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Material Generation  作者: 深村美奈緒
第1章『〈神龍〉機動』
3/8

〜Mission02:『マギリアの民』〜

キサラギの議題である対〈メナス〉兵器、〈R.Y.U〉の戦線導入の承認を得るため、〈メナス〉に対抗出来る力、"マテリア"と〈龍〉の説明を始める。

一方、太平洋の洋上に浮遊している〈メナス 〉の戦艦の内部では幹部らしき人物の姿が……。


一方、太平洋の洋上では戦艦があり、そこでは〈メナス〉幹部、アーシェが地球制圧の話しをしていた。

〈E.D.F〉関東支部会議室。

遅れて来たキサラギを加え、本題と言われたキサラギの議題である〈R.Y.U〉の話しで議会が進行する。


「キサラギ中将、早速だがその〈R.Y.U〉について詳しく説明してもらおうか」

リアムがキサラギに映像に映し出されたものの説明を求める。


「はい。この〈R.Y.U〉…、開発関係者は〈龍〉と呼んでいます。この〈龍〉は対〈メナス〉用の人型兵器になります」

リアムに説明を促され、キサラギは短い返事をし、投影されたディスプレイが将校全員に見える様に1歩横へ避け、説明を始める。


「〈龍〉は"特別な力"を使用しないと機動させることができないことこら〈M.G〉と呼ぶ事もあります。昨今、我々は〈メナス〉のビーム兵器と機動兵器、〈ビオロギヌス〉と〈ゾルダート〉に苦戦を強いられてきています」


〈ビオロギヌス〉:〈メナス〉が導入してきた無人機動兵器で、まるで地球上の昆虫を模したかの様な形状をしており、現在確認できるだけで3種類存在している。接近戦主体のカミキリ型のC型、砲戦主体のナナフシ型のN型、防御主体のタマムシ型のT型である。


〈ゾルダート〉:〈メナス〉が導入してきた無人型機動兵器で、〈ビオロギヌス〉と違い、〈ゾルダート〉は人型をしており、現在近接戦型と射撃型の2タイプが確認されている。


〈メナス〉との交戦時、〈メナス〉は基本的に〈ゾルダート〉1機、〈ビオロギヌス〉3機の編成を組んで攻撃してくる。

〈E.D.F〉側が旧時代的な戦闘機であるのに対し、〈メナス〉はこの様な無人機で戦闘機を遥かに凌ぐ機動兵器を用いて〈E.D.F〉を追い詰めてきた。


「キサラギ中将、"特別な力"とはなんなのでしょう?」

少将の襟章を付けたイタリア人女性将校がキサラギに質問をする。


「みなさんは"マテリア"と言うものを聞いた事はあるでしょうか?」

イタリア女性将校の質問を受け、キサラギは議場に集まっている将校全員の顔を見回し、質問を質問で返した。


「"マテリア"……、物体・物質という意味ですが…そのことでしょうか」

イギリス人将校がキサラギの問に躊躇いがちに答える。


「まぁ、直訳するとそうなのですが…。」

キサラギは返ってきた答えに少し苦笑し、1度咳払いをして話しを続ける。


「〈メナス〉の侵攻が始まる以前、人類が宇宙に生活圏を拡大し始めてしばらく経った頃、宙歴44年に地球上で、ある事象が起きました。その事象から極めて稀に超常の力を発現する者が現れ始めました」

と、キサラギは宙歴44年の出来事の話しを始める。


「宙歴44年と言うと…、その前年から地震が各地で頻繁に起こって確か…、旧大陸だか新大陸だかが隆起したと騒がれていたと思いますが……」

スキンヘッドの黒人将校が宙歴44年の出来事を思い出す。


宙歴43年、世界各国で地震が頻発に起こった時期があり、その翌年の宙歴44年に太平洋のほぼ中央辺りに陸地が隆起した。

当時この事は世間を騒がせ、世界中の知的好奇心を抑えられない学者という学者達がこぞってその大陸への調査、研究を目的に集まった。


「そんな事もありましたな。学者の間ではムー大陸だとかレムリアだとかが地殻変動でまた姿を現したとか……。大陸の名前は確か"二ーベルブ"でしたか」

丸眼鏡をかけた白髪のロシア人将校が黒人の将校の言葉に乗ってくる。


「ですが、それと超常の力……、マテリアというものになんの関係が?」

大陸隆起と超常の力の関係性が分からず女性将校がキサラギに問う。


「この二ーベルブ大陸には地球人の中に眠る力を覚醒させる因子の存在が、数年間の研究で明らかになりました……」

キサラギは手を後ろで組み、数歩ディスプレイの前を歩き、問いかけてきた女性将校に目を向ける。


「それを我々は"マテリアル因子"と名付けました。このニーベルブ大陸を発端としたマテリアル因子の拡散によって超常の力に覚醒した者をマテリアの保有者…、"マテリアル・ホルダー"と呼んでいます」

キサラギはディスプレイ中央辺りで歩みを停め、自分に視線を向けている将校達の方へ向き直る。


「そして、現時点でこの〈龍〉を操縦できるマテリアル・ホルダーは9人存在しそれぞれホルダーの戦闘特性に見合った〈龍〉を用意してあります」

キサラギが端末を操作し、ディスプレイの画面を切り替える。

切り替わったディスプレイには6機の〈龍〉が映し出され、型式と機体名称が書かれている。


「その確認されている属性が、光、水、炎、風、雷、そしてこれらを束ねるALLマテリア」

話を進めながら手元の端末を操作ると、キサラギが話した順に六角形の図に属性が表示され埋まってていく。


「特別な力とか属性とは、まるでファンタジーの世界ですな」

腕組みをしてキサラギの話しを聞いていたケネス馬鹿にしたかの様に嘲笑う。


「近年の研究でマテリアルには特性が確認され、属性で分けたのには一番理解しやすくするためであります。では、ここにお集まりの皆さんにお聞きします。〈メナス〉の機動兵器、〈ゾルダート〉及び〈ビオロギヌス〉は何で動いているかご存知ですか?」

キサラギの問いに対して、将校達は隣同士て顔を見合わせ、ざわめき始める。


「それは……、敵母艦からの遠隔操作と動力源は未知の力で動いているとしか聞いた事が……」

ドイツ支部の将校がキサラギの問に、自信なく答える。

そう、〈E.D.F〉は8年もの間〈メナス〉と戦闘をしてきているが、無人で動いている〈ゾルダート〉と〈ビオロギヌス〉の動力が何でできているのか分かってはいない。ただ分かっているのは、これらの無人兵器は母艦からの遠隔操作、あるいは地球人を攻撃する様なプログラムがされているのではないか、という事だけだ。


「まさか、あの無人機を動かしている未知の力とは……」

キサラギの今までの話しから〈メナス〉が使用している未知の力に察しが付いた黒人の将校が、解答を求めるべくキサラギの顔を伺う。


「そう、〈メナス〉機動兵器はマテリアの力で動いています」

正解の答えに達した黒人の将校に顔を向け、頷いて見せキサラギは、手元の端末を操作し、次の映像を映し出す。

その次の映像には、〈メナス〉の機動兵器を解体した画像が映されていた。


「この映像はご覧の通り、〈ゾルダート〉と〈ビオロギヌス〉の解体映像です。〈ゾルダート〉と〈ビオロギヌス〉は、人型と昆虫型で形状が全く異なりますが、動力源は一貫して同じものが使用されています」

キサラギが端末を操作して、映し出されている映像の上に小さいディスプレイ映像が映される。

小さいディスプレイ映像には小石大の水晶の様な物が映っている。


「これが〈メナス〉の機動兵器に搭載されている動力の核…、"マテリアル・クリスタル"です。我々はこれらの動力源を"マテリアル・ドライヴ"と呼んでいます」

小石大の水晶、マテリアル・クリスタルの映像が、キサラギの端末操作で更に拡大される。


「しかし、こんな小さなものであの様な大きい兵器を動かせるものなのですか…?」

動いている兵器に対して、動力核の大きさが小さすぎて、本当にこんなものが動力源なのか疑念を抱いたイギリス人将校が声に出す。


「それを可能としてしまうのが〈メナス〉の技術力とマテリアの力なのです」

キサラギはイギリス人将校の方に顔を向け、即答する。


「マテリアという力の事、〈メナス〉の技術力の高さは良くわかった。それで、〈メナス〉の機動兵器にどう対抗するのかね?」

リアムがキサラギに〈メナス〉機動兵器への対抗策を尋ねる。


「はい。この〈メナス〉機動兵器に対抗するには我々も同じ力と同じ機動兵器を導入する事です」

リアムに促され、キサラギは簡潔に応える。

ディスプレイ中央辺りに立っていたキサラギは、再び数歩歩き、最初に立っていた反対側で足を止め、それと同時にディスプレイを次の画面に切り替える。


「これが対〈メナス〉の切り札、〈R.Y.U〉シリーズの1号機。型式番号MG-EDF-RYU-01神龍です。」

切り替わったディスプレイには、極秘に開発されていた人型兵器〈龍〉 の設計図が映っていた。


〈MG-EDF-RYU-01:神龍〉全長10.9m重量10t。汎用型の内部フレームA型を採用し、新規合金"オリニウム合金"を装甲に使用。ALLマテリア・クリスタルのマテリアル・ドライヴを一基搭載、ALLマテリア・ホルダー専用機。

特殊兵装:五星光影x1五星影光x1、双刀ともオリニウム合金製。

基本兵装:両腕側面にスタブ・アンカーx2、両サイドの腰部アーマーにアサルト・ダガーx2、射撃兵装のプラズマレールライフルx1が装備されている。


「おぉ……」

「これが〈龍〉……ですか」

ディスプレイに〈龍〉の全容が映し出された瞬間、議場はざわめき口々に期待を孕んでいるかの様な言葉が自然と声に出てくる。


「今投影しているのは1号機ですが、これの他にアメリカで1機、中国で3機、フランスで1機開発中で、1号機に限っては2ヶ月前に完成をしています。2号、3号、4号機も順次ロールアウトしたと報告を受けております」

キサラギは1号機の他に5機の〈龍〉を各国で開発を進めており、内3機が完成していると話す。


「同じものが6機……!」

黒人の将校が驚きの声を上げる。


「開発を1箇所でしないのには何か訳があるのですか?」

イタリア人女性将校が、わざわざ各国に分散して開発を行っていることが気になり、キサラギに質問する。


「はい。1箇所で開発し、敵の攻撃目標にされては元も子もない為、各国に分散させて開発を進めていました」

イタリア人女性将校は、キサラギからの応えに「なるほど」と頷き、納得する。


「この〈龍〉を運用するにあたり、大型のマテリアル・ドライヴを3基搭載した〈龍〉専用運用戦艦も広島の呉とフランスのブレスト海軍工廠で建造中です」

そう言ってキサラギは〈龍〉の設計図に続いて次の映像をディスプレイに映す。

その映像には、キサラギの言う新造戦艦の設計図が2種類あった。


「皆さんから向かって左側が1番艦〈神舞〉〈神舞〉(しんぶ)、右側が2番艦〈天舞〉(てんぶ)になります」

キサラギは右腕を使い、どちらが1番艦で2番艦なのか指し示す。


「図面を見ると2番艦の方が2倍近く大きい様だが、なにか理由が?」

2種類の新造戦艦の大きさの違いに気付いたリアムが、キサラギに問いかける。


「2番艦の天舞は戦闘艦でもありますが、1番艦神舞専用のドック艦機能を有した設計になっているためです。また、1番艦と2番艦はドッキングしたままの戦闘も可能となっています。まぁ、2番艦は1番艦のドック艦兼ユニット艦という運用になります」

キサラギの説明に納得がいったリアムは「ふむ」と頷き、説明の続きを促す。


「新造戦艦に関しては未だ建造中でありますが、各〈龍〉のホルダーは選抜済みであり、完成している機体は起動実験後、すぐにでも実戦導入可能です」

キサラギは議場の将校全員の顔を見回し、最後にリアムに視線を合わせる。


「極秘で開発をしておりましたが、以上の対〈メナス〉兵器の実戦導入及び継続開発の承認を頂きたいのですが、議場にお集まりの皆さん、いかがでしょう?」

キサラギは再度議場の将校全員を見回し、顔色を伺う。


「現状…、〈メナス〉に対する有効手段が無いのであれば、私はキサラギ中将の〈龍〉に賭けても良いのではと思います」

イタリアの女性将校がキサラギの対〈メナス〉兵器、〈龍〉を承認した意見を述べる。


「〈メナス〉に対抗出来る可能性があるのなら、私も新兵器の導入を承認します」

続いて黒人の将校が、〈龍〉の導入を承認する。

この2人を皮切りに残りの将校達も一様に承認の意思を言葉に出し、議場がザワザワと賑やかになる。


「皆さん落ち着いて下さい!」

ただ1人キサラギの持ってきた議題に、最初から肯定的ではなかったケネスが、その場に立ち上がり、ザワついていた議場を鎮める。


「良く考えて下さい!こんな非現実的な兵器を本当に導入していいのですか!?実績もない兵器なのですよ!?」

ケネスはリアムを含む10人の将校達を説き伏せようとする。


「実戦の実績なら、既にある」

リアムの思いがけない一言にキサラギ以外の将校達の視線がリアムに集まる。


「じ、実戦の実績があるとはどういう事ですか!?」

キサラギの議題を否定する為に熱くなっていたケネスは、荒々しくリアムに問いかける。


「この議会が開かれる、数日前に中将には〈龍〉の戦闘映像を見せてもらっている」

そう発言したリアムに、更に議場の視線が集まる。


「その映像には〈メナス〉兵器の3編隊を〈龍〉が辛勝ではあるが、全機撃破していた。あれは2年前の映像と言っていたかな?」

リアムの視線がキサラギに向くと、それを追うように、将校達の視線もキサラギに向く。


「はい、議長に御覧頂いたのはアーキタイプの戦闘映像です」

リアムに話を振られ、キサラギはその時の映像を皆にも見せる様に促されたと受け取り、ディスプレイにリアムに見せたものと同じ、2年前のアーキタイプの戦闘映像を映す。

その映像には、迫り来る〈メナス〉の戦闘兵器の3編隊、9機を相手にアーキタイプと呼ばれる〈龍〉が、ぎこちない動きで被弾し、ボロボロになりながらも3編隊の敵機を撃破していた。

アーキタイプでありながら、1機で9機もの敵機を撃破した〈龍〉に、議場の将校達からは期待と称賛の声が上がる。


「ウィルソン准将、この映像を見てもまだ非現実的だと?」

リアムの問に、ケネスは意気消沈し、「い、いえ……」と言い椅子に座る。


「では、意見をまとめよう」

そう言ってリアムは将校達を見回す。


「キサラギ中将の議題を承認する者は挙手を」

リアムのその言葉に、将校達全員が手を挙げる。その中には、悔しそうに震える手を挙げているケネスの姿もあった。


「うむ、決まりだな」

リアムは大きく頷きキサラギの方に顔を向ける。


「皆の期待、裏切るなよ?キサラギ」

リアム含む将校達の期待に応える様に、キサラギは「はっ!」と言い、敬礼をする。




『少々手緩いのでは?』

太平洋洋上に〈E.D.F〉が〈メナス〉と呼称する者達の巨大な戦艦が浮上していた。

全長は推定でも1kmはあり、松ぼっくりの様な形をしている。

その戦艦の艦首である場所に、外套を身に纏い、フードを目深に被った者ご1人佇んでいた、〈E.D.F〉と地球人の認識では地球外の知的生命体とされているが、身長等の身体的特徴が地球人と酷似しているように感じる。

艦首の外套を纏った人物が、何も無い宙に浮いたディスプレイに映っている同じ風貌の人物と地球上の言語には無い言葉で会話をしていた。


「手緩いとは?」

ディスプレイの前にいる〈メナス〉がディスプレイに映っている〈メナス〉に問い返す。

双方共フードで顔が隠れており、表情も感情も読み取る事が出来ない。敢えて分かるのは、声質からディスプレイの前の〈メナス〉は地球でいう男性、ディスプレイに映っている〈メナス〉は女性、加えてディスプレイの〈メナス〉の胸には外套の上からでも分かる女性的な膨らみがある。


『貴方とファイエル、シィネが地球(アルス)に降下してこの星は太陽(スー)の周りを8周以上……。つまり8周期の時が経過している。それなのに…、未だに地球上の6割程度しか制圧できてないのはどういうこと?』

ディスプレイの女性〈メナス〉は地球の制圧が思っている以上に進んでいない事に憤りを感じている様子だ。


『仕方ないんじゃな〜い?』

今開いているディスプレイの横にもう1つ新しいディスプレイが浮かび上がり、子供の様に無邪気な少年か少女か分からない〈メナス〉が現れる。


『僕達が使ってる〈M.M〉(マギリアル・マシーネ)は宇宙戦を想定して造られた物だし、地球の大気圏内でちゃ〜んと動くものができたのは3周期前くらいで〜、こっちに持って来たのはそれから1周期半経ってからじゃん?それに、火星(メルス)からこっちに消耗した〈M.M〉を輸送するのにも時間はかかるしさぁ、逆にその間、大気圏内で動かしにくい〈M.M〉で良く頑張ってたと思うな〜』

少年〈メナス〉が艦首にいる〈メナス〉を弁護するかのように、2人の話しに割って入る。

そう、〈E.D.F〉が8年以上もの間戦闘が続けられていたのには、〈メナス〉の機動兵器が地球の大気圏内では宇宙空間程の機動力を発揮出来ていなかったから、それに加え、火星から消耗した兵器の輸送に時間がかかる。

それらの要因が重なり、兵器差はあるものの、〈E.D.F〉は辛くも戦い続けてこられたのだ。


『宇宙戦であろうと地上戦であろうと、我々は地球人(アルス人)の科学技術を凌駕しているの。それと、貴方は口出しをしないで、ディア。』

女性〈メナス〉がディアと呼ばれる幼い〈メナス〉を叱責する。


「手緩くしているつもりはないが、少し慎重になり過ぎて、ムルゥの言う通り時間がかかっているのは確かだ……」

ディスプレイの前にいる〈メナス〉は、ムルゥと呼ばれる女性〈メナス〉に言われた「手緩い」という言葉は否定するが、時間がかかり過ぎている事には肯定の意思を見せる。


『ですが、アーシェが慎重になるのは仕方ないのでは?』

ディアのディスプレイの横に、また新しいディスプレイが浮かび上がり、もう1人の女性〈メナス〉が会話に加わる。


『シィネ、仕方ないとはどういうこと?』

会話に加わってきた女性〈メナス〉、シィネの言葉にムルゥが問いかける。


『アーシェが今進行目標にしている島国には、2周期前に地球側の初めて見る人型兵器を1体確認しています』

シィネがムルゥの問いに答える。


『それは、地球人が造ったとされる〈M.M〉の事?』

シィネの回答に対して、ムルゥが再度シィネに問いかけ、シィネは『はい』と短く応える。


『2周期前に現れたっきり、それ以来出現の確認はしていませんが……』

ムルゥに短く応えた後、そう言ってシィネは言葉を続けた。


『それはこちらでも確認している。ただ一度きり現れただけで何故そこまで慎重になる必要がある』

一度地球人の新型兵器を見ただけで、慎重になり過ぎているアーシェにムルゥが憤る。


『その地球人の〈M.M〉にこっちの〈M.M〉が3編隊くらいやられちゃったんだっけ〜。結構やられちゃったよね〜』

先程まで会話を聞いていたディアが、陽気に口を挟む。


『ディア、私達は真剣に話している。話しに水を差すなら消えろ』

ディアの陽気な態度が気に入らないムルゥが、再びディアを叱責する。


「このままでいいとは俺も思ってはいない。次の補給後、目標の島国の司令部は落とす。ディア、次の補給はいつになりそうなんだ?」

ディアがムルゥけら叱責せれている中、アーシェは補給後に日本の関東支部を攻撃すると宣言し、ディアに補給を受けられる日時を問う。


『ん〜、まぁ5日後くらいかなぁ。いつも通り補給艦が到着したら連絡は入れるよ〜』

ディアの回答に「頼む」とアーシェが短く応える。


『ま、今地球の衛星の裏側に"ゲート"を造ってるからさ、それが出来るまで補給の時間はかかるけど頑張ってよ〜』

そう言ってディアは、『じゃあね〜』と言い残し、ディアの映っていたディスプレイが消える。


『地球の制圧は貴方達に一任している。これ以上無駄な時間をかけないように』

ムルゥはアーシェとシィネに念押しをし、通信を終える。


『アーシェ、手助けが必要ならいつでも言って下さい。私の〈M.M〉をそちらに回しますので』

シィネの申し出に、アーシェは「必要ない」と応え、それを聞いたシィネは、少し悲しげに『そうですか……、失礼しました』と言い残し、シィネも通信を終える。


「早くこの星を取り戻したいのは俺も同じだ……」

静かになった艦首でアーシェが独り言を呟き、目深に被っていたフードを取る。

フードを取った顔は青白く、顔の造形は地球人と同じだが、耳が若干長く先端が尖っていて、まるでファンタジーに出てくるエルフの様な顔立ちをしている。


「この星を統治するに相応しいのは」

アーシェは艦首の窓から見える海を眺め言葉を続ける。


「我ら『マギリアの民』だ」


少し長くなってしまった様な気がしますが、読んでいただけるとありがたいです。



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