ナナコの成長
街に戻り、晩御飯を食べて部屋に戻った。
セブは、籠の中にいる。姿は見えないがナナコを通じて意識はなんとなくわかる。
取り置いていた魔物の肉を籠に入れると、中で食べているようだ。意外にも居心地が良いらしく、快適でリラックスしてる感情が伝わってくる。
次の日の朝。起きて身支度しながらナナコに話しかけた。
「今後の事、俺とナナコ、セブ。皆で決めよう。」
「うん。わかった。」
ナナコも何か察しているようだ。賢い子だ。セブが俺達を乗せて飛べるようになった意味がわかるのだろう。
セブの意識はなんとなく伝わってくるが、顔を見て話したい。
街の外に出て、ある程度広く開けた草原まできた。ここなら、人もおらず大きくなったセブを出しても誰も驚かない。
…。魔物がいる。
イノシシの魔物だ。アイツは、グレートキラーボアだったかな。ギルドで食べたのは、キラーボアの肉だったと思うが、そいつの上位種になる。
これを倒せると一人前の冒険者と認められる。まずまずの強敵。単独討伐でBランクだったと思う。
河の向こう岸にしかいないと聞いていたんだが、エンペラークロコダイルがいなくなり、このクラスの魔物の行動が活発になっているのだろう。また、ワニがいなくなって、渡河出来るようにったと言うこともあるんだろう。
まぁ、コイツらなら、バイス君達でも問題無く対応できるから良いんだけどね。
「グルルーっ!」
あ、見つかっちゃたか。こっちに突っ込んでくる。セブのご飯に丁度いいかな。
ナナコが、前に出た。ナナコの数倍はあるデカい魔物だが、Aランク冒険者でSランクモンスターとも戦えるナナコの敵ではない。
サッ!
音もなくイノシシの首を切り裂いていた。
バシュッ!
血が吹き出して、イノシシが倒れた。
…。血抜きまで同時に出来てる。
まずは解体するかね?
何も言わないでも、ナナコとセブが解体し始めている。
セブは、肉を剥いで食べてるだけだが…。
「あ、俺も、」
と言って皆で解体しながらも、ふとナナコを見る。
手際が良い。アリスから教えてもらった事をちゃんとやってる。
グレートキラーボアの仕留め方も見事だった。
魔物を倒したら、何も言わないでも解体をし始める。やるべき事がわかってる。
会った頃より、ナナコは身体も少し大きくなってる。
体格的にも、ガリガリだったけど、今なら普通の女の子だ。
ナナコの成長を思うと泣けてきた。
いろんな言葉も字も覚えた。簡単な計算もできる。
解体作業も終わり、ちょっと休憩する。ナナコは解体後に、ちゃんと結界まで張ってる。
「これで、あとはギルドに、もってかえってもらえばいいよね?」
ああ、その通りだよ。あ、ヤバ。さっき泣くのこらえてたのに、涙が出ちゃう。
「どうしたのパパ。どっかいたいの?」
「いや、嬉しいんだよ。ナナコが凄いから…」
ナナコ笑った。前に、嬉しい時も泣くって言った事憶えてたのかな?
「すごいのはパパだよ。へんなパパ。」
「おう。そうだよ。俺だって凄いんだよ。」
ナナコが切るの苦戦して、そのままにしていた硬い牙をスパッと切ったりして、ドヤ顔アピールなんかして笑いあった。
まぁ、そこはギルドで解体するから切らなくても良い部位なんだけど。
「それはそうと、ナナコはどうしたいか聞きたいんだった。」
「どうしたい?」
「うん。セブに乗れば半日もすればイリアス聖国に行ける。」
「すぐだね。すぐつくね。うん。」
ナナコの顔は前を向いている。
「じゃあ、セブに乗せてもらう。で良いか?」
「きゅーっ!」
セビが喜んでいる。役に立てるのが嬉しいのだろう。
「でも、…。。」
「どうした?何か心配かな。」
「うん。あの、パパがゆっくりすすみたいなら。」
そっか、でも、ゆっくり旅をしてきたのは、ナナコに色々なこと経験させたかったからで、ナナコとの旅が凄く楽しかったからで、日々のナナコの成長を見たかったからで。
思いが溢れて言葉にできない。
「ナナコは?ナナコはどうしたい?」
少し間が開いた。小さい体で一生懸命考えてるんだろう。どんな答えでも、俺は、尊重する。
ナナコは少し俯いて話しだした。
「ナナコは、パパともっとたびしたい。」
そっか、じゃあ、開拓村訪ねながらの旅も良いかもな。
「でも。」
ナナコが前を向いた。また少し間が開いたが、しっかりした口調で話しだした。
「でも。ナナコのからだがへんにならないんなら…。」
俺がゆっくり旅しようって、いつも言ってたから言いにくいのだろうか?
「大丈夫だよ。俺は、急いでも良いし、ゆっくりも良いと思っている。だからナナコがどうしたいか知りたいんだ。」
「パパのおおきなおうちで、リゼママとパパといっしょでうれしかった。たのしかった。」
王都で一緒になった時のことかな?
「うんそうだな。パパも楽しかったよ。」
自然と笑顔になる。
「ナナコはね。ナナコは、はやくみんないっしょがいい。」
俺も笑顔になった。ナナコが俺とリゼと一緒が良いって言うことが、凄く嬉しかったんだ。
「じゃあ、決まりだ。行こう。セブ。行けるよな!」
「きゅーっ。」
セブも賛成してくれたみたいだ。
読んでいただきありがとうございます。
明日も投稿する予定ですので、良かったら続き読んであげてください。




