ナナコと名付けられた少女
わたしのなまえ。ななこ。
まえは、ななばん。ってばんごうだった。
おとなのひとは、なまえがあった。わたしたち〈こども〉は、ばんごうだった。
でも、ふつうの〈おんなのこ〉は、なまえもってた。
わたしのところにいた〈こじいん〉にくるおんなのこは、おとこのひとから、なまえでよばれてた。
おとこのおやは「パパ」ってよばれてた。
わたしたちは、〈こじ〉ってやつで、〈こじいん〉でそだてられた。
おきたら、ごはんたべて、くんれんして、ごはんたべて…。
できなければ、ぶたれて、いたくて…。
それだけだった。
こわくてくろいおとこのひとが、わたしになにかした。
そのときは、わからなかったけど、すごくイヤだったの。
とおいところ、つれていかれた。
「あのなかに寝ているのが【勇者エイト】だ。いけ!」
くろいおとこのひとがいえのなかを、ゆびさしたら、
からだがかってにうごいた。
イヤなのに。イヤなのに。
ゆうしゃは、すごいちからで、わたしをとめた。
でも、わたしを…まもってくれてる?
そしたら、わたしのからだのなかが、あつくなった。
わたしのからだのなかを、やさしくてあたたかい〈ちから〉がはいってきた。
わたしのナイフをとめた。おとこのひと。これは、このひとの〈ちから〉だ。
あたたかくて、やさしい。。
ゆうしゃエイトといわれた、おとこのひとは、その〈ちから〉みたく、やさしくて、あたたかかった。
わたしに、〈ななこ〉ってなまえをくれた。
ゆうしゃエイトは、はちばんってイミらしい。
わたしは、ななばんだった。
かみのいろも、わたしとおなじ。
わたしとゆうしゃは、いっしょ。
わたし、しっぱいしたから、かえっても、たぶん。ころされる。
あのおねえちゃんも…。あのおにいちゃんも…。かえってきたのに、いなくなった。
でも、だめ、わたし。からだがかってにうごいて、このやさしい〈ゆうしゃ〉をやっつけようとしちゃう。
いっしょにいちゃダメだ。
そんな、わたしをやさしく、うけいれてくれた。〈ゆうしゃ〉はつよいから、だいじょうぶって。
むすめっていってくれた。じゃあ、〈ゆうしゃ〉は、わたしのおとこのおや?
わたしは、じゃあ、このひとを〈パパ〉とよぶの?
「パパ」よんだら、〈ゆうしゃ〉はすごくよろこんでくれた。
もうすこし、ここにいてもいいかなぁ。
パパはよろこんでくれる。うれしいってこと?
パパがよろこんでくれるから、わたしは…。
うん。わたしは、パパをよろこばせて、しあわせ?にしたい。
しあわせって〈ことば〉よくわからないけど。きっといい〈ことば〉だとおもう。