家族。
リゼです。
エイトさんが、イリアス聖国で龍王と戦ってから半年がたった。どんな事があっても朝は来る。
ミタール村にカワイイ声が響く。
「ママー。早くしないと、ちこくだよぉー」
ナナコちゃんが、急かしてくる。
ナナコちゃんが無事帰ってきて、半年がたった。
エイトさんの帰りを待つ為に、ナナコちゃんとエイトさんの家で二人で暮らし始めた。
エイトさんも、すぐ帰ってくると思ってたんだけど…。
新しい街はまだまだ建設中なんだけど、学校はまず初等学校と中等部の開校にこぎつけた。初等学校の開校にあわせて、ナナコちゃんを学校に通わせた。
ナナコちゃんも、エイトさんと学校へ行く話をしていたらしく、学校に行くって言ってくれた。
私は、大学の講師になる事が決まっていて、建設中の大学で準備の仕事に就いている。
朝は、学校まではセブに乗って、ナナコちゃんと一緒に行くの。本当にママになれたみたいで、なんか嬉しい。
「ナナコちゃん。お弁当持った?」
「うん。だいじょうぶ。ママ、行こ!」
セブに乗ると、10キロ以上ある学校までの距離も数分で到着する。半年前にナナコちゃんを乗せて、村に帰ってきた時は、大きくなってビックリしたけど、セブが良い子なのは変わらないね。
私は、学校の先生になる。ナナコちゃんは学校に行く。
…。エイトさんに言われた通り。ミタール村でナナコちゃんとセブと3人で待ってる。
エイトさんが無事らしいっていう知らせは、リチャードさんやアリスさんから聞いているんだけど、どこに居るのかはっきりしない。
無事なら、この村に帰って来ると思うんだけど。ナナコちゃんとセブに待っているようにって、必ず帰るからって言ったらしいし…。
ここで、待ってろって言われたから…。
妻としては、ね、うん、夫の言う事をちゃんと聞いて、ここで待ってるからね。
必ず帰る。
ナナコも私も、信じてる…。
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「いつまで寝てるんじゃ!」
ベットでゴロゴロしている俺にアリスが、話しかける。また説教かな。これでも昔から姉替わりだからな。このちっp
パシンッ
エイトしばき棒を何でお前が持ってる?
「で、お主。いつ帰るんじゃ?」
「いや。もう少し心の準備が…。」
ここは、魔王城。ここなら、リゼが迎えに来ることもない。
「だから、なんの準備かと聞いておる?」
「いや、だから、俺、もう勇者じゃないし」
結局、勇者の力は戻らなかった。いろいろ頑張ってはみたんだが…。
リゼの夢…。
それは勇者のお嫁さんになること。俺は、もうそれを叶えられないし、それでフラレたら泣いちゃう。
「お主が、何を考えてるかわからんが、多少弱くなったところで何が問題なんじゃ」
「だって.......。」
あの戦い以来、体力は戻ったんだけど魔力あんまり無いもん。だからリゼに相応しくないし、なによりもう勇者じゃないもん。
「あー。うっとおしい。お主なんぞこっ酷くフラレて来い!」
え?フラレるの?やっぱダメなんだろ?
「だから、ヤなんだって。」
「リゼの事は、この際どうでも良い、収まるところに、収まるだけじゃ。」
「収まるところ?」
あ、誰か良いヒトできたの?新しい勇者?やだな、もう。
でも、新しい勇者は、ダイチくんだと思うんだよね。
俺を助けに来てくれた時に気配的に感じたよ。
力が発現するのは、ダイチくんの心が勇者に相応しくなってからだろうけど。だから、まだまだ先だけどね。
あ、だから本物の勇者は、もう俺じゃないって言いにいかんとだな。いつまでもリゼを待たすわけには…。
そんな傷心な俺を無視して、ロリ魔王様は続ける。
「問題はナナコじゃろ。待っているように言ったのじゃろ。親としてそれではダメだと思うが…。」
パシン。また叩かれる。
「な?」
「誰がロリじゃ、儂だってな…。」
心読むなって。でも、あれっ顔赤いですよ。あ、リチャードと何かあったか…。
まぁ、コイツらが何かあったとしても、祝福しかないな。良かったよ。
「でも、そうだな。ナナコの事は、」
ナナコは、俺が娘にして、俺と結婚するからリゼはママになって。
うん、やっぱりこのままじゃダメだ。
もう一度だけ、勇者になろう。心の中だけでもね。
で、ミタール村に来てみたんだけど…。
リゼとナナコが仲良く俺の家で暮らしている。
良かった。笑顔もある。
勇者のオーラみたいなのもう無いから、隠れて見つからなければ、きっと気付かれないよね。
と、思ってたんだけど。
「パパ?」
背後取られた。ナナコとはいえ、いとも簡単に…。
背中に飛びついてくる。
「パパー。待ってたんだよ。だいじょうぶって聞いてたけどー。」
うん。あれ、大きくなったか?
まぁ、半年も経ったんだしな。俺の力は結局戻らんかったけど。
ナナコの頭を撫でる。
「ごめんな。いろいろあってな。」
力を使い果たした俺は、ミュールによって体力は回復したものの、魔力の大半を失っていた。
勇者の力の根源を失った感じだ。
おそらく誰かに勇者の力が移ったのか、そもそもそんな力無かったのか。
勇者の記憶、勇者特有の魔法も失っているので、俺はもう勇者では無いのだろう。
勇者の力を取り戻す為に半年間イロイロやったんだけど、無駄だった。で、諦めて魔王城で不貞腐れてたんだ。
バサッ。何かを落とした音がする。
向くとリゼがいた。何か収穫をしていたのだろう、土が顔についているけど、うん、少し大人になったな。キレイだよ。とっても。愛おしさが込み上げてくる。
「エイトさん…。」
でも、俺はもう勇者じゃないから、君を受け止めることできなぃ…。
バッ。
リゼが俺の胸に飛び込んできた。
リゼは泣いている。俺と会えて、そんなに嬉しかったのか?
受け止めること、でき…。いや。受け止めたい。俺が受け止めたいんだ。たとえ俺が勇者じゃなくても…。
リゼを受け止めて、抱きしめてキスをした。
ナナコとセブは見ないフリをしてくれたけど、二人でハイタッチしてた。片一方が竜だからハイタッチと言って良いのか…。
「じゃあ、帰ろうか。」
いつまでもキスしていたいが、息が続かん。
「うん。あ、ご飯作るね。」
「あ、ナナコもてつだうー。」
「きゅー」
3人で手を繋いで、セブも引っ付いて、家に帰る。
何も、怖がること無かったな。
その夜。
「もう馬鹿!エイトさんが勇者だから、勇者のお嫁さんになるって言ったんだよ。ホントに馬鹿!」
勇者じゃないけど、俺と結婚して欲しいって玉砕覚悟で土下座した俺は、半年も帰ってこなくての謝罪の土下座に移行したのだった。
必死に謝っていたので、よく分からないところがあった。ひとまず整理しよう。
俺が勇者だったから、勇者と結婚する?
だったら俺が勇者じゃなかったら、魔王だったら魔王のお嫁さんになるって言ってたって事?
俺が、村人だったら?
まぁ、とにかく俺が勇者じゃなくなっても、問題無かったのね。
先に言ってほしかったな…。
その日、俺達は、本当の家族になったんだ。
これで完結にします。
途中で更新できなくなっちゃったりして、完結怪しかったけど、なんとか辿り着けました。
あと、後日談で1話書いていますので、出来たら投稿できると思います。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
執筆活動は続けますので、またよろしくお願い致します。




