冒険者ぽいことする日がきた
13
「ポーション、」
「そう!行商から噂を聞いたの!」
言葉を続けるより先にマシンガントークが開始された。
どうやらいつも薬草を買い取っていた行商が、薬草ないねんと言われて、え?薬師おらんのに?となり、代わりにこれ買ってく?と言われて差し出されたのがわたしのつくるポーションだったと。
高くね?と聞いたら、いやいや鑑定した結果見る?と、提示された結果はまぁ素晴らしい!となったようで、お値段納得!となり、買い取ったものをご贔屓に流したと。
それが別の行商に話が行き、噂になり、たまたま近くのダンジョンに来てたらしいこの冒険者たちの耳に入り、近いし行ってみようとなったと。
人の口に戸は立てられぬ、とはよく言ったもんだ。ほんとに。
というか、ダンジョン興味あるぅ。
えー、あるかな?て思ってたけど、あるならみたい!
「ポーションを売っていただけるかしら、ダンジョン攻略する中で足りなくなってしまったの」
弓使いの人が申し訳なさそうにするけど、対価貰えるなら別にいいんだけどな?
「どうぞ?レックスさんとこに卸してるのじゃ足りないというなら待っていただくことになりますが……」
ちらりとレックスさんをみたら、にっこりして在庫一覧をシュッと取り出してきた。
出来る人だぜぇ……。
こんなにあるなら大丈夫だわと嬉しそうなので事足りるようですね。
なにより。
「ええと、ダンジョンがどこにあるかお伺いしても?」
「コタニさま、ご存知なかったですか?」
いち早く反応したのはレックスさん
うんまぁあるのかさえ知らなかったからね、聞いてないしね。
どうやら森の奥に存在していて、見た目は洞窟だと。
ただし足を踏み入れたら洞窟ではないとすぐわかるらしい。
なんだろう?空気感?
そして定期的にダンジョンの中のモンスターは討伐していかないとスタンピードが起きます、と。
スタンピードって……ええと、あれだ?魔物の氾濫的なやつだっけ。
そいつぁ困ったこった。
薬草畑を荒らされたらたまったもんじゃねぇわ!
とんでもねぇ!
「そのダンジョン、わたし行ってみたいんですけど」
『え!?』
「え?」
え?
なに?そんなに?なんの反応?
時が止まったよ?え?なに?天使通過中なの?ん?
「薬師っぽくない薬師とは聞いていたけれども、まさかダンジョン行きたがる薬師とはな」
「え?」
「薬師というのはだいたい街から出ないものなんですけど」
「へえ?」
「噂に違わぬ人なのね」
何も言えない。ははは。
この世界の普通がわからないからなー。
まぁ、レックスさんは慣れてきたのかここですね〜って地図を見せてくれたのでほうほうと確認。
んん、一旦帰ってポーション整えたら行こうかな。
じゃあ薬草貰いに行って〜とこの後の算段を立てていると、目の前の冒険者がにっこにこみている。
なんだこのにっこにこ。
とりあえず釣られてへらりと笑う。
日本人よね、愛想笑い。
「わたしたちも同行しても?」
「へ?」
「そもそも薬師が一人で行くのはオススメしないしな」
「あー……まぁはい、いますぐは行きませんので、用意できたらここのギルド前でいいですか?」
ちょっとめんどくさいけど断る理由もないしまぁいっかなっていう。
まぁこれもまた楽しむためのものとおもえば!
うんうん。
さて、トキくんのところで薬草を受け取り帰宅。
さっさとポーションにして、ついでに家庭菜園の薬草のポーションもチェック。
あとトマト。
無限トマトなのよ、いま。これトマトの消費に悩む。
冷凍してる奴をそのままマジックバッグにぽい。
味が濃くて美味しいからトマトソースにも良さそうなんだけど、今度かな。
あとはダンジョン内で食べるご飯は……なんか適当にあるな、ストックもりもりマジックバッグに詰め込んでるしな。
いざとなれば肉焼いたらなんとかなる、うん。
ピグモウとカウカウ討伐したやつあるしね。うんうん。
ほんで、とりあえずでっかいブランケット。
さくっと戻ってギルド前。
レックスさんに一応声をかけようかと思ったらルーシィさんがいた。
無言で手招きされたのでとりあえず近寄っとく。
「ダンジョン無茶はするなよ」
「ええ、でもひとりじゃないので」
「まぁな、何日潜る?」
「あ、そんな感じです?一日半かな」
「初回ならその程度が妥当だな」
とりあえずタイマーだけセットしておこう。
スマートウォッチってこういう時便利ね、ほんと!
「あぁ、あとこれを」
差し出されたのは何やらローブ……かな?
こう着るんだ、と着せてくれたのは大きめなポンチョのような……?
うーん、黒魔術師!って感じするわ〜。
「一応な、防御力高めだ。必要なさそうだが、念の為。ご贔屓にしてもらってるからな。」
「ありがとうございます、いいんですか?」
「いなくなるのが痛手だしな、あとなにより俺からしたらこどもも同然だ、世話くらい焼かせてくれ」
ため息とともに頭ポンポンですよ?みました?
胸きゅんですよ!きゅんです!
ただ目は恋するイケメンではなく孫を見るおじいちゃんでしたけどね!?
さすがエルフ。
「外でお待ちのようですよ」
ひょこっと現れたレックスさんに言われて外に出ると既にスタンバイしてる冒険者さん達。
「お待たせしました」
「いや……ほぼ装備変わってないが?」
「え?まぁローブぐらいですね、マジックバッグありますし」
なるほど?とやや納得したんだかどうなんだかな反応をされたけどまぁいいや。
ちなみに名前を聞き損ねたので自己紹介。
ローブ(魔法使い)→リリィ
近接(戦士)→スカイ
遠距離(弓使い)→レスト
タンク→ラウル(虎獣人)
と、言うらしい。
覚えられるかな……。
とりあえず虎獣人さんが目立つ。
ゆらゆらとした尻尾に長身でその背と変わらない盾。
いやわたしの世界にいないから目立つように感じるだけなのか?
なんかめっちゃ全体的に目立つ。
ざわざわされてる。有名なのかー。
街から出る時に門番さんに、どこ行くんだ?と聞かれダンジョン!と答えたらしばらく沈黙して
「まぁ、うん、あんたなら大丈夫だろ」
と遠い目をしていたので、がんばりますと返しておいた。
規格外だしなっていう心の声が見えた気がしたけどね?
ほら、気にした負けよ、負け。
さて、問題のダンジョン。
特に問題なく来れました!ぱんぱかぱーん。
カウカウが森の中で出たんだけど、まぁまさか格闘牛が森の中だと忍者仕様になるとか思わず笑ったよね。
スマートウォッチに赤丸出たなって思って振り返ったら遠くから木の上を飛んで来る牛。
お、と思って速攻水の矢で構えたら向こうもクナイ?みたいなの投げてくるの。
慌てて撃ち落としたんだけど。
そのままカウカウ忍者もグッバイ。
じわじわと木の上を華麗に飛びまわる小型牛に笑いが込み上げちゃって不審者になったよね。
ははは。
そもそもクナイどっからでてきたんだろ。
「薬師なのに魔法使ってるし強いってなんかもう規格外が過ぎるな?」
「なんかそのセリフ言われたことある気がしますね」
頭抱えてらっしゃるけど大丈夫かしら?と思いながら突き進んだら、ダンジョンに着いたわけですが。
ちゃっかり珍しそうな草はチェックしてあります。ふふふ。
ダンジョン前ではひとまず装備チェックと腹ごしらえ。
他にもダンジョンにきている冒険者らしき姿もちらほら。
ほっほう?
なるほどみなさん重装備。
そうなるとわたしは……軽装備。浮いてるわ。
まぁ気にしないけど。




