旅立ちの日
リュオール邸の門の前。リュオール家の面々とミュール、レグスさん、ダイチくん、が来てくれている、
武器も手に入れ、準備もできた。
ナナコの卒業式も終わったし、今日出発することになった。
竜の子どものセブはリュオール家に置いていこうという事になった。
流石に幼竜を連れて行くのは何かと難しいし、リュオール家の皆にもいつの間にか懐いているし。
送ってくれる人々の中にリゼがいたらなって思ったが、彼女には、やることがあるし、それにミタール村で俺達を待っていてくれる。
リチャードやアリスも忙しそうで来れてない。来れないだろうと思い昨日王城を訪れて、挨拶はしておいた。二人とも揃っていた。ここのところずっとイチャイチャしてやがる。
アリスもナナコに会えて喜んでいた。
前にアリスがナナコにくれたブレスレットつけているのを見て、嬉しそうだったな。
ちゃんとつけておいて欲しいと念を押していた。
魔王アリスの言うことだ、何かあるのだろう。もっともナナコはリゼがくれた首飾りととも肌身はなそうとしないし。大事にしている。
きっとナナコを守ってくれるのだろう。
別れを惜しんでいる俺たちだが、ミュールがナナコに近づいてきてナナコの髪を触っている。
あ、それは俺の役目だからダメって言いそうになったけど、まぁ今日は、良いか。
「これでよし、ほらっ!」
ミュールが、鏡を取り出し、ナナコに見せる。
お、イヤリングか?今日の髪の毛は、シンプルに後ろで括ってあげているが、うん、イヤリングもよく似合う。
「これっ?」
ナナコが笑顔を見せる。
「気に入ってくれた?なら、魔法で外れにくいようにしておくね。」
「はいっ。ミュールせんせい。ありがとう。」
「まぁ、リゼさんがママで、アリスさんがお姉ちゃんで、私が先生だと、ちょっと距離があるのが気になるんだけど…。」
何を争っている?
「しかもエイトがパパって…。」
それは、…良いだろっ
「ミュールせんせい。」
「ん?」
ナナコがミュールの首に手を回す。
お、暗殺者として、首絞めを?
じゃなくて、優しくハグした感じになってる。
「ミュールせんせいのことも、だいすきだよ。」
「…。ッくぅ。もうウチのコにしたいわ。」
何を言っている?
「おいっ!」
っていう俺のツッコミを無視してミュールが続ける。
ミュールがダイチくんに目配せして言う。
「ダイチ!アンタ頑張りなさいよ!」
?意味がわからんぞ。
でもダイチくんは、決意を決めた顔で頷いている。
「うん。エイトさんが、エイトさんを倒せば良いって、認めてくれたから、ボク、いやオレ頑張るよ!」
ん、なんの話だ?良いなんて言ったかな?
「?ダイチくんガンバってね!」
ナナコ笑顔で言う。
そんなん、頑張っちゃうやん。ダメだって。
「ナナコもガンバれよ。またな!」
ダイチくんも笑顔をナナコに返す。
なんか、カッコいいんだよな。俺の幼児の頃と大違いだよ。レグスさんは、ちっちゃい時からカッコよかったのかな?
そろそろ出よう。きりがない。
「皆、またな。チャッチャと用事済ませてすぐ帰るよ。」
大変かもしれんが、こう言っておく。リュオール家の皆はよく分かっている。
複雑な感情があるが、明るく努めて別れを告げてくれる。
「ボスがいないとツマランです。早く帰ってくださいね!」
「行くならボス一人で、行けばいいのに!」
「そうですよ。お嬢様まで行かなくても。」
って感じだ。
俺にはこれで良い。
でも、ナナコを引き止めるのはヤメロ。
決意が揺らぐ。
「わたしは、パパと、いっしょだから!」
引き止める皆にナナコが一言。
うん。ずっといっしょだよ。
別れは惜しいが出発だ。
二人で歩き始めて、皆の姿が見えなくなりかけた辺りで、
ドゴッ
って音がした。
閉じ込められていたセブが飛び出してきた。
「きゅー」
ナナコにまとわりついている。
ナナコは困ったような顔をしている。連れて行って良いか迷っているんだろう。
「どうしよう」
「セブは、一緒に行きたいのか?」
セブが頷いたように見えた。
「きゅぅー」
ナナコをみると、ナナコも俺を見ていた。頷きあう。
「仕方ないか。一緒に行こう。」
ようやくナナコを独り占めできると思ったんだけど。
しょうがない。セブも俺の子どもだ。
3人?で歩き始める。
学校でのことやリュオール邸での出来事。
楽しいお話しながら。
これで王都編は終わりです。
ミュール様との事は、詰め込み過ぎて消化不良になってしまったかもしれません。
前々作でも、書いたけど、読んでくださる方がいる限り、なんとしても完結させたいと思っています。
これからも勇者とナナコを見守って頂けますと幸せに思います。よろしくデス。




