十年後…。もう遅い?いやまだ早いよ!
前話で完結ですが、十年後のお話です。
このお話を読んで頂きありがとうございました。
十年後…。
この十年間いろんな事があった。
人族と魔族の境界に地だった場所に、都市が完成して、リチャードとアリスの結婚式が盛大に執り行われた。
リチャードアリスは、この都市で仲睦まじく暮らしている。王子と王女もできたりして。
人族と魔族の友好も少しずつだが築けてきた。
今は連盟として、多くの国が参加する政治形態が取られている。
俺?
俺にも息子できたよ。あ、先に娘だったけど。
リゼとの間に2女2男。ナナコが長女で5人兄弟。
リゼとナナコとスローライフのつもりだったけど。
リゼは先生として働いてるから、俺が主に家事してたんだけど、子どもができてからは忙しかったな。ナナコがいてくれて助かったよ。
すごく良いお姉ちゃんになってる。
とはいえ、まだまだリゼも若いし。今や大人の女性になって、めっちゃ美人だし。魅力3倍増なこの頃。
倦怠期ってなんだ?マンネリとは?俺達には、縁のない言葉だ。
だから、ね。
まだまだ暇になりそうに無いッス。
そんな感じで幸せ一杯です…。
ナナコは、リゼ以来の秀才とか言われているらしく、飛び級して今日が卒業式。
「パパー。先に行ってるね。」
ナナコだ。以前は卒業式には、ドレスで着飾って舞踏会みたいなパーティーがあったらしいが、新しい都市の学校は、平民も多く普段の制服姿で卒業式が執り行なわれる。
パーティーも立食形式で、ダンスとかの畏まったイベントは無しで、解散も早い。
式には俺も行くが、ナナコは準備があるらしく先に行くようだ。リゼはすでに行って準備している。
会った時は、あんなに小さかったのにな。
今は、立派に育ってくれて、どこに出しても恥ずかしくない、べっぴんさんに育ってくれた。
「おう。いってらっしゃーい。」
「あ、そうだ。これ捨てといてね。」
「えっ?なにこれ?ナナコへの手紙だろ。」
「うん。だからパパが見てから捨ててくれれば良いよ。」
よくわからんが、そういうものか。
「そっか。わかった。」
「じゃあ。パパも皆も大好きだからね。」
ナナコが笑顔で言う。笑顔がカワイイのは、十年たって成長しても変わらない。
「お、急になんだ?」
まぁ、卒業式だし、最近は言ってくれなかったけど、伝わってたよ。ちゃんと。
「なんでもなーい。いってきます。」
愛する娘から大好きと言われてニヤつきが止まらない。
手紙を見る。
イリアス聖国からだった。
ジブルを失ったイリアス聖国は、規模がどんどん縮小してしまい、今では内側の壁だけで全国民が過ごせてしまっている。
学生ながらもリゼの助手として研究者として優秀で実績を上げているナナコが、イリアス聖国出身と知り、帰国を依頼する手紙だった。
あれ、今頃になってナナコを返せって?
遅すぎるよね。
まぁ、俺の事が大好きすぎるナナコがイリアス聖国に行くとは思えん。
ナナコに言われた通り、手紙を破り捨てた。
パパ大好き。って言ってたしな。
「も、」とか。「皆も、」なんて言葉は無かった。うん、無かったはずだ。
改めて相談するまでも無いが、「こんな手紙きてたよ」って教えてくれたんだな。
卒業式・記念パーティーはつつがなく終わり、俺は、身体中の水分が無くなってしまうほど泣いた。
嬉しくてしょうがなかったんだが、リゼとの娘のイチカなんかは俺を冷めた目で、見てやがる。
イチカの中等部卒業の時に、俺が号泣しすぎて恥ずかしかったらしい。が、まぁ良いだろ。嬉しいんだよ。
ミタール村へ戻り、改めてお祝いをする。
村でもリゼ以来の大学卒業生だ。
ここは、盛大に祝おう。
と思ってたら、
魔王アリス
国王リチャード
聖女ミュール
勇者ダイチ
あ、俺が失った勇者の力はダイチくんが引き継いでた。
他にも、リュオール家の面々
レグスさん
シグルド公爵
モルド村長
ベイス君とバイス君。
他にも、ナナコやダイチくんの友だちが一杯。
あとは、リチャードとアリスの子ども達、アントニー王子とリリーナ王女。
そしてリゼと4人の子ども。イチカ。ニコ。サンタ、シロー。
あ、龍王とセブが人の姿になって紛れ込んでる。
最近は、仲の良い母娘って感じで微笑ましい。
セブも女の子だったらしい…。
リゼに聞く
「皆ナナコが好きなのはわかるが、卒業祝くらいで、勢揃いしすぎてないか?」
リゼは、4人の子どもを産んでなお、いや、現在進行形でキレイになっている。
「そりゃあね。皆見に来たのは卒業だけじゃないしね。がんばってね、エイトさん。負けてもいいけどね。」
ん?がんばる?負けても良い?意味わからんが…。
リチャードが広場の真ん中に立つ。
立つだけで絵になる男だ。皆が注目する。
「みんな。そろそろ集まったね。じゃあ見届けようか、俺が、立ち会う。」
リチャードが俺とダイチくんを見て続ける。
「じゃあダイチくんから。」
ダイチくんがリチャードのところへ行く。自然とリチャードの周り10m位には人が居なくなっている。
ダイチくんも大きくなったな。リチャードよりは小さいが並んでも、遜色ないほどに。
俺と一緒くらいかな。
「エイトさん!」
ダイチくんが大声で俺を呼ぶ。
えっ
「俺?」
「はい。ナナコが欲しければ俺を倒してからだ。って言っておられたので、今、勝負を申し込みます。」
はっ?勇者の力を失った俺と勇者の力を得たダイチくんじゃあ勝てるわけ無いじゃん。そりゃ負けたくないけど。
リチャードが言う。
「ここは純粋に漢と漢の勝負だ。勇者の力を使わずに、この棒で一本取り合う勝負でどうだ」
取り出したるは、ハリセン。
「儂が作ったエイトしばき棒じゃ」
アリスがダイチくんに渡す。
「これは私が、作ったのよ。」
リゼが俺にハリセンを渡す。何時どこで作ったんだよ。
「俺はな。ダイチくんが勇者の力を継いでくれて良かったと思っている。」
「ありがとうございます。では…。」
では?なんだよ。ナナコが欲しいってか?
「だけどな。ナナコは別だ。」
実は二人付き合っているっぽいが、ナナコはどちらを応援するのか…。
応援の声だ。
「ダイチさーん頑張って!」
イチカとニコは、ふん。敵か…。哀しいよね男親って。
「エイトさーん。がんばれー。」
リゼとミュールは味方。まだまだ子ども離れできない母親たちだな。まぁ、リゼが応援してくれるのは救いだ。
ナナコは?当然ダイチくんかな。哀しいけどね。
今のところ、声しないか。
ナナコの声なら、100km離れてても聞こえる。
「では勝負。初め,」
リチャードの掛け声で勝負は開始される。
白熱した好試合。俺とて鍛錬をサボってたわけではない。魔法を使わなければ、いくら勇者といえど遅れは取らない。
ハリセンのしばきあいだけど。
「お互い、奥義は使い果たしたな。」
自分で言っててなんだが、奥義ってなんだよ?
「はい。やはりエイトさん強い。」
ダイチくん。乗ってくるねえ。そういうところ好きだぜ。
まぁ、すでに付き合ってるんだろうし、負けてやらんとかなぁ。
…。ハリセン勝負だし。
でも、やっぱ勝負は勝負だな。負けねえ。
「ここからは言葉は。無用。行くぞ。」
「はいっ」
お互いに最後の力を振り絞った最後の攻撃。
「パパ。がんばれー。大好きだよー。」
えっ?ナナコ?どこ?大好き?俺も。
パシコーン!
あ、ヤラレタ。
尻もちをついた俺に,、ダイチが手を差し伸べる。
ダイチくんの手を取り、起き上がる。
「俺の負けだ。だが、ナナコと結婚するのはまだ早い。」
負けたから無理筋か?いやいや、結婚なんてまだ早いよ!
「あ、交際からお願いします。と言うかそのつもりでした。」
あれ?君達まだ付き合ってなかったの?
「パチパチパチ」
ナナコが満面の笑みで拍手してる。
あれ?俺の事応援していたんじゃないの?
「ナナコちゃんにやられたわね。」
リゼが慰めてくれる。
あれ?ナナコにやられたとは?
え?ナナコって俺の応援してくれてたよね?
「パパ、おつかれ。ふふっ。何年私が。パパのパーティで一緒に戦ってきたと思ってるの?」
意味わからんが?
「パパって私が、大好きって言ったら、手ぇ止まるよね」
いやっ、そんな事は無いと....あるかも。
「でもね。そんなパパも大好きだよ。」
なら、もう良いや。
それでも嬉しいどうしようもないパパなんです。
ダイチくん。勇者になったからと言ってナナコをくださいなど、まだ早い。うん、まだ早いよ!
「勇者になったからと言って、俺の娘と結婚しようなどとまだ早い」
続編をお楽しみに....。
タイトル回収できたかな?
ちょっと無理やりでしたが、エイトさんが幸せに暮らしていることお伝えしたくて…。
良かったら、感想とか評価とか入れていただけますと嬉しいです。
続編は冗談ですが、まだ未定の次回作でお会いできれば幸いです。




