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卒業式。

「ナナコさん」

ミュールの優しい声が響く。

「はいっ!」

ナナコが返事をして立ち上がる。

うん。いい返事だ。


ナナコが、ミュールのところまで行き、賞状を受け取る。

「ナナコさん。よく頑張りました。」

「ありがとうございます。」

ナナコとミュールが言葉を交わす。

ううっ。立派になったものだ。涙が溢れてくる。



王都来て、ナナコが教会へ通うようになって2週間たった。

今日は、卒業式らしい。ま、ちゃんとした学校というわけでもなく、たかだか2週間のことだが

「まぁ、こういうのは、ちゃんとしたほうが良いのよね。子ども達も喜ぶしね。」

ミュールはそう言うが、ちゃんと初等学校へ入れる準備ができていると証明にもなるらしい。


実際のところ、通っていた子どもでも卒業式にでてるのは半分くらい。残りは、また1年後ということらしい。

その子達はまた教会に通いながら、勉強したり遊んだりして成長して、来年また挑戦するとのこと。


式の前にミュールと少し話した。

「基本的な文字を覚えてと1桁の足し算引き算出来れば良いから、だいたい6歳くらいで皆卒業できるからね。」

まぁ、そんなところかな。

貴族も通う学校なんだけど、彼らと一緒の授業の邪魔にならず、勉強について行けるラインってとこか。


「でも、ナナコちゃんは、スゴイね。ふつうは、普段から教会に通いながら、ゆっくり覚えて行くんだけど、すぐできるようになっちゃった!」

そうだろう。ナナコはスゴイんだよ!

「まぁ、基本的なところは、リゼやアリスも教えてくれていたようだし。でも、アタマの良い子なのは間違いない!」

俺は、パパなんで自慢して良い。はず。


ミュールは、呆れたのか話題を変えてきた。

「ナナコちゃんは、またパパと旅を続けるって言ってたけど。危ないんじゃないの?」

ミュールも心配してくれているようだ。

「わかってる。けど、それがナナコ望みだし。何があっても、俺が全力で守る。」

「わかった。確かに勇者に守られてるんなら世界一安全よね。…私もそうだったし。」

ミュールは、聖女だし狙われたりして色々と危ない目に遭ってきたけど、俺が守ってきたんだよ。

リチャードやアリス、レグスさんもいたけどね。



「実は、やっぱり昨日の夜一人で出た方が良いかとと少しだけ考えたんだけど、ナナコと約束したからな。」

連れて行く。というか一緒に行くんだ。

これからずっと、親子として生きていくために。



式が終わり、教会の中庭に皆が集まっている。


卒業式で賞状を貰った子ども達が、それぞれの親の元へ行き話をしている。頭を撫でてあげてたり、抱き上げて微笑みあったり。

親のいない子もいるのだろう。ミュールの周りには、何人かの子どもがいて、ミュールから褒めてもらってる。

「ダイチくんは?行かないでいいの」

ダイチくんが遠巻きに立っていた。心なしか寂しそうなので声をかけてみた。

「ボクは、だいじょうぶです。おかあさんは、皆の聖女様だから…。」

「そっか。」

賞状を丁寧に持ち、ミュール達を見ている。


ウム、ずっと思ってたんだけど、イヤ思ってた以上に凄い子、というか、うん。君を漢として認めよう。

「だが、ナナコは、やらんがな」

おおっと、つい声に出してしまった。

「ま、話は俺を倒してからだな。」

…。さっき声に出してしまったって気づいたのに、つい言いたかったのか…。

「エイトさん?」

うん。ダイチくんは、まだ分からんで良い。優しくて強いいいコだ。

「いや。ダイチくん、なんかカッコいいなと思ったよ。これからもこの調子でやっていくと良いと思うぞ。」

「はいっ。ガンバります!」


ナナコが欲しければ、俺を倒してからだって言ったけど。


…お手柔らかにね!

これがただの杞憂で終わらなかったかどうかは、また別の話。

これは、俺とナナコの物語だからな。


「パパぁー!あ、ダイチくんもいる。」

俺の天使が、笑顔でやってくる。


抱き上げて、頭撫でて褒めてあげよう。

この笑顔を守るって決めたんだよ。




聖女編があと一話です。

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