間だけど黒目と白目が逆転した色してんだよな〜!

結論、人間ではないわ。


…キメラ??



――お前が挑戦者か?――


「あ、はい」


――では問答無用――


「え、待って。挑戦者じゃなかったらどうなるの?」



待て待て。では、ってなんだ。

では問答無用って。

だったら挑戦者じゃなけりゃええんかいっていう。



――む?違うのか?何しに来た?――


「ええ…ダンジョン探索。だけど別に戦わなくていいなら戦いたくないんですけど…あ、クッキー食べます?」



会話を交わしてる間は別に殺意って言うの?ピリピリしたものを感じないから、まぁいっかっていう。


ごそっと缶を取り出したら興味深そうに寄ってきた。

まぁ確かにそうか。

パコっと開けた瞬間ふわっと甘い匂い。

うーん、小麦!

あ、トキくんとこの小麦大量に出来たらそれこそクッキーも沢山焼けるなぁ。


ただただシンプルなノーマルクッキー。

ココアを練りこんだチョコ色のクッキー。

チョコチップをいれたチョコチップクッキー。

砕いたナッツをいれたナッツクッキー。

飽きないようにつくったごま入りのチーズクッキー。

あと抹茶とかほしかったけどなかったんだよね。


はいどうぞ、ととりあえず1枚ノーマルのものを渡すとしげしげと見つめてる。



――これは?――


「クッキーです、食べ物。甘いおやつ…って伝わるのかな」



もしゃりと口に入れたら、真似して食べた。

そして…


――…っ!!!――



わー、キラキラなお目目。

美味しいよねー、分かる分かる。

はい次、と順番に別の味を渡すと、どれも真剣に味と向き合ってる。

ここまで真剣に食べてもらうこともないな。



「おいしい?」


――すごい、どれも美味。――



お茶ないからとりあえず魔力水ぐびー。

あ、でもここで仲良くなっちゃうと次のフロア行けないのでは?



「…ていうか名前は?」


――ないな――


「そうなの?じゃあつけちゃおう、なにがいい?」



なにがいい?てきいちゃったけどよかったのかな。

いやもう口から出た言葉は覆らないけども。



――これはなんていう?――



指さされた先にはナッツを入れたクッキー



「え?えーと、クッキー。これはナッツっていう木の実を砕いたものをいれてるやつだね」


――ふむ、ならばナッツでよい――



ほお?

あ、名前か。好きな物名前にしたかー。

まぁありだね、ナッツさんね、ナッツさん。

確かに途中からサクサクと自由に食べだしたけどナッツクッキーの減り方が凄いもんな。

今度ナッツクッキーだけを缶に詰めてこようか。

あ、今度があるのかな。



「ナッツさん、質問です。」


――む?――


「先に進むにはどうしたらいいですか?」


――ここでてひたすらまっすぐ進んだら滝があるからその中に進めばいい。どれ、道案内してやろう――



道案内…?

ええ?フロアボスでは?



「え?出られるの?」


――わしの部屋から出て何が悪い?――



部屋。いやまぁそうね、部屋ね。

ちょっと待って、なんかおかしい。



「あの、ナッツさんはここのフロアボス?」


――なんじゃそれ。ここに住んどるだけだが――


「結構な頻度でここに冒険者来てない?」


――来るな、鬱陶しいから毎回時間決めて戦って適当なところで次行きたいなら滝に行け!って伝えて隠れてたが?――



おっとぉ…。

倒されてる訳でもない。

単純に冒険者が部屋荒らしてってるだけの迷惑行為されてる人!!

この感じだと倒さなくても滝の中に道はあるし行けるのでは…?

なんでこの情報が回ってないんだ?

行こうかって言われたけどちょっと待ってもらってる。


だって、フロアボスだと思われてたこの人がドアからバーンって出てったら阿鼻叫喚じゃない?

うーん…。


…いいや、めんどくさ。

わたし戦ってないけど、強い人なんだろうし、なんとかなるか。

ちょっとどう考えたらいいのかもわからないしね!



「行きましょー」


――お主についてったらクッキー食べられるしな――



おっと本音はそこかな?

すっごい、半分ほどなくなってるもんねクッキー。

結構な量あったと思うんだけどな〜?



ガコン


と、扉を押したら、ぐん!と引っ張られる感覚に慌てて手を離したら、入る前まで話してたパーティがにやにやしてた。

にやにやしてたんだけど、すぐに顔面蒼白になった。

なんでかって?後ろにナッツさんいるからね!



「おま!」


「手を出すな!」



慌てて攻撃してこようとしたパーティの目の前に火の玉を浮かべる。

ちょっとでも動いたら爆発してやるからな。

周りの順番待ちしてたパーティも戦闘態勢。



「この人はフロアボスじゃない。ここの住人。この人に挑まなくてもここを真っ直ぐ行ったところの滝の中に次のフロアへの道はある。だから手を出さないで。」



じりじりと外に出る。

ナッツさんも普通についてくる。



「なんか騒がしいと思ったら薬師殿?ってどうしたんだ?」


「フロアボスと誤解されたこの人に道案内頼んだところ」


――なんじゃ、出てこん方がよかったか?――



タイミングいいのか悪いのか、ラウルさんとこのパーティが現れたことで少し事が動きそう。

ラウルさんとこのパーティはやっぱりそれなりに有名で実績と信頼があるらしい。なるほど。

シノノメのとこの知り合いかと確認作業が行われてる様子。

なるほど、シノノメ、東雲ね。

夜があけようとしてるか。

で、ついでに確認しよう。



「ラウルさん、滝の中に次のフロアへの道は?」


「あるよ」


「ラウルさんはこの人と戦った?」


「いや?だって滝の中に道あったし」


――こやつらとは戦った記憶がないの――



今度は周りのパーティが騒ぎ出した。

ここはフロアボスじゃないのかと。

みんなここにいるし並んでるからそうだと思ってたと。



「…はい!解散!」



手をパンパン叩きながら散れ散れ〜と動かす。

みんなゾロゾロ滝に向かいだしたのでとりあえず一安心かな!!


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[一言] なんだー住人かー
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