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第11話

 次の日の朝。

 

 昨日と同じく朝5時に目が覚めた。

 

 俺は起き上がってシンクの水道で顔を洗ってから畑に向かう。


 外に出ると、驚くことに一昨日植えた畝からすでに植物が生えていた。


「……早すぎでしょ?」


 まだ一番収穫まで早いコブルコだけ生えているならわかる。


 しかし、すでに3品種ともに芽が出るどころか、本葉が生い茂るほどまで育っていた。


 特にコブルコなんかは隣の畝まで届くほどに大きく育った。


「どうしようこれ……」


 昨日の昼までは芽も出ていなかったはずの畝にこれだけの植物が生えていたらそりゃあ驚くに決まってる。


 俺はとりあえずコブルコをどうにかしようと思った。

 コブルコをよくみると、地球のある野菜に酷似していることがわかった。


「……これもしかして、キュウリ?」


 コブルコはツルを伸ばすような形で生長していた。そしてなにより、すでに受粉を終えたのか5センチほどの緑色の細長い実のようなものができていた。


 しかし、これがキュウリに似たものだとすると、一つやるべきだったことがある。


「支柱を立てたらたくさん収穫できるはずだよな……」


 本来キュウリは伸びてくるツルを支柱に誘引する立体栽培が主流だ。そのまま地面を這うように育てるのは昔ながらの栽培方法で、そうして育てられたキュウリは「地這いキュウリ」と呼ばれる。

 

 しかし、地這いキュウリは栽培するのに必要な面積が大きく必要で、地面についてしまうキュウリの色が変わってしまうなどのデメリットから、あまり栽培されていないと聞いたことがある。

 

「これは少し失敗だったな……」


 あまりにも早く育ちすぎたせいで、どんな作物か判断が遅れてしまった。

 

 今日中に魔法の肥料を使っていない畝の分の支柱を用意したいところだ。

 すでに『資材ショップ』のポイントは使い切ってしまったので、また木箱の木材で用意するしかないか。


「意外と買ったものが送られてくる木箱が役に立ってて助かるな」


 まあ、この調子だと魔法の肥料を使った畝の作物は近いうちに収穫できそうだった。


 次に様子を見たのはポムテルの苗だった。

 これは植える時点で芋系の植物とわかっているので、とりあえずはジャガイモと同じ栽培方法でやってみようと思う。


 ジャガイモと同様に今日は土寄せと呼ばれる作業を行うことにした。


 ジャガイモは生長するにつれて大きくなるので、稀に土から芋が顔を出してしまうことがある。

 放っておくと、徐々に緑色になってしまい、そこには有毒なソラニンという物質が生成されてしまう。

 それを防ぐのに、生育中に土をかぶせる作業が土寄せだ。

 

 土寄せをやりながら、雑草も抜かないといけなかったので、ただ土をかぶせるだけにはいかず少し時間がかかってしまった。


「ふう……シュワン?ってやつはどうなったんだ?」


 俺は隣の区画に植えてあるシュワンの手入れに取り掛かろうとした。

 しかし、シュワンの苗は育っているがそれがどんな作物になるのかは全くわからなかった。

 

「もう少し様子を見ないとダメだな」


 俺はとりあえず、シュワンの苗を生育してある区画は雑草を抜き取る作業だけで終えることにした。


 魔法の肥料を撒いた畝の手入れが終わったので、俺は水撒きだけ行い家に戻ることにした。

 そろそろ朝食の時間だろうと考えたからだ。


 家に入ると、補給ボックスの時計はちょうど7時になりそうな頃だった。


「おー、タイミングバッチリだな」


 ところで、この世界にはこういう時計はあるんだろうか?もしあるんだったら他にも時計が欲しいところだ。いちいち補給ボックスの小さな時計を確認しなきゃいけないのも不便だろうし。


 補給ボックスの時計が7時を差し、キッチンタイマーのような音が鳴り響いたところで俺は扉を開けた。


 中には、毎食恒例のセグリのパンとクラムチャウダーのような白くてとろみのあるスープだった。スープには葉物野菜のようなものが入っていた。

 俺は初めてみるスープに『鑑定』を発動させた。



◯シュワンのスープ◯

 葉物野菜のシュワンをふんだんに使ったミルクベースのスープ。ミルクは牛から採ったものが使われている。



「シュワン?なんか聞いたことが……って今俺が育てているやつじゃないかよ!」


 せめてシュワンくらいは何が育つか楽しみに育てられると思っていたのに、なんと補給ボックスにネタバレされることになるなんて思わなかった。


 くそ……まあまだ葉物野菜という情報だけだから、どんな風に育つかまでは分からないからな。


 軽いネタバレを食らった俺は、スープにパンを浸して食べながら、今後はどんな作物を栽培しようか、なんていうことを考えていた。

 

 朝食が終わり、俺は食器を片付けて再び畑へと向かうことにした。

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