それは、痴話喧嘩というやつか。
「リゼ、会いたかったよ!」
とりあえず、それは伝えないとね。
「さぁ、どうだか。私はエイトさんに会いたくて仕方なかったけど…。」
リゼが、なぜか怒っていて取り付くしまもない。
えっと、ナナコも怖がって固まっているよ。
竜の子セブ君も、本能的に危険を感じたのか、少し距離をとっている。
「あの、いつからそこに…。」
「エイトさん。あなたが、聖女様の胸を満喫しているときから!」
ご、誤解だ。押し付けられただけで…。
「ちがっ」
「鼻の下、すごく伸びてた!」
「そ、それは…」
否定できない。
「ナナコちゃんと聖女様が、抱き合っているの羨ましそうに、イヤらしい目で見てた!」
「それも、」
否定できない。
「私は、エイトさんのことばかり考えていたのに。」
「俺だって、リゼのこと一番に考えていたよ!」
これは、本当だよ。
「一番…。じゃあ、二番がいるのかしら!」
「な、」
え、え、一番ってダメなの?
一番、嬉しいよね?
俺だって、リゼの一番が良いよ!
ん、俺が一番だったら、二番がいる?
俺以外に、リゼに男が?
ダメだろ。一番とかそう言う問題じゃない!
順番つけるの最低だよ。
ナナコだって、俺のこと順番に入れなかったのに。
…ヒントはあったのにな。
そうだよ。今の俺にとっての一番は、ナナコのこと。
リゼとのことは別。別なんだよ。
いや、そうじゃない。別じゃなくて、一緒なんだ。
俺とリゼは一緒。だから順番なんか無いんだ。
それが、夫婦になるということなんだ。
なんか、そう言うことが、わかった気がする。
わかったところで、リゼの怒りを静めないと。
どうすれば…。
からだが自然に土下座のスタイルに。
これもミュールに教えてもらった謝罪スタイル。
「違うから、一番とかじゃなくて、俺、俺には、リゼだけだから!」
ナナコも、セブも、俺の隣で頭をさげようとする。
「あ、ナナコちゃんは、いいのよ。会いたかったわ」
リゼが、優しい笑顔でナナコに話しかける。
そして、リゼとナナコが抱き合う。
「リゼママぁー。」
ナナコが泣いている。リゼも泣き出した。
母娘の感動的な再開。
俺の下心がぶち壊したようだが、ま、良かった。
「その、竜は?」
「セブだよ。」
「きゅー!」
リゼが、セブの頭を撫でる。尻尾も垂れて絶対服従の構え。怖かったね。でも、本当は、すごく優しいお姉さんだよ!
「リュオール公爵邸がさ、王都にはあるんだ。」
もう、怒ってないように思う。普通に話そう。
「公爵邸?」
俺は、一応貴族のリュオール公爵。
「あ、俺の家ね。使用人達もいるから、リゼを婚約者として、紹介したいなー。なんて。」
リゼが、笑顔を見せてくれた。
「しょうがないわね。でも、そうだよね、婚約者っか…。」
最後小声だったけど、満更でも無いみたいだな。
一件落着ってことで。
公爵邸は、王都の外れにある。
有事の際は、王都防衛の拠点になるそうだ。
で、王様が一番信頼のおける公爵の家として使用されている。
魔王がアリスで有る限り、有事なんて起きないだろうが…。
3人と一匹が歩いて向かう。
急げば一瞬で着いてしまうが、ゆっくり歩いて話ながら行くのも良いものだ。
リゼは、新しい学校の図書館の蔵書を、王都の王立図書館から分けてもらいに来たそうだ。
必要な本の選定とか、司書に本の譲渡や複写の依頼とか。
「それって大切な仕事なんじゃ?」
「うん。それぞれの教科担当が分担してやるの。」
「もう、いきなり、そんな大切な仕事任されるなんてリゼは凄いな!」
頭を撫でてみる。
リゼは、魔族の血が混じっていて、赤い髪の中に小さい角の感触がある。が、それもまた良い。
「くすぐったいって!」
リゼは、言葉では拒否するけど、嫌がってはいない。
むしろ、頭を気持ちこっちに向けている。
「リゼママはすごい?」
「ああ、凄いと思うよ。」
「ななこはねぇ。しってたよ!」
「きゅー」
そっか、リゼの凄さを最初に気付いたのナナコだったな。
聖女うんぬんのイザコザが無かったかのように、ほんわかした空気で歩いて行く。
良かった。本当に良かった。
「ここなの?」
「うん。」
豪華さは無いが、有事の際は拠点になる位に広い。
使用人も多い。
「ここは、リュオール公爵様の屋敷だ。お前らみたいなヤツらの来るところじゃねえ。」
「いや、俺が、そのエイト・リュオールなんだが。」
「はははははっ。なんの冗談だ。気色悪い髪色しやがって、そこの女も魔族なんじゃねえのか!」
えっと、どうしようか…。
執事のベテルさんか
メイド長のロッテさんだったら俺のこと分かると思うけど。
でも、この門番さん、俺、当主のリュオール公爵が黒髪だってことくらい知って無いのか?
ゴっ!
「あ、」
ナナコが、門番さんの脛を蹴りあげていた。
門番さんは、悶絶して蹲っている。
「パパとママのわるくち、いっちゃダメ!」
俺のこと、思ってくれるの嬉しいんだけど、暴力に行くの止めさせないとだな。
戦闘不能となった門番さんを見てそう思った。
コイツは良いとしても、いつか大きな事故がおこっちゃうよな。
題を変更しました。
元々、長い題は、なんだかなー。って思っていたので。
しかし、エイトさん。しりにしかれるの決定ですな。
聖女編なのに、聖女の出番少ない?
これからですよ。たぶん…。
と言うわけで、これからも宜しくお願いします。




