いざイリアス聖国へ
セブに乗り、イリアス聖国へ飛ぶ。
セブは1時間毎くらいに休憩をはさみながら飛んだ。広大な平野が広がっており、川等の水源もあり将来性の高い土地に思えた。
最後に山脈があり、そこを迂回しながらも超えたところ。イリアス聖国の街が、見えてきた時は日が暮れかかっていた。
イリアス聖国の聖都。イルサレント。
北は海、南には高い壁が数キロに渡ってそびえ立っており、侵入者を阻んでいた。
街は2層になっていて、外側は数キロの範囲に田畑があり村が点在していて、この国は自給自足出来るようになっている。内側は、教会と支配階級の貴族と聖職者の街になっている。用があるのは、内側にある教会。
俺が、この街に詳しいのは理由があって、昔まだ戦時中だった頃に、一度行ったことがあるんだ。
イリアス聖教の聖女が、今俺達の住むリベルト国にいるのは何故か?
俺が、この街から救出したんだからね。俺は、薄汚い傭兵スタイルで白馬の王子様とはいかなかったが、ミュールは俺が良いって言ってくれてた。少し懐かしいな。
セブの首をトントンとして合図する。
「セブ。一旦降りよう。」
「きゅー。」
街の壁はまだうっすらと見える程度。見張りからも竜の姿はまだ見えないだろう。
地面に降り立つ。そういえば、ミュールと会ったのはこの辺だったかな。変わってない。
「セブ。おつかれ様。良く頑張ったな。」
セブを撫でてあげる。
「きゅー」
「せぶ。ありがとう。」
ナナコもセブを撫でる。
「き、きゅぅー。」
気のせいか、セブのテンションの上がり方が違う。
…。疲れているだろうが元気なら、、まぁ良い。
「一旦、飯にするが、暗くなる前に作戦をたてよう。」
地面に簡単に街の図を書く。
2重の丸を書き、北側に海を書く。
内側の丸に、城を教会を書く。教会の横に広場があるはず。
集会や演説の時に使うそうで、オリンピックのスタジアムって感じの場所がある。
オリンピック?スタジアム?良くわからんが、勇者の記憶?ってよりこれは、ミュールが言ってた。異世界にあるんだろ?
「ここに夜の闇に紛れて飛んでいこうと思う。」
木の棒で広場を指して言った。
「きゅ」
セブは理解してくれたようだ。
「ナナコは大丈夫か?」
「うん。だいじょうぶ。」
荷物を探りながら言う。
「じゃあ食べようか。」
お弁当を広げる。Sランク特製弁当。
ギルドで特別に作ってもらった。警戒されると駄目なので、火はおこさずに、熱源魔法使って温めて食べた。
セブは、エンペラークロコダイルの燻肉を食べてる。
討伐後にギルドで余った肉から試作してくれたやつだ。保存用のスモーククロコダイルってやつだな。
3人とも、口数は少なかった。ナナコも解っているようだ。とうとうイリアス聖国まで来てしまった事。そして、その意味が。
俺も考え事が多くしんみりしてしまった。ナナコとは、出発前に充分に話せた。
結果的にゆっくりとした休憩となった。
「最後に決めておきたい事がある。二人とも良いか?」
ナナコとセブ、厳密には一人と一匹だが、セブも人間扱いで良いと思う。
「なに?パパ」
「きゅ?」
「今までは、俺も余裕があったから、良かったんだけどね。ミュールの話では、何してくるか分からないヤツがいるらしい。」
「てき?きょうかいのおとな?」
「うん。ナナコは会ったことがあると思うが、」
ナナコに呪いをかけたヤツ。もしかしたらナナコをミタール村まで連れてきたヤツかもしれない。
「しんぷさんとくろい人がいた…。」
「多分その黒い人かな?で、本題なんだが、戦いになって俺と離れ離れになってしまったら、皆のいる王都まで一人になっても逃げて欲しい。」
「え、パパをおいて?だめ、できないよ。」
うん。優しい良い子だ。
「セブもな。できれば、ナナコを乗せていって欲しいが。俺は、何とか出来るから。」
「きゅぅ?」
「でも、パパといっしょがいいよ。」
「なにも俺を見捨てろって言ってるんじゃ無いよ。俺を誰だと思ってるんだ。
「ゆうしゃえぃ、あ。」
勇者エイトと言って発動する呪い。それももう無いかもな。
「離れ離れになったらさ、一旦王都へ行って、ミュールに癒やしてもらって、大丈夫ならミタール村まで行って、リゼと待っててくれよ。」
リゼの名前をだしたら納得するかな?
「いやだけど、わかった。ミュールせんせいとリゼママのところへいく」
「うん。良い子だ。あそこならアリスも来るしな。」
ミタールは世界の真ん中に位置する。建設中の都市も近い、皆会いに来てくれるだろう。
ナナコの頭を撫でる。暫くすると
「寝ちゃったか。まぁ良いや。」
慣れない空の旅だ疲れてたんだろう。
できれば、と言うか、絶対に一緒に帰るぞ。
とはいえ、ナナコはAランク冒険者だ。離れ離れになっても、こう決めておけばなんとかなる。はずだ…。
それにしても可愛い寝顔だ。少し笑ってるかな?
やっぱり俺は、この笑顔を守るんだ。
「皆で一緒に帰ろうな。」
俺の呟きを聞いて、ナナコが少し安心したのか、ナナコの体が、少し温かくなった気がした。
最終章です。ナナコち勇者の旅もゴールがぐっと近づいて来ました。
明日も祝日なので、投稿予定です。完結に向かい更新頻度上げていきますので、よろしくデス。




