水際の戦い
川辺に出てきたそれは、生き物と言うには大きすぎた。
ワニの形はしているものの異形の化物だ。尖った歯の他に、牙や角等を持っており全体的にゴツゴツした印象がある。
魔物は魔力もが強くなると赤くなるが、コイツは黄色、いや金色とも言える。こういった個体が更に強くなると、竜と化するのかもしれない。
セブは、生まれつきのドラゴンだが、ヘビやカバの魔物が進化してドラゴンになった個体には遭遇したことがある。
エイシェントグランドドラゴンのコダちゃんも、元は亀の魔物だったんじゃないかと思う。
ところで目の前の災厄である。
20mはあるだろうか?
川面で感電して浮いているレッドGクロコダイルの2倍はある。
水際までは早かったが、そこからは正気を取り戻したのか警戒しながら、ゆっくりとにじり寄ってくる
接敵するまでは、少し時間がありそう。警戒しながらだが、
「エンペラーだな。エンペラークロコダイル。」
ナナコとセブに言う。魔物の名前を言ってもどうしようもないが。
「えんぺら?」
「ああ、エンペラーだ。一度見たことがある。まだ俺が子どもの時だったけど。その時は逃げたが…」
その頃の俺達には絶対に勝てない相手だったが、リチャードとアリスとの連携でなんとかスキを作り逃げた思い出がある。
ある程度の強敵と戦えて調子に乗っていた少年時代の俺達の伸び切った鼻が、ボキッと折れた出来事だった。
それからの努力が今の俺達何だよな。
今思えば、あの頃世話になっていたじーさんの策略な気もするな。師匠的な、いや保護者になってくれていたじーさんが俺にもいたんだ。
「にげる?」
ナナコが聞いてきた。思い出に浸っている場合ではない。
「いや。あの頃より俺も強くなったし、ナナコとセブ…、バイス君は良いか。。二人がいる。十分に勝機はある。準備はいいか?」
あの頃のオレではないから、この程度の魔物は問題ない。それに強い魔物は食糧としても、セブの成長の糧になるし、今のナナコの経験を積む相手としても不足はない。
「はいっ」
ナナコが、ナイフを構える。
「きゅっ!」
セブが鼻息を荒くする。
最初は俺が切り込むんが良いだろうが、魔法で援護とちょっとした攪乱があれば助かるな。
「よし。アリs…。ナナコは、そのまま魔法で牽制して、セブはヤツの攻撃が届かない上からブレスで攪乱しよう。いけるか?」
アリスって言おうとしたか?俺は…。
いつの間にか俺は、ナナコをアリスと同じ戦力として認めているんかな。
村を出た時は、俺が守るってしか考えなかったんだけど、成長したもんだ。
凄いな子どもって、でも、ナナコは、会った頃から強かったかな。俺、殺されそーだったし。
エンペラークロコダイルの体が陸に上がりきった時、戦闘が始まった。
ナナコとセブに合図する。
「あいすー、ばれっとぉ」
「きゅー」
氷の塊が、魔物を襲う。セブは高く舞い上がり、エンペラークロコダイルのやや後ろ目へブレスを吐く。牽制の攻撃としては正解だ。
セブっ。生まれたばかりなのに、言葉を理解している?流石は竜族といったところか。賢いよな。
よしっ。子ども達だけに戦わせれないな。俺もいくべな。
「ナナコっ。魔法が途切れても良いから敵を良く見て!」
ナナコのセンスにかける。
ナナコにエンペラークロコダイルの急所を見つけ出させて、トドメを刺させる作戦だ。
子ども達に援護を貰いながら、勇者の攻撃が始まる。
ミュール編完結祝いで恒例の短編投稿しました。
良かったら読んでみてもらえると嬉しいです。自信は無いですけど、裏設定なんかあるので、物語に奥行きが出れば良いなあ。なんて思ってます。
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