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会いたかったよ。


ふと気付くと、噴水のある広場まで、戻っていた。

協会からここまで移動していたが、なにも覚えていない。ナナコと繋いでいた手の温もりだけが、記憶として残っている。


そっか、ナナコのおかげだったんだな。

ナナコのおかげで、新しい恋…。リゼと向かい合うことができたんだな。と感じた。


そう考えると、今までも愛しさマックスと思っていたナナコへの想いが更に強くなる。

親としての想いだよ!

…念のため確認しておく。


とりあえず落ち着こう。噴水の回りに二人で並んで座る。


「パパ、すごいあせだよ。」

あの人を見て昔の記憶が甦ってきたのだろう。脂汗が止まらない。

「いや。大丈夫だ。」

大丈夫ってのは、俺の口癖のようなものだ。

可愛い娘に弱いところみせたくないんだよ。って、現状は、ボロボロだけどな…。


「ぜんぜん、だいじょうぶじゃない…」

うつむき気味の俺の体に、あたたかい何かが触れる。

「ん…?」

ナナコが立ちあがり小さい体で、俺の上半身を抱き抱えてくれた。

ナナコの顔が頭に当たり、からだ全体で俺の顔から肩、そして腕までを包み込んでくれる。一生懸命、俺を励まそうと…。


ホッとする。落ち着いてきた。

今まで、何を怖がっていたのか?


守るべき存在。助けようと心に決めた。

この娘を幸せにしようと…。


でも…。

そうだな。最初からそうだよ。この小さな娘に、俺はずっと癒されてきたんだよ。助けてもらってたのは、俺の方だったんだよな。


「わたしも、かなしいとき、パパにギュッてしてもらって、うれしかったから…。」

「うん。ありがとう。パパも嬉しいよ!」


自分のことを、パパと言ったのは初めてかもしれない。少しずつ本当の父娘になっていければ良いなぁ。


「すこしげんきになった?」

「ああ、もう元気一杯だよ。ナナコのおかげだ。」

「【ゆうしゃえいと。】ふっかつだね!」


「「あ、」」

もう、ナナコさん。迂闊なんだからぁ!

呪いのキーワードは【勇者エイト】。発動すれば、ナナコが俺を殺そうとする。



俺の頭を抱き抱えていたナナコの手が、そのまま首に回る。

はやく、停止魔法を…。


と思った瞬間、清くて白いオーラが俺たちを包んだ。


これは、?

懐かしい、優しい光。


綺麗で清々しい。これは、聖女の魔法だ。


この優しい光に包まれたナナコと俺。

呪いの発動は、自爆魔法(ディストラクト)ごと解除された。

聖女の魔力すげぇ!力業で呪いを追い払った感じだ。


「やっぱ、完全に消し去ることはできないかぁー」


どこまでも澄んだ美しい声。だけど軽い感じ。


「ヤッホー。エイト!久しぶりじゃん!会いたかったよー!」

どこまでも澄んだ美しい声で、でも砕けた口調、そして二つの大きな…。じゃなくて、まぁそれもそうなんだが、非の付け所の無い完璧な美人。


聖女ミュール。


その聖女ミュールが、俺たちに抱きついてきた。

ニホンジンは、もっと慎ましやかな人種だと聞いたが…。

あ、オバサンは別なんだっけか?

前世はもう結構なお年だったそうで、今世を足すと立派なオバサンらしい。


ミュールが、昔そんなことを言ってたな。

彼女の前世の話。めちゃくちゃ面白いんだよなぁ。


精神的にオバサンでも、今は見た目は、二十歳そこそこの若くて美しい娘。回りの目も気になるし、なによりナナコがビックリしたのか固まっている。


柔らかな二つの感触は惜しいが、ミュールを引きなはして、向かい合って話しかけた。


「久しぶりだな。ミュール。その、ありがとうな。」

ナナコの呪いを解除してくれたことに、まず礼を言おう。

「いいのよ。呪いの解除は聖女の役目だし。」


ナナコを見て、ミュールを紹介する。

「このお姉さんが、聖女のミュールだよ」

「こんにちは、ナナコです。やさしいまほう、ありがとう。」

ペコッとお辞儀をする。


「まー、何て可愛いの。オバサン、キュンキュンしちゃう。」

ミュールは、決してオバサンではないが…。


ミュールが、再びナナコを抱きしめる。

戦闘能力の高いナナコ。避けることが、できるはずなのにされるがままだ。


柔らかな聖女の二つの感触を楽しんでいるなら、やっぱり俺の子どもって感じだ。ま、ナナコに限ってそんなこと…。


「可愛いなぁ、ぐりぐりー」

「せいじょさま。やわらかくて、きもちいい。」


…ナナコ?

く、とにかく羨ましいぞ。



ま、数年前は、俺も自由にできていたのだが…。

失ってはじめてその偉大さに気づくな。



とりあえずミュールとは、明日に教会で会って、ナナコを見てもらうことになった。

あの人。…レグスさんには、少しお使いを頼んでおくとのこと。

それなら…、大丈夫か?なんとか行けそうだ。


名残惜しそうだったけど、何か思い出したのか、何かに気づいたのか。ミュールは、手を降って去っていった。


「バイバイ。」

「ばいばい?」

ナナコが不思議そうに聞いてきた。

「うん。ミュールの故郷の挨拶らしいよ。」

「わかった。せいじょさま。ばいばい。」




王都滞在は、リュオール公爵邸で過ごすこととなる。

俺だって、公爵様なんだから王都に使用人付きの家くらい持ってる。


「ナナコ。おうちがあるんだ。行こうか。」


立ち上がろうと、見上げた先には、殺気?いや、違う。大きな魔力を感じた。


俺が今、一番いとおしい人。

赤い髪の魔族の血をひく女の子。

マイラバー、マイハニー、マイガール。


そうだよ。リゼ!


会いたかったよ。

って、ここで、タイトル回収でオッケーなんだが…。

さぁ、抱き合ってキスしよう!


ん、こっちに来ない?


ん、様子が…。


なんだか怒っていらっしゃる?

その、久しぶりなんだし、殺気やめようね。



投稿間隔がゆっくりになってしまっています。

申し訳ないけど、お付き合いいただければ、幸いに思います。


かと言えば、執筆スピード上がるかもしれんし…。


が、頑張りますぅ。

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