ナナコ対勇者エイト
Aランク冒険者とは、一軍に匹敵する戦力である。
百人力と言う言葉があるが、これはAランク冒険者を指す言葉。一般兵士百人と戦っても生き残れるという
Aランクの実力を示す言葉なんだ。
ナナコは、魔物討伐の実力を認められてのAランク冒険者。エンペラークロコダイル討伐の実績があれば、Sランクに昇格してもおかしくない。
そんな実力者が、的確に俺の急所を狙ってくる。
鋭いな。だが、、、
キンッ。ナナコのナイフを軽く受け止める。
正確すぎるのだ。だから俺は、急所を守れば良い。
「ダメ…。」
ナナコ目には、涙。繰り出す斬撃とは、反比例して声に力がない。
「ナナコ。大丈夫だ。俺を信じろ!」
繰り出される斬撃を軽くいなす。
これ、ナナコがもし呪いのせいじゃなく、ナナコの意識で俺と戦っていたら…。
ナナコは、何と言っても賢いコだ。それに、この数ヶ月で成長した。
きっと攻撃を修正してくる。魔法なんかも織り交ぜてきたりな。
俺もうかうかしてられない。一度本気で、戦ってみたいと言うのは、不謹慎だろうか?
いや、親として、娘の成長を、肌で感じてみたいと言う贅沢かな。
「ははははっ。私が常に呪いをかけてやれば、解除もできないでしょう。」
ジブルが呪いをかけ続けている。ジブルへ攻撃できれば良いのだが、ナナコへの対応で余裕は無い。
ジブルも常に魔法をかけているようで、少し離れた場所で立っている。魔法をかけながら攻撃はできないらしい。
2人で攻撃されたらやばかったかもしれない。
キンッ
押し返したのは、何度目だろうか?
ナナコが来た日の事を思い出す。魔法をかけなくてもナナコを動けなくすると、発動が止まったんだっけな。
最近は、魔法に頼ってたんで忘れてた。
「大丈夫だ。パパと遊んでいるつもりで、かかってきなさい!俺の本気みたいだろ。」
ナナコは成長して強くなるにつれて、俺の力に興味が出てきたのか、魔物退治とかで俺が戦うところとかを、キラキラした目で見るようになってる。
ナナコもきっと俺と戦ってみたいと思っているかもしれない。
息を整えたナナコが、俺を襲う。
急所を的確に狙ってくるが、浅い。
キンッ。
剣で受け止める。すぐに次の攻撃が来るがやはり浅い。
ナナコの意識が、俺を攻撃するのを躊躇っている。呪いに干渉しているのか?
すごいな。エライよ。ナナコなりに頑張っている。
褒めてあげたいのだが。
キンッ。
浅いが、攻撃を受け止めた時のナナコへの衝撃も軽い。これでは、ナナコに隙ができない。
「ナナコ。一度本気で来い。」
俺を本気で攻撃しろ、俺を殺せとの指示
「できないよ。」
キンッ
「大丈夫だ。俺を信じて。」
「でも、だいすきだから。」
…。キンッ。
あ、危なかった。デレている場合ではないか。
「俺の本気を見せてやる。来い!」
「パパのほんき。。。」
キンッ。ナナコの目の色が変わる。
やはり俺と戦ってみたかったんだろ。
俺の娘だ。俺だって力を得れば、その力試したくなる。
「俺を信じて。こい」
「パパをしんじる。」
まっすぐとナナコが来る。今までで一番速く、鋭く、深い攻撃。ナナコのナイフでの突きが来る。
剣で受け止めず、躱す。
躱してナナコを取り押さえて、終わらす。
これで行けるはず。
突きは、的確に首筋を狙ってくる。
躱せば隙ができる。今までの軽い攻撃なら対した隙にはならなかったが、今回は必中の突きだ。必ず隙ができる。
必中の突きを躱すには、
シュッ。
皮一枚を切らせて、当たったと見せかける。
そして、躱してナナコを抑える。
ブシュ。ナナコの突きが予想以上に鋭い。
躱しきれないが、仕方ない、このままいく。
バタッ。
ナナコを取り押さえるのには成功したが…。
皮一枚ではなく、肉まで…。
俺の首から血が吹き出していた。
勇者と娘の勝負を書きたかったのですが、こんな形になってしまいました。
がんばれ!




