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俺が一緒に居たいってのじゃ、ダメかな?


「でも…。」

うつ向くナナコ。一緒に居たいっていってくれてたのに、どうしたんだろう?


「あのさ、理由を教えてくれるかな?」

出来るだけ優しい口調で聞いた。


暫くの沈黙の後、ナナコは、小さな声で話し出した。

「…。からだが、かってにうごいちゃうの。」

ゆっくりとだが、話を続けてくれる。

「また、ないふとって…。」

俺を刺しに来るのか。

「からだのなかが、あつくなって…。」

自爆魔法か…。


「…いやなの。きずつけたくないひと…。」


そっか、優しいコなんだな。

「それなら大丈夫だ。」

ナナコがビックリしたのか俺を見上げる。

「だいじょうぶ?」

「ああ、俺は強いからな。ナナコには、傷一つ付けられないよ!大丈夫!」

正直、最初の寝てたときはヤバかったけどね…。


「ななこ…。わたしのなまえ…。」

あ、ナナコって当然のように呼んでた。

「あ、ごめん。ナナコって名前。ヤだった?」

ナナコは首をブンブン振って答えた。お、いきおい出てきた?

「いやじゃない。…なまえ、うれしい。」


「そっか。良かった。なんか勢いでつけちゃったからなぁ」

「なまえ、なかったから…。」


名前が無かった…。あの殺人術、自爆魔法…。

すさまじい場所で過ごしてきたんだ…。安易に一緒に居ようと言ったものの、俺に受け止められるだろうか。


いや、俺だって、勇者としてこの世界を背負ってきたんだ。こんな小さな女の子一人助けられなくてどうする。


「というわけで、ナナコはここに居てもいいんだよ!」

ナナコは黙っている。もう一押しか…。

「そうだな。ナナコがここに居るのは、俺のためだよ」

「ゆうしゃのため?」


「あ、俺のことか、ゆうしゃってのやめようか」

今は、呪いは発動しなかったが、勇者ってのがキーワードになっている気がしたんだよな。

…とはいえ、勇者では発動しない。

モルドさん。何て言ってた?〈エイトさん〉では、大丈夫だった。

【勇者エイト】って最後にいってたか…。これかもな。まぁ、検証するのは後だ…。


「うん」

「ナナコは、俺の娘になった。これは良いか」

急な話だが、これは、良いと思いたい。

「うん」

戸惑いながらも、ナナコは頷いてくれた。

「俺が、自分の可愛い娘と一緒に居たいんだよ!」

ナナコの表情が少し変わった気がする。


「でも、わたし…。」

「それは、大丈夫だって!俺を誰だと思っているの?」


ナナコが俺を見上げる。

「ゆうしゃさま…。」

「そうだよ。世界を救った勇者だよ。俺は【勇者エイト】だ。女の子におそわr…」


あ、しまった。でも、これでわかるな。

ナナコの雰囲気がかわる。あ、やっぱり。


ナナコを後ろから、抱きしめるという形の羽交い絞めにして動きを止めた。

「大丈夫だ。君に人は殺させない。」

「・・・・・・」


物理攻撃の失敗のあと、自爆魔法ディストラクト

解除魔法キャンセル



治まったか…。

「ほら、大丈夫だろ?」

「でも…。」

ナナコの頬には涙がながれている。後ろから優しく抱きしめたまま。

「俺が、ナナコと一緒にいたいんだよ。それじゃあ、ダメかな?」

ナナコの頭に手を添えて、首を振らせる。

「良いよね!」

今度は、抵抗もなく頷いてくれた。


ちょっと強引だったかな。

でも、握り返してくれたその手に力が入るのを感じた。


「よろしくな」

「はい…。」

「やっと。ハイって言ってくれたな。やったー。」

俺は、自然と笑顔になった。ナナコから離れて、大げさに身振りをして喜ぶ。

踊りだしたい気分だ!


「うれしいときはね。こうやって笑って喜ぶんだよ」

「うれしい?わたしといて、うれしい?」


「うん、とっても嬉しいよ。ナナコも笑ってよ」

「わらうって、よくわからないけど。うれしい。」


ナナコの表情はあまり変わらない。でも、あ、そっか。ナナコの笑顔を取り戻すってのを俺の目標としよう。


小さい美少女をみる。笑うともっと可愛くなるだろう。その時、俺は正気でいられるだろうか…。

ぜんぜん自信ないな。



少し落ち着いた。

「今後の方針なんかは、明日決めよう。ナナコが幸せになるために」

「わたしのしあわせ?」

ナナコの疑問に俺は大きく頷く。

「そうだよ。ナナコが笑って暮らせるようにするんだ」

「わらってくらす?」

「うん。大丈夫だ。おれは、ユウし…。」

勇者エイトなんだからって言ったらダメだよな。


「…。俺のことなんて呼ぶか決めよう」

ナナコは、あまり表情は変わらないものの、こんな提案をしてくれた。

「わたし、むすめだから。おとうさん?…おとうさんのことは〈パパ〉ってよぶってきいた…。」


ん、ぱぱ…。パパ。それ…良い…。 

「あ、じゃあ、呼んでみて」


「…パパ」

お、これ良いよ。なんかくすぐったくて、良いよ。

「ナナコ、もう一回」

「パパ」

「なーなこ、も一回!」

「パパ」

「ナナコ」

「パパ」


ナナコの表情は変わらないが、俺のほうは、目じりは下がったまま、そして口角があがったまま固定されそうだ。


パパって呼ばれちゃった。うれしくて今日は寝れないかも…。



ナナコが娘になりました。


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