はじめての朝。
どうも、村長のモルドです。
いやー、ビックリしたなあ。エイトさんにあんな可愛い娘さんがいたなんて…。
まぁ、エイトさんと顔は似てないかもしれないけど、お揃いの綺麗な黒髪は説得力があるな。
多少、怪しい感じではあるけれど…。
あ、でも、それだと、私の娘のリゼの想いは…。
片思いになっちゃうのかな?残念だなぁ。
ナナコちゃんだっけか、お母さんは居なさそうだし、リゼにもまだワンチャン残ってるかな…。
リゼとエイトさんが結婚したら、…。あの子が孫になる?
…アリだな。お菓子をいっぱい買ってあげよう。おもちゃも服も…。
お小遣いの値上げを交渉せねば…。
ん、エイトさんの家からまた魔力の爆発を感じる。
戻ったら、娘さんを治療していただけらしい。
何か違う気がするが、彼は勇者エイトだ。大丈夫だろう。
あ、また…。
…戻ったほうが良いのかな。あ、でも、親子で何かしてるなら良いのかな?
でも、何かあったら、彼は世界の宝なのだから…。
あ、でも何もなかったら迷惑だろうし、窓からそっと中を覗いてみよう。
…見えたものは、幼女を優しく抱きしめる若い父親の図…。
そのあと、クールな幼女の周りを、大人げなくはしゃぎ回る若い父親の図。
…まぁ、幸せそうで良かった。訪問せんで良かったな。
もう、リゼにあんなふうに抱きしめたら殺されるかな。きっと…。
エイトさん。今のうちだよ!
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勇者エイトです。
いろいろあったが、落ち着いてきた。
とりあえず、もう遅いので寝ることにした。
ナナコをベットに寝かせて、俺はソファーで寝ようとすると、俺の裾をつかんだナナコが言った。
「だめ、パパはベットで…」
「え、でも…」
遠慮しているのかな。でもなー。
あ、子ども寝かせるの添い寝してあげるんだっけ?
「よし、じゃあ、俺が横についていてあげるから、ナナコはもう寝なさい」
ナナコがよく寝るように、トントンしていると…。
気が付くと、明るくなっていた。隣には、ナナコが静かに寝ていた。
うれしすぎて寝れないかもって、思ってたの誰だよ!すぐに落ちちゃったぜ。
まぁ、嬉しすぎるのは確かなんだが…。
それにしても、寝顔も可愛いな。
俺は、この寝顔を守っていくんだよな。決意を新たにした。
その日の朝は、いつもと同じようにやってきたが、なんか、幸せな感じ。
うまく言えないけど、心が弾む感じ…。
まずは、朝食だな。
パンと卵があるな…。
野菜を少しとってこようかな。子どもって野菜食べないんだっけ?
俺は嫌いだったな。今は好きだけどね。
庭には、俺が育てている畑がある。
そうだよ。勇者の冒険のあとは、田舎でスローライフだよ。
家をでようとすると、ナナコが起きたみたい。
「パパ。どこへいくの?」
パパ?あ、俺のことだった。パパ。いい響きだ。
「ん、畑に野菜を取りに行くんだよ」
「あ、わたしもいく」
「良いよ。じゃあ、あそこで顔洗ってからおいで」
「うん」
畑は家の前にある。いつもは一人だけど
「トマトがね。いい感じなんだよ。」
「とまと?」
「そうそう。あの赤い実だよ。赤くなってるのが良いやつだよ。あ、トマトは嫌いか?」
「ううん。わたし、きらいなものない。」
「そっか、ナナコは偉いな」
ちょうど良い実があった。
「ほら、これなんか、良いと思うよ」
ナナコに教える。
「これ?」
「うん、取ってみな。ひねればもげると思うよ」
呪いがあるから、刃物は危険かな。
「よいしょ。。。あ、とれた。」
朝日のせいか、ナナコの表情は明るい気がする。
「食べてみる?」
もいでもらったトマトを持っていたタオルで、トマトを軽く拭いて返す。
「いいの?」
「うん。がぶっと。かじってみな」
野菜は、採りたてが一番美味いんだよ。これがやりたくて、スローライフやっているようなもの。
ナナコは不器用にだが、トマトにかぶりつく。どんな仕草をしても、かわいいのな。
「…おいしい…。」
「だろっ!」
そう言って、ナナコに微笑みかける。ナナコの表情は相変わらずなんだけど。さっきも感じたけど、なんか表情が、明るい気がする。良く話してくれるし、笑顔も近いうちにみられるかもね。
朝食作るのも手伝ってくれた。
危ないと思ったけど、野菜切らしてみたら、流石の包丁裁きだった。
なんか、なんか良いなぁ。
今まで、一人で楽しくて満足だったつもりだったけど、違ったんだな。
モルドさん結婚薦めてくる理由がわかる気がした。
これからのこと、考えないとだなあ。
呪いをこのままにしておけないけど、解呪はむずかしいよな。
解呪するには、呪いをかけた本人を探して、解呪させるか。
…コロスか…。
黒い男っての、去った方角くらいは分かるかもしれんが、追いつくのは無理だろう…。
なら、ナナコが呪いをコントロールできるようにする方が早いか…。
それから、呪いを解く方法を考えるか。
…難しい顔をしていたらしい。
ナナコに不思議そうな顔で見つめられた。ん、そんな表情も可愛いな。
「どうしたの?」
「ん、ちょっと考え事してただけだ。そんだな。ご飯食べたら少し話しようか?」
「はなし…。」
心配そうな顔になる。
「心配するなって、ナナコがどうしたいか。ナナコがどうすれば嬉しいか。考えるんだよ」
ホッとしたような顔になる。
表情が乏しいコとおもってたけど…。
ナナコの表情の変化を、俺が分かるようになったのかな?
ゆっくり寝て、ご飯食べて、ナナコが人間性?を取り戻してくれているんなら良いんだけどね。
読んで頂き、ありがとうございます。