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第55話

「急がないと本当に日が暮れてしまうな……軽く走るか」

  

 正門を出た俺は早足で歩いていたが、あと2時間もすれば太陽が沈んでしまいそうだったので、パプリを抱えたまま走ることにした。


 走ると言っても、今日はプルチュアの実という危険物を持ち歩いているので、なるべく振動を与えないように走らないといけない。


 そうして慎重に走っていると、しばらく移動したところで遠くに複数の人影が見えた。

 何やら大きな荷車のようなものを3人ほどで引っ張っているようだった。


「……あれ?荷車引っ張ってるのってジャンじゃないか?」

 

 荷車を引っ張る3人のうち、見覚えのある顔が1人だけいた。苦しげな表情を浮かべながら荷車を引っ張るのは、今日散々世話になった冒険者のジャンだった。


 さらに近づくと、荷車を後ろから押しているのはクロードとアンネだった。 


「なにを運んでるかと思ったらアンフェルボアか。そりゃ重たいだろうな」


「おお、コーサクか……見ての通りだよ。ギルドへの報告を優先したが、どっちにしてもこの図体のアンフェルボアはあの時運べなかっただろうな。さすがに3人だけで運ぶのは無理だったから他の冒険者に手伝ってもらってるんだ」


「おい、ジャン。この人が例の?」


 俺とジャンが話していると、アンフェルボアをいっしょに運んでいる2人の冒険者が俺のことをジャンに尋ねた。


 例の、ってことはジャンが何か話していたのか?


「ああそうだ、紹介するよ。コーサク、こいつは冒険者のマルセル、隣がロマンだ。普段は一緒に仕事をすることは無い別のパーティだが、冒険者になりたての頃からの知り合いなんだ」


「どうもはじめまして、コーサクです」


 俺がそう言うと、マルセルという男性冒険者は大きな声で笑い出した。


「アッハッハ!!そんな気を遣った自己紹介なんていらねえよ!俺たちともジャンと同じように接してくれ!」


「そ、そうか?それならそうさせてもらうが……」


 ずいぶん豪快な男らしい。まあ、ジャンが紹介するくらいだし悪い男では無いんだろう。


「ジャンから聞いたが相当な腕の持ち主なんだってな!冒険者にならないと聞いたがアンフェルボアを討伐できる人材をギルドが放っておかないだろう?」


 冒険者のロマンはアンフェルボアの戦闘についてジャンから聞いたのか、俺にそう尋ねてきた。

 そういえばジャンにも冒険者ギルドに登録したことは言ってなかったか。


「実はさっき登録してきたんだ。素材の買取はギルドに登録していないとできないって言われてな。ほら、さっき作ったカードだ」


 そう言って俺は胸ポケットから青い冒険者カードを取り出した。


 しかし、そのカードを見たジャン達は目を見開いて驚いたような表情を見せた。


「コーサク、これ誰に作ってもらったんだ?」


「え?グウェンさんに用意してもらったけど……血も垂らしたしきちんと作成できているだろう?」


 なぜジャン達が驚いているか分からず、俺はこのカードが偽物なのだろうか、などと考えはじめてしまった。


「はあ……コーサク、お前騙されたんだよ。その調子だとカードの色の説明は受けなかったんだろうな」


「カードの色?何のことだ?」


「やっぱりか……一応説明しておくぞ?まず冒険者は階級が6つに分けられている。下からE級、D級と続きA級と来て一番上がS級だ。その階級はカードの色によって分けられるが……コーサクの持っているその青色のカード、それはC級冒険者を示すものなんだよ」


「……C級?」


 よく分からんが普通1番下の階級から始まるものなんじゃないのか?なぜいきなりC級冒険者から始まっているのか見当もつかなかった。グウェンさんがカードの色を間違ったのだろうか?


「あのギルマス、ずる賢いというかなんというか……。C級冒険者っていうのはギルドに1人前と認められたくらいの実力を持つことになる。C級からは指名依頼と言ってギルドや領主、さらには国からの依頼が個人宛に届くことがある。その指名依頼って言うのが厄介でな……断ることは原則禁止されているんだよ」


「……グウェンさんにしてやられた、ってことか?」


「ああ、おそらく指名依頼を使ってお前に何か依頼するつもりでいるんだろうな。特に国からの指名依頼を断れば最悪国外追放なんかもあり得るんだよ……」


 俺の順風満帆な農業スローライフがいつの間にかモンスター討伐を生業とする冒険者へシフトしていたことに俺はようやく気がついたのだった。

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