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第73話

「さて、プリシラは店にいるのかな?」


 急遽出来た待ち時間だったので、いきなりプリシラの店を訪れることになるが……いつものことか。


「そろそろパプリもお腹が減ってくるだろうし……プリシラの店で薬草恵んでもらおう」


 そうして俺はパプリを抱えてプリシラの店に向かった。

 しかし、プリシラの店に着いた俺はその様子が少しおかしなことに気がついた。


「なんだ?珍しく明かりを点けてるじゃないか。いつも薄暗いのに」


 プリシラの店がある裏路地はすでに暗くなっていたので、プリシラの店から漏れる明かりがかなり目立っていた。


「おい、入るぞー」


 プリシラの店の扉を開きながら、俺は店内に向けて声をかけた。


「あらあんたかい。どうしたんだいこんな遅い時間まで。家遠いんじゃなかったかい?」


「ちょっと色々あってな。待ち時間ができたから寄ってみたんだ。早速で悪いんだがパプリの分の薬草を貰えないか?」


「そうなのかい。ちょっと待ってな……エドラ草で良いんだろう?」


 そう言ってプリシラは薬草を用意し始めた。

 

「ところでなんで明かりを点けてたんだよ?いつも薄暗いんだから昼間もつけておけばいいのに」


「さすがに夕方からは暗くなって何も見えないからね。昼間はほとんど客も来ないし、あんたみたいに毎日くるような人は初めてさね」


 客が来ないのにどうやって生活してるんだ……って、この人お偉いさんだったんだっけ。

 そりゃあ金はたくさん持ってるだろうな。


「ところで色々あったってさっき言ったたけど、この前の王都の件はどうなったんだい?それによっては私も王都に戻る準備をしないといけないんだけれど」


「そのことなんだけどさ……」


 そうして俺はアルベールさんに依頼したことを一から説明した。


 俺の農業都市開発計画を聞いたプリシラは呆れたようにため息を吐いていた。

 どうやら国王相手に要求するような馬鹿は俺くらいらしい。


「あんたはどうして急にそんなことを考えつくんだい?ただの農家が求めるような要求じゃ無いだろう?」


「王都に来るのが当たり前だ、みたいなことを言われたら腹が立ったんだよ。そんなに作物が欲しいなら少しは俺の要求も飲んでくれるかなって思ったんだ」


「私はどうなっても知らないからね……?そういえばあんたにちょっと見せたいものがあってね……ちょっと待ってな」


 そう言ってプリシラは店の奥に向かってしまった。

 見せたいものってなんだろう……また錬金の素材か?


 大人しく薬草を食べるパプリを抱えて待っていると、プリシラはいくつもの布袋を持ってきた。


「一体何を持ってきたんだよ……?」


「ほら、前に言っただろう?私の研究を手伝って欲しいって。それに使う素材の候補だよ」


 そう言ってプリシラはカウンターの上に素材を広げ始めた。

 どうやらかなりの種類があるようで、あっという間にカウンターが埋まってしまうほどだった。


「ずいぶん多いんだな……そもそもこんなに素材を用意する研究ってなんなんだよ?」


「私がここ20年くらい続けている研究、それは若返り薬についてだよ」


「若返り薬?そんなもの作れるものなのか?」


 若返り薬など、多額のお金を出してでも欲しがる人はいるだろう。

 しかし、それは存在すればの話である。

 まるで想像上の話みたいだな……ってスキルもあってモンスターもいるこの世界から可能なのか?


「まあ20年研究を続けても作り出すことが出来なかったんだけどね。この辺の素材はたくさん用意してあるから少し持って行って色々試してくれるかい?私みたいに頭の固まった人間よりいいアイデアが浮かぶかもしれないだろう?」


「もちろんそれは構わないけど……良いのか?ほぼ素人みたいなものだぞ?」


「素人だからいいんだよ。いいから持って行っておくれ」


 そう言ってプリシラはカウンターに広げた素材を再び袋へと詰め込み、半ば強引に俺に押し付けた。


「あまり期待はするなよ……?そろそろ時間だから帰ることにするよ」


「あらもう帰るのかい?研究の方は気長にやっておくれ。私が死ぬ前にお願いしたけどね、ヒッヒッヒ」


 プリシラは笑えない冗談を言っていたが聞こえなかったふりをして、俺は冒険者ギルドに向かうことにした。


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