呪いの仕掛け
すみません。昨日更新できませんでした。
なので、朝活ですっ。
「あ、」
体の自由が効かなくなり俺に攻撃してしまう呪いが一時的に解除されたナナコだが、俺に攻撃が当たってしまった事がわかったようだ。不安な顔、声だ。
「大丈夫だ。かすり傷だ。心配いらない。」
とはいえ動脈が切れてるかも、血が止まらん。治癒魔法は苦手だが止血くらいできるか。
呪いの効果は止まっているようだ。停止させると続けてかける事はできないのかな?
一旦、ナナコを立たせてから治癒魔法を使おうとしたが、
「ちょっとまって、ちゆっ!」
ナナコのカワイイ声が響き、俺の首筋にカワイイ手が触れる。
キズが癒えていく。
「ナナコ。治癒魔法使えるのか?」
「うん。ミュールせんせいにおしえてもらった。」
「そっか。えらいな。」
できることがどんどん増えていく。頭を撫でる。
「えへへっ」
ナナコの笑顔。最高だな。
先程まで、殺しあった二人とは思えんが、俺達は、父娘だ。これで良いんだよ。
ま、殺しあったとは言っても、俺からは間違ってもナナコを殺めたりしないが…。
…。
……。
なんか、いろいろと忘れている気がする。が。
まぁ良いかって思いたかったんだけど。
「私の事を無視するのは、まぁ、良いのですが、そのままで良いのですか?」
あ、ジブル枢機卿…。
で、そのままで良いか、とは?
あ、あれか、自爆の呪い…。
「解除魔法」
自爆はこれで解除できるはず。がナナコの様子がおかしい。
「パパ。ダメ。消えてない。」
えっ。どういう事だ?
「確かに自爆自体は解除できていますよ。それでは、これを発動させます。」
ジブル枢機卿が、持っていた槍を杖に持ち替えて地面を指す。
ジブルから大きな魔力が流れ出す。
周囲が明るく光りだす。
ーこの広場に巨大な魔法陣が書かれている?
「気付きましたか?私がなんの準備もせず勇者を迎えるはずは無いでしょう。」
ジブルが魔力を込めると光りが更に強くなる。
「これは、召喚魔法か?」
魔法陣から魔物を召喚して使役する魔法だ。
「やはりわかりますか?そうですよ。世界最強と言われる勇者を倒すのです。最高のモノを用意させていただきました。」
召喚魔法は専門外なので詳しくはないが、この規模の魔法陣を作動させるには、ジブルの魔力では足りないだろう。
また、召喚する魔物を使役させる為には、何か代償が必要なはずだ。
召喚魔法とは、呼び出す魔力と使役するための供物が必要なものだ。
「どうする気だ。そのままでは、魔法陣は発動しないだろう?」
と聞いてみるが、何かする前に倒してしまう方が良いか。剣を持つ手に力をかける。
「私を殺してももう遅いですよ。7番にかけた呪い。それだけでは無いのですから。」
「なんだと?」
剣を握った手が止まってしまう。
「呪いを一時的に止めた魔力は、その娘の体内に溜まっているのです。呪いを解く度に、魔力が溜まる仕組みなのですよ。」
その時、ナナコの体が光りだす。
「パパ。なにかある。こわい。」
「くっ。大丈夫だ。」
ナナコの肩を抱いて、安心させようとするが、俺自体どうすれば良いかわからん。
「やめろっ。止めてくれ!」
「もう遅いと言ったでしょう。いでよ!」
ジブルが両手を高々と上げて合図をする。
ナナコの体から光が飛び出し、その光は魔法陣に吸い寄せられる。莫大な魔力を帯びた光の塊だ。
この数ヶ月。呪いで発動するナナコを止めるために何十回と使ってきた停止魔法と解除魔法の魔力。
俺の魔力。リゼやナナコ、ミュールの魔力。ダイチくんの魔力。皆の良質な魔力を感じる。
これでは魔力が、足りてしまう。
「仕上げです。」
ジブルがそう言うとナナコの体が持ち上がる。
召喚魔法の代償をナナコにするつもりか?
「な、パパ。こわいよ。からだがかってに…。」
魔法陣に引き寄せられようとするナナコの体を、止めようとするが、ジブルが近づいて来た。
ナナコを掴んで両手が塞がった俺を攻撃してくる。
「パパ。あぶない。」
ナナコが俺を庇おうと俺の手をほどく。
「ダメだ。ナナコ!」
体の自由の効かないはずのナナコだが、俺の為に力を振り絞ってしまった。
「あ、」
ナナコが俺の手から離れ魔法陣に吸い寄せられる。
「よし。そこで…。」
ジブルは俺への攻撃を止めて、ナナコに向かって手をかざす。
俺は、ナナコの方へ飛び出し、何とかナナコを抱きとめる。
「捧げる…。」
ジブルがそう言った時。ナナコへ魔力の流れが起きる。
ダメだ。ナナコが、この魔法陣に、捧げられてしまう。ナナコの命と引換えに、魔法陣が作動して魔物が召喚されてしまう。
魔法陣は作動しても仕方ないが、ナナコだけは。
俺には、どうしようもないのか?
俺にできる事は無いのか?
世界最強だなんて言われるが、何もできないじゃないか?
祈るしか無い。俺の腕の中で小さな命が尽きてしまう。
くそっ。くっぅそー。
「パパ。だいじょうぶ。ありがとう。」
抱きしめる俺の腕を力なく握り返してくる。
「俺が、助ける。ナナコ、いなくならないでくれ。」
「パパ。ありがとう。たのし…。」
ナナコの弱々しかった力が失われていく。
その時だった。
ナナコが身に付けていた。
ネックレスが。
ブレスレットが。
イヤリングが。
まばゆいばかりの光を放ち始めた。




