3人の加護
リゼのネックレス。
リゼがナナコにくれたものだ。リゼとお揃いでナナコの一番のお気に入り。いつも付けてたし、俺にさえ触らせてくれなかったな。
リゼは、ナナコを守ってくれると言っていた。一緒いる時は短かったけど母娘の証なんだって言ってたな。
ただのお守りでは無かったんだな。
アリスのブレスレット
アリスがナナコに贈った腕輪。アリスとナナコがお揃いじゃって、いつも一緒に付けていて、嬉しそうだったな。ずっとナナコの魔力を補助してくれていた優秀な装備品だと思ってたんだけど。
別れ際に、アリスの魔力を込めていた。ナナコを守る為に。
ミュールのイヤリング。
ミュールが別れ際にナナコに贈っていた。意外なほどあっさりと渡していたけど、よく見ると、これもミュールとお揃いだったな。ナナコは、凄く嬉しかったみたい。
ミュールは、呪いの事ある程度までは判明していたのだろうか。隠された仕掛けがありそうと言っていたけど。イヤリングには、その仕掛けが表に出た時に対処する祈りを込めていたのか?
聖女の加護。
魔王の魔力。
そして母の思い。
それまでどうしても解けなかった呪い。
補助的に作用していた呪いが、表面化して直接ナナコを襲った時、そこに呪いを解く隙が生まれた。
イヤリングが呪いに作動し、ブレスレットが呪いを打ち消し、ネックレスがナナコを支えた。
どれか一つ欠けてもダメだった。
ミュールが呪いを抑えて、アリスが叩き潰し、リゼが護ったんだ。
俺の腕の中のナナコは、力こそ無く気を失っているようだが、生きている。うん、大丈夫だ。生命力を感じる。
ネックレスもブレスレットもイヤリングも力を失ってしまったのか、魔力を感じない普通の装飾品になってしまっている。
その反面、それまでずっと感じていたナナコの中の呪いの存在も消えている。呪いの力が最大限発動して、3人の力でそれを抑えたんだ。それで呪いが消えたと考えるのが妥当かと思う。
何かを感知したのかセブが籠から飛び出して、そばにいる。セブが背中を向けてくるので、セブの背中にナナコを寝かせる。
まだ小さいんだ。軽い。
ナナコを、セブの背中に横たえれる。
改めて思う。そして、そんな小さな命を弄ぶ存在に怒りをおぼえる。許せないな…。
セブ。
イザとなったらお前だけでも逃げるんだ。このままナナコを連れて。
セブに伝えると、セブが頷いたように見える。以前、ちゃんといって聞かせている。
俺なら一人でも大丈夫。何とかできるから、わかるよな。
セブに頷き返す。わかってくれたようだ。
セブと隣に並びジブルと向き合う。
「もう手詰まりなんじゃないか?大人しくこちらの」
言う事を聞いて魔法陣を止めろ。と言うつもりだったのだが
「仕方がありませんね。本当に、仕方がないのですね」
…。何を言っている。ジブルは続ける。
「人を呪えば穴二つ。ミュールさんの故郷では、そんな諺が有るそうですよ。」
だから何の話だよ?
「まぁ、呪いは解呪されてしまった訳ですが、当然、その報いは術者に返ってくるわけで…。ぐっ」
ジブルが魔法陣の中心へと歩き出す。
「ぐっ。…。まぁ、、、私を捧げて、…。勇者への道連れなら。」
一度俺の方を振り返る。
その顔は、笑っているように見えた。
魔法陣の真ん中で
「いでよ。我が肉体と魂を糧に、勇者エイトと戦え。龍王よ」
ジブルの体が霧散して、魔法陣から禍々しい迄の魔力が吹き出す。




