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第49話

 冒険者ギルドの代表であるギルドマスターが、俺のことを待っていると聞いてもあまり理解ができなかった。


 別にモンスターを倒したことに関しては、どういうモンスターだったとかの質問くらいで終わると思っていたが、それくらい下っ端の職員にでもできることだろう。


 しかし、どうもそういう話にはならないみたいだ。

 このあとプリシラの店にも行きたいんだけどな……話が長引くと帰るのが遅くなってしまいそうだな。


「ほら、あそこの建物が冒険者ギルドだ」


 しばらく歩いていると、冒険者ギルドが見えるところまで近づいていたみたいだ。

 ジャンが指を指した先には、冒険者ギルドと書かれた大きな看板が設置してある2階建ての建物があった。


「ずいぶんと立派な建物なんだな。かなり幅があるように見えるが……中も相当広いのか?」

 

「ああ、1階は冒険者ギルドの受付や掲示板が設置されているんだが、その隣は酒場になっている。冒険者ギルドが広いのはそういう理由だな」


 なるほど、だからあんなに横長な建物になっているのか。酒場がなければそこまで広くする必要もないもんな。


「酒場があるって……まさかこんな真っ昼間から酔っ払ってるやつなんかいないよな?」


「そんなやつはこの街にはいない。基本的に冒険者は朝一に依頼を受けて、日中活動するんだ。稼がなきゃいけない真っ昼間から酒に溺れるやつなんか、依頼を達成することはできないだろうしな。たまにそういう冒険者は他の街で目にしたことはあるが、ごく少数だぞ」


 ジャンの言葉を聞いて俺はホッと一安心した。自分で言うのもなんだが、俺の作業着姿はこの世界だとかなり珍しい服装になるらしい。

 酔っ払いだと間違いなく俺に絡んできて面倒くさいことになるかもしれないと少し心配していた。

 だがジャンの言う通り依頼を受けて街を出た冒険者が多いのならば、今の時間冒険者ギルドには人も少ないのかもしれないな。


 その後少し歩き、冒険者ギルドの扉を開けたジャンの後に続いて、俺は初めて冒険者ギルドに足を踏み入れることになった。





 冒険者ギルドの中には、依頼と思われる紙が何枚か貼られている掲示板の前に数人の冒険者が集まっている程度で、室内はかなり空いていた。


 扉を開けて正面に見えるカウンターに、3人の女性が座っているのが見えた。

 ギルドに入ってきた俺とジャンに気がついたのか、1人の女性が立ち上がってこちらに近づいてきた。


 ……もしかしてエルフ、ってやつか?

 

 俺は近づいてきた女性を見てそう思った。

 女性の耳は俺の知る人間の耳とは違い、長く尖った耳をしていた。

 本当にエルフっているんだな……さすが異世界。


「ジャンさん、お待ちしてました。そちらの方が?」


「ああ、そうだ。ギルドマスターが待っているんだろう?すぐに案内してくれ」


「かしこまりました。コーサク様、ご足労いただきありがとうございます」


 ギルドの女性はすぐに俺たちを連れて上に続く階段に案内した。どうやらギルドマスターが待っているのは2階の部屋らしい。


「なあジャン。なんでこんな大ごとになってるんだ?報告だけで終わるって話だっただろう?」


 ギルドに着いても、誰も説明してくれないので俺はジャンに尋ねることにした。

 

「こうなってしまったのも色々あるんだが……まあすぐにわかるさ」


 しかし、ジャンは説明するのが面倒くさいのか話をはぐらかすように笑いながらそう言った。

 普通こういう時ってすぐに説明してくれるものじゃないのか?


 ジャンの反応に少し不満を覚えたところで、俺たちを案内していた女性が1つの扉の前で立ち止まった。どうやらここにギルドマスターがいるようだ。


「ギルドマスター、ジャン様とコーサク様をお連れしました」


 女性が扉越しに部屋に向けてそう言うと、扉の向こうから入ってくれ、と凛々しい女性の声が聞こえてきた。

 

 ギルドマスターと聞いて俺は勝手に年寄りの爺さんを思い浮かべていたので、その声を聞いて少し驚いてしまった。


「失礼します」


 ギルドの女性は部屋からの返答を聞いて、扉を開けた。


 部屋に入ると、アンネとクロードがソファに座っていた。ローテーブルを挟んでその向かいのソファに座っている女性がおそらくギルドマスターなのだろう。


「忙しいところすまないね。初めましてコーサク君。私が冒険者ギルドフラム支部ギルドマスター、グウェンドリン・アルディだ。気軽にグウェンと呼んでくれ」


 そう言うとギルドマスターのグウェンさんは立ち上がって俺に手を差し伸べた。俺もその手を握りしめ挨拶した。


「初めまして、グウェンさん。私の名前を知っている、ということはもう彼らから話は聞いたようですね?」


「ああ、今回ジャン達からの話を聞いて君に興味が湧いたんだ。単刀直入に言うが……君、冒険者にならないか?」


 ギルドマスターであるグウェンさんは、俺の手を強く握りしめてニッコリと微笑みながらそう言った。


 俺の手を握りしめるその手は、もう逃さないとでも言うようにしっかり力が込められているようだった。

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