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第14話

 俺が目を覚ますと、目の前には呆れた顔で頭を抱えているカミラが白いダイニングチェアに腰を掛けていた。


「お主はアホなのかのう?『錬金』というスキルは魔力を用いて発動できるスキルなのじゃ。連日何度も何度も使っていれば魔力切れも起こすじゃろうて……」


 そうしてカミラはため息をついていた。


「そんなこと言われてないぞ!最初に説明してくれてもいいじゃねえかよ!」


「説明も聞こうとせずにわらわを急かしたのはお主じゃろうが!そもそも『錬金』を使う錬金術師たちは魔力回復薬と呼ばれるものを毎日飲むことで、連日『錬金』が使えるようになっておる。魔力の回復には数日を要するのじゃ」


 カミラは魔力についてそう説明してくれた。なるほど……初日に魔力切れを起こさなかったのも、ギリギリ足りていたからなのかもな。それが2日連続で『錬金』を発動したものだから俺は魔力切れを起こしてしまった……ということか。


「お主の意識も魔力切れで飛んでしまったし、ついでじゃからここに呼び寄せておこうと思ってのう。あと一つ、お主に聞きたいことがあったのじゃが、魔法の肥料は使わんのか?その素材を入れておいたのも早く上納できるようにと考えたのじゃが……」


「ああ、例のチート肥料か。あれを使ったら農業じゃないだろう?土の手入れもいらないわ作物は早く収穫できて収量も上がるわ……それは農業じゃなくてただの作業だろ。俺は農業がしたくて異世界に旅立ったんだぞ?」


「お主はやはりこだわりが強いのう……。そんなこと言わずにバンバン使って欲しいのじゃ。そうすればポイントも貯まってお主が欲しい農業資材なんかも買えるじゃろう?」


 そんなこと言ったってなあ……。

 俺は魔法の肥料を使うことにはあまり乗り気じゃない。たしかに『資材ショップ』のポイントも早く貯まれば色々購入できるようになるのも事実だが、色々苦労してようやく手に入れたポイントを使って地球の作物を栽培したい……なんて考えていたのだ。

 

「それにお主の職業……『錬金農家アルケミー・ファーマー』のレベルアップ条件は作物を収穫することになっておったじゃろう?万が一畑の外に出てモンスターに襲われても撃退できるくらいにはなるかもしれんのじゃぞ?」


「それは心配いらない。俺はあの畑とログハウスでこの先生きていくと決めたんだからな」


「引きこもりかお主は!少しは外の世界も勉強せぬか!シュクレーゼにももちろん寒い地域暖かい地域がある。それぞれの地域でどんな作物が栽培されているのか気にならぬのか?」


 そう言われると、興味がないとは言い切れなかった。見たことのない作物にはすごくワクワクしてしまうのが俺の性格だった。


「とは言ってもよ……やっぱり本格的な農業はしてみたいんだよな……。昨日と今日立てた畝も魔法の肥料は使わないつもりだったし、その方が愛情を込めて育てられるだろう。ただでさえ短い栽培期間を魔法の肥料でさらに短くしてしまうなんて、その作物に申し訳ないんだよ」


「それなら尚更先にレベルアップを済ませるべきじゃ。レベルも上がればモンスターの脅威も小さくなる。結界石の範囲が及ばないところまでも畑の拡大ができるじゃろう?」


「今より拡大する必要ある……?」


 俺の家の前には開けた土地が1ヘクタール程ある。1人で栽培できる量にも限りがあるし、土地はそれほど必要ないとも考えていた。


「栽培した作物を街に売りにいくのも良い手じゃ。何もわらわにすべてを上納する必要もないのじゃよ?稼いだお金で『錬金』の素材を買っても良いし、調味料なんかも買えるはずじゃ」


「え?近くに街があるの?家の周り森林だらけだったけど?」


「それはお主の家が森の中にあるからじゃよ。森を西に抜けて、そこから北に10キロほど歩けばそこそこ大きな街がある。今度暇があれば行ってみるのじゃ」


 周りにあれだけ木々が生い茂っていると、相当山奥に暮らしている気分だったが、意外と近くに人々が住む街があるなんて知らなかった。

 まあ、農家っていうのは栽培した作物を売ることで生活するものだ。もし街で野菜を売ることができれば、俺は農家の仲間入りを果たせることになるかもしれないな。


「今度機会があれば行ってみるよ。色々新しい発見があるかもしれないしな」


「そうするがよい。引きこもり農家になるなんてわらわが絶対に許さんのじゃ。そろそろお主の意識も戻ることじゃな……最後に質問はないのかの?」


 カミラはそろそろ時間が迫っていると説明したので、俺は1つ気になっていたことを質問することにした。


「例の補給ボックスだが……あの食事のメニューはカミラが決めてるのか?ほぼ毎回硬いパンが出てきたんだけど……?」


「あれはわらわが決めてるわけではないのじゃ。お主が転移した世界でよく食べられているものがランダムで出ることになっておる。硬いパンが毎日出るのは、それだけ庶民が普段から食べている証拠じゃな」


「そういう仕組みなのかよ……てっきりお前が意地悪しているものだと思ったよ」


「失礼なことを言うでない!まったく……お主が変なことを言っている間にもう時間になったのじゃ。今回はこの辺でお別れなのじゃ。早めの上納期待しておるぞ?」


 カミラのその言葉を最後に、俺の意識は再び暗闇へと飲まれていくのだった。

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