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第50話

「いやいや、私はただの農家ですし冒険者なんて柄じゃ無いですよ?」


 俺はそう言ってグウェンさんの提案を即答で断った。俺はただ農業がしたいだけだ。モンスターを倒す毎日なんて死んでも御免だね。


「まあまあそんなこと言わずに。アンフェルボアに通用するほどの攻撃ができる人材なんてこの国ではほんの一握りさ。君には冒険者としての才能がある。それだけの才能があればたまにモンスターを討伐するだけで、しばらく遊んで暮らせるほどの大金を稼ぐことだって可能だ。悪い話じゃ無いだろう?」


 俺の腕をギュッと掴んだまま離してくれそうにも無いグウェンさんは、ニッコリと微笑みながらそう言った。


 でも金には困ってないからな……。無理して冒険者ギルドに入って金を稼ぐ必要もあまり無いのだ。


「うーん……やっぱり遠慮しておきますよ。あいにくお金には困っていませんし、確かに攻撃力が他の人より高いのかもしれませんが、私の耐久力は一般人と同等程度です。万が一攻撃を喰らえばあっという間にあの世行きでしょう」


 俺がそう言うと、グウェンさんは少し不思議そうな顔をして首を傾げた。何か俺の説明に不備でもあったのだろうか?


「アンフェルボアに通用する攻撃力なのに耐久力は一般人程度?あまりにもアンバランスなステータスだ。もし良ければで構わないんだが、ステータスの数値を教えてもらってもいいかな?」


「ええ、それは構いませんが……ステータスオープン。うーんとまず体力が80、魔力が38、攻撃力が52と……」


「ま、待ってくれ!なんだその化物みたいなステータスは!いままでどれほどのモンスターを倒してきたと言うんだ?」


 俺が次々とステータスの数値を読み上げていくと、それを遮るようにグウェンさんは尋ねてきた。


「え?そこまで大量にモンスターを倒してきた訳では無いですけど……なにか問題でも?」


「問題だらけだよ!そんなにステータスが高い人間は聞いたこともない。王都で現在活躍しているA級パーティの前衛でも攻撃力は40にも満たない。それを遥かに超えたステータスなんて……今まで何万体のモンスターを倒せば……?」


 グウェンさんの説明を聞いた俺だったが、まさかそこまでステータスに差があるとは思ってもいなかった。


 そして1つ思い出したのが、レベルアップの条件。俺の場合は作物の収穫数によってレベルが上がるのだが、他の職業はモンスターを倒すことでレベルが上がると以前カミラが言っていた。


「そんな話を聞いて簡単に返すわけにはいかないよコーサクくん。私は君に興味が湧いたよ」


「落ち着いてくださいよグウェンさん……。そもそも今日はまだ他に用事がありますし、時間も限られています。私の家はそこそこ遠いので早めに帰りたいんです」


 今日はプリシラの店に行って、『錬金』で作った回復薬や採取した薬草を見てもらおうと思っていたのだ。

 ここで時間がかかってしまうと、だんだん帰る時間が遅くなってしまうかもしれない。


 俺が渋った表情をしていると、その様子を見ていたジャンが呆れるようにグウェンさんに話しかけた。


「ギルドマスター、コーサクだって予定があるんだ。とりあえず今日のところは返してやれよ?確かにステータスの高い人材を逃したくない気持ちは分かるが……」


 そう言ってジャンは助け舟を出してくれた。ここを離れるのも今がチャンスかもしれない。


「まあそういうことなので、今日はこの辺で帰らせていただきますね。それでは!」


 俺はギルドマスターに掴まれていた腕を振り解き、急いで部屋を後にした。

 後ろからギルドマスターが大騒ぎする声が聞こえた気もするが、そんなのはもうどうでもいいのだ。


「急いでプリシラの店に行かないと……余計な時間を食ってしまったな」


 俺は階段を降りて飛び出すように冒険者ギルドを出た。

 街の中を走り回るのは危ないと考え、その後は早足でプリシラの店に向かうことにした。




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