ナナコのライバル!
「ダイチ君って、何歳なんですか?」
リゼがミュールに聞く。俺も聞きたかった。
「えっと、4才かな。あ、エイトの子じゃないか疑ってる?」
「ぐっ。」
…。俺から声にならない音が出る。ミュールと別れたのが5年前。それから引きこもってたから、違うよね。
妊娠期間が10ヶ月だっけか?
…。微妙じゃん?
「えっと。あ、違くて。賢くてしっかりしてるから…。あ、気にはなってましたけど…。」
そりゃ、リゼも気になるよね。で、歯切れ悪くなる。
「心配しないで、ダイチは、レグスの息子だからね。」
ミュールは、ハッキリと断言する。ウソはついてないっぽい。
…ナナコは、俺の娘だ。
ハッキリと言えるな。嘘じゃねえし。
なんかスッキリしないが、そんなものかな。
ミュールが、ダイチくんの父親をレグスさんと言っているから、そうなんだ。
リゼも、同じように考えているのだろう。
「すみません。変な事聞いちゃって…。」
ミュールに軽く謝っている。
「一番気になったの、エイトなんだろうけどね!」
ミュールが笑いかけてくる。
「いや、そんなことは。」
無くは無いか…。
それからは、お互いの息子娘自慢をした。
ダイチくん。もう読み書きと簡単な計算までできるらしい。魔法も使えるって。
ナナコにライバル登場かな。
このスクール、午前中は、お勉強。それから教会でお昼貰えて、午後はお外で遊んで終わりとのこと。
「じゃあ、昼回ってから迎えに来たら良いんだな?」
ミュールに聞く。
「うん。あ、ダイチに送らせても良いよ。」
ん?ダイチくん…。
「いや、迎えに行くよ。ヒマだし。」
これ以上、ダイチくんとナナコを仲良くさせるわけにはいかん。
ナナコなら俺たちが付けてきた、いや、見守ってきたこと気付いていたと思うが、そっと教会へ入っていくところまで見送った。
それから、一度家に帰った。
リゼは、ミタール村へ帰っていった。
午前中に出れば、暗くなるまでに着くとのこと。
歩くと1週間以上かかるのにな。
馬より速いな。
ま、誰かさんが!邪魔な障害物倒してくれたおかげだって、ほっぺにチュっとくれた。
回り道したら、一日じゃ着かないもんね。
エヘっ。俺のおかげ!
アリスとリチャードとナナコのおかげだけど、リゼには俺の手柄としたい。
好きなコに対する見栄ってやつだよ。
皆まで言わすなって。
ちゃんと?キスしてお別れ。
「浮気しちゃダメだからね!」
「大丈夫。俺には、リゼしか見えないから!」
「聖女様の、胸ジッと見てるのにぃ?」
………。
「それは。…ごめんなさい。」
仕方ないのよ。男だから。
「ふふっ。じゃあね。」
リゼは笑って、ほっぺにもう一度キスしてくれた。
「おう。気を付けてな。」
走り去るリゼ。あっという間に見えなくなる。
俺が好きになる女って、皆どうしてこうも強いんだろうな?
俺、世界最強の勇者だよね?
自信なくなってきた。
それから、鍛冶屋さんに行ったり、道具屋で旅の準備をしようと思った。
鍛冶のゴランさんは、帰ってきていて
「2週間位かかるかな。それにしても、手入れしてない剣で竜を斬るなんざ、その前に持ってこんと、ボロボロじゃ!」
ちょっと怒られた。定期的なメンテナンスが必要なんだよ。
「まぁ、でも、聖女を連れてきてくれたら、赦すぞ!」
このエロジジイめ。
聖女に武器を作るときに、体に合った武器を、作らんとって聖女の身体をベタベタ触りやがったせいで、ミュールはもう来ないよ。
ただ、作ってもらった杖は良かったそうで
「ただのエロジジイじゃ無かったのね。」
って、ミュール呟いていた。
エロジジイというこの世界になかった言葉が誕生した瞬間だった。
どうでもいい話だったね。
いつの間にかお日様が、てっぺん過ぎてる。お迎えに行かんと。
軽く屋台で飯を食って、教会へ向かった。
俺がいないって泣いてなきゃいいんだけど。
いや、泣いてたら嬉しいかも。
いや、元気にしていてくれたら。
いや、少しくらいは寂しがってくれても。
う、考えるのしんどい。なんか嬉しいけど。
世間の親は、こんな複雑な想いをしてたんだんな。
ずっと一緒だったからね。
昼飯食っても、ナナコと一緒なら美味しいって言ってくれたかな。とか思ってしまう。
ゴランさんのとこでもナナコにも、武器とか…。
あ、ナナコの武器…。
ゴランさんのとこ連れて行くのか…。
あ、でも、エロジジイの守備範囲外か。大丈夫だ。
守備範囲外の奴には、触る必要無いらしいから。
ん?
触る必要ないんだよな!無いんだ。
でも、リゼを連れて行ったらダメだよなぁ。リゼだって、その、なんというか、魅力的。そう、魅力的だからな。
リゼにも、ちゃんとした杖作ってあげたいけど、俺、多分リゼが触られるの我慢できねえ!
久々のお休みなので、もう一話できました。
ブックマークと評価入れて頂けたら、やる気でるかもです。宜しくね!




